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本編

129:世界にひとりだけ ※大剣使い視点

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 部屋の前で少し意外そうな顔をしたトウノを残して、さっさと自室へ戻り扉を閉める。

 トウノには装備の手入れをすると言ったが、実のところ、この部屋に長居するつもりは無い。手入れはあいつの長い眠りの時にでもすればいい。

 洗浄札で手早く装備の汚れを落としてから、装備を解除してインベントリの中へとしまい、トウノの部屋側の壁に背を預けて集中する。

 盟友契約による繋がりがまた強まったのか、俺達が転生したからなのか、はたまたどちらも要因になっているのか知らないが、以前よりもあいつの感情やどんな状態なのかが、離れていても分かるようになった。

 ……壁の向こうのあいつが、俺を思って昂ってきているのを感じて、つい舌で唇を濡らす。


 トウノが転生したその時、何故か俺も転生出来る事が分かった。

 そして、迷わず転生した。

 あらゆる能力が高まったが、新たな力を得たというよりはトウノの技能で不快な匂いがマシになった時のように『本来の自分』に近づいたような感覚だった。

 あいつが転生し終わった時、繋がりだとか直感だとか本能だとか何でもいいが────理解した。

 こいつは世界でたったひとりだけの存在になったんだと。それ故にこれから決して埋まる事の無い孤独を抱えたんだと。

 それを察した瞬間、俺は歓びに打ち震えた。
 こいつはこれからその孤独感を抱えて生きていく。そして、人肌の温もりを覚え始めているこいつはもう一人でそれに対処する事は出来ない。
 一度知ってしまえば、知らなかった時には戻れない。
 俺が、そうなるようにしたからだ。

 寂しさに喘ぐ時、すぐ傍にそれを埋めてくれる存在がいれば藁にも縋るように掴むだろう。


 そして、その縋る先は────俺だ。


 彷徨う霊魂と深く共鳴し、体が成熟したあの時に俺に縋る甘さを、快楽を覚えたあいつはきっとその誘惑に抗えないだろう。誘惑を誘惑とも思っていないかもしれないが。

 勿論、そう仕向けた責任はきっちり取ってやる。
 …………俺は遺跡で全てが変わった日から……いや、初めて会った時からお前無しでいられないんだ。

 と、しばらく仄暗い思考を弄んでいると、何処からかあいつの声が響く。


『バラム、触って欲しい』


 思わず手を口に当てるが、口元が歪むのを抑えられていないのが分かっただけだ。

『……いきなりどうした?』

 今すぐ隣へ行ってあいつの痴態を見たい衝動を抑えてとぼける。

『……う、その……一昨日みたいに自慰をしてみたんだが……上手くいかなくて……』

 最近、あいつと触れ合う時によく聞く少し甘い声と、訳を聞かれると思って無かったのか困り果てた声が聞こえる。

 こういう時、素直に全部喋っちまうところもたまらない。

 だが、あまり焦らしてるとこいつより先に俺の我慢が限界に達する。だから、あと少しだけ焦らしてからあいつのところへ行こう。

『……は、ちょっと待ってろ。片付けてすぐに行く』
『っ。ああ……』

 本当は手入れなんぞしていないから片付けるものも無いが、さっきの少しだけ嬉しそうだった返事を反芻しながらたっぷり時間をかけてゆっくりあいつの部屋へ向かい、部屋の主に問う事も無く部屋へと入る。

 途端に、転生してからさらに深さを増したトウノの匂いを強く感じる。今は俺を誘うような甘さを孕んでいる。

 そして、ベッドの上に座るトウノを見て────思考が止まった。

「……あ?」
「ん?」

 ……確かに転生して新たに使えるようになった“根”を何故か発動してるなとは思っていたが……。まさかそれを抱え込んで、明らかに自分のものを擦り付けているとは。

 予想の斜め上の痴態に正直────めちゃくちゃ煽られた。

 既に反応を始めた下半身が完全に臨戦態勢に入ったのを自覚する。

 トウノは今自分がどう見えているかまで頭が回っていないのか、普通にこちらに来ないのか? という表情をしている。

「は……根に擦り付けてたのか?」
「え、あ……そうだな」

 俺に指摘されて初めて根に擦り付ける事が一般的でないかもしれないと思ったのか、恥ずかしそうな顔をするが……どうしてそこでさらに根を抱え込むんだ。

 …………さっき、こいつの付属品になっただけのやつが……。

 技能である根にまで嫉妬するなんて我ながらどうかしていると思うが、してしまうものは仕方ない。

 トウノに近づいて根を掴んで少し強めに引っ張る。その拍子に“イイ”ところに擦れたのか、トウノが快楽に身を震わせる。勿論、わざとだが。

「あぁ……っ」

 見下ろすと、服を押し上げて主張し始めているものがあった。掴んで根をゆっくり動かす。

「こいつがあるなら、俺が触れなくてもいいんじゃねぇか?」
「ふ、ぅん……でも……これじゃ……い、イけない……」

 困り果てたような表情でトウノが俺を見上げてくる。転生してから少し深くなった森色に、赤い光が散っている瞳を見つめる。

 お互いに目を逸らさずに言葉を重ねる。

「は、じゃあどうして欲しいんだ?」
「触れて……欲しい……」
「どこを、どんな風に」
「うぅん……」

 考えてなかったのか、目を伏せてしばらく考え込んでからしばらくすると、自分から装備に手をかけ始める。
 まずマントを外し、首元の留め具をたどたどしく外していく。

 首元が大きく露わになったところで、根を掴んでいる方とは逆の俺の手をとり、自分の首筋へと導く。

 手のひらから少し低い体温と、触り心地の良い滑らかな肌の感触が伝わってくる。トウノへは俺の体温が、狩った者達の“血”が流れていく。

「はぁ……」

 トウノが深く感じ入るように、色が含まれた溜め息を溢す。

 いつの間にか、トウノの周りを意味も無く蠢くだけだった数本の根が緩く俺の体に触れてきていた。俺がほんの少し力を入れればすぐに振り解ける程度のそれを、しかし振り解く気にならず、緩く誘われるままトウノの隣に腰を下ろす。

 トウノは空いている自分の手を下半身へと向かわせ、ほんの少し服をずらして、勃ち上がり震えるそれを取り出した。

 手をゆるゆると動かし、己を慰め始める。

 シュッ、シュッ、シュッ、ちゅく、ちゅく……

「ふ……ぅ……ぁ……あっ……」

 すぐに湿った音が混ざりだし、一昨日とは違い順調に己を高められているようだった。

 トウノは首筋に当てた俺の手に擦り寄りながら、目を閉じ、切なそうな顔で嬌声を漏らしている。自惚れでなく、その瞼の裏には俺がいるのだろうが、ここにいる俺を見ていないのは少し……いや、大分面白くない。

 俺は掴んだままだった根の一本を引っ張り、トウノのはだけた服の中へ入れ、そこにあるだろう突起をつつく。

「ひぅっ!? ……な、に……」

 突然訪れた意識外の刺激に体を跳ねさせて、俺の方を見る。

「もう少し手伝ってやる。俺がしてやる時はここも弄ってるだろ?」
「あぁぅ……」

 また根を動かすと、トウノが背中を反らして反応する。その拍子に握ったままの陰茎からも多めの先走りが飛び出す。

 素早く胸元の留め具も外して、薄い胸板まではだけさせて手を這わせる。

「こっちは俺が弄ってやるから、そっちはこの根で弄れ」
「ふ、ん……ああっ!」

 既に蕩けた目をしたトウノが頷くと同時に、手の中の小さな突起を引っ掻いたりつついたりする。

「はっ、あっ、んん……ふっ、ん……」

 胸の刺激に体全体を反らせていく。根の方もぎこちなくはあるが、自分の意志でちゃんと操作しているらしい。

 ちゅく、ちゅくっ、ぬちゅっ、ぬちゅっ、ぬちゃっ

 刺激が増えたからか、湿った音が増し、本能からか不慣れながらも次第に扱く動きが早く、強くなっていく。
 僅かに腰も揺らめかせている。

 その様に喉が鳴り、貪りたくて堪らなくなるが……もう少し我慢だ。

「あ……ふ……バラ、ム……もう……」

 トウノが限界を伝えながら見上げてくる。俺もそれにしっかり目を合わせる。

「ああ、ちゃんと見ててやる。どうすればいいか……教えたな?」

 見つめた目が一回だけ瞬きしたのを頷きととり、トウノの動きに合わせて、胸を弄る動きを強くしていく。

 そして。

「ぅ……ん……は、あ、ああっ、あ、も……う、イっちゃ……ぅんあぁっ!」

 トウノの指が自身の先端を強く抉った瞬間、一際高く鳴き、陰茎から白い液体が飛び散る。そのほとんどが床に落ちていくのを勿体ないと思いながら見ていた。

 脱力したトウノが俺にもたれかかり、乱れた呼吸を整えようとする。

 これでまた一つ、こいつの“初めて”が俺のものになったと思うと満ち足りた気分だが、この部屋に入る前から煮え滾っている熱はもう暴発寸前で我慢の限界というやつだ。

 俺は力無く放られたトウノの手をとり、その手についた液体を躊躇なく口に含んだ。


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獲得早々、プレイに使われてしまう根っこくん。

明日からのBL大賞にエントリーしておりますので、どうぞよろしくお願いします!(*´︶`*)
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