674 / 1,299
第672回。旧姓・広田さくら選手を超える女子レスラーは誰なのか
しおりを挟む
旧姓・広田さくら選手というプロレスラーがいる。
ちょっと変わっているがこれが正式なリングネームだ。2012年に結婚を発表したのを機に改名した。それまでは「広田さくら」と名乗っていた。
デビュー当時は正統派も正統派。あの長与千種さんが旗揚げしたガイアジャパンに入団し将来を嘱望された期待の新人だった。
私も当時すでにプロレスマニア街道を邁進していたので、週刊誌でその姿を何度も見た。
が、それはすでに驚くべき姿だった。
当時の広田選手は伸び悩み、その結果としてインパクトとパフォーマンスに特化した唯一無二の存在となりブレイクを果たす。
自作のチャンピオンベルトやコスプレ衣装は手の込んだもの(費用がかさんで仕方がない、と深夜のテレビ番組に出演した際にボヤいていたのを覚えている)であり、時には実際にモノマネをする当人にコスチュームを借りてリングに上がったこともある。
何よりあの長与千種さんとチーム・エキセントリックを結成。ご本人も楽しそうに試合を行っていたのも印象深い。それは広田さくら選手が単なるギミック、パフォーマンスだけの選手ではなく「長与さんが認めるプロレスラーであるという証明」に他ならない。それにしても髪の毛をおてんば縛りにしてコマネチをする長与さんを見ることになるとは、あの当時の女子プロレスファンはみんな驚いただろうな。
私だってびっくりしたもの。クラッシュギャルズ全盛期は当然知らなくても、テレビ番組で度々特集されたり当時の映像が流れ、女子プロレス界でも常に話題を振りまく「伝説のプロレスラー、長与千種」のことは誰だって知っている。その長与さんを従えて我が道を行く広田さくら選手はカッコよかった。
有名な選手の姿かたちだけでなく技もマネする、試合ごとにコスプレやギミックを用いるなど常にテーマを打ち出す、当時アメリカンプロレスでは定番だったお客さんがメッセージを書いたボードを掲げる光景も広田さくら選手の試合では頻繁に見られた。ここでもストーンコールド・スティーブ・オースチンの
What?
をもじった
FAT?
をスローガンに人気を博していた。
しかし所属団体であったガイアジャパン解散に伴い一度は引退をしてしまう。
役者さんになったと思っていたが2009年に復帰。
私が再び広田さくら選手の試合を見るようになったのはその後しばらくしてプロレスリングWAVEに出場するようになってからだった。
WAVEにはコミカルな試合も出来る選手が多数おり、社長のGAMI(当時)さん自ら率先してボケたりずっこけたりメガホン片手に鋭いツッコミを入れたりして会場を盛り上げていた。
闘牛(ブルファイト)・空選手やチェリー選手といった対戦相手にも恵まれていたと思う。
ほどなくして再びコスプレも披露。二度か三度、渋谷シュウさんに化けたことがあったけどあれは爆笑だった。完成度、技や動き、声まで再現度マックスで完璧な芸術品だった。
あとアイスリボンの藤本つかさ選手に化けたときもサイコーだった。入場、コール時のポーズ、後姿も絶品だったし、ビーナスシュートを当然決められるはずもなくコーナーポストで立ち往生するなど広田選手ならではのアレンジ?も効いていた。
そして何より凄まじかったのは、飯田美花さんとのタッグ「さくらご飯」でのハイブリッド広田さくら、だった。
Catch the WAVE2014に出場した際にコミカル封印を宣言。その言葉通りに激戦を闘い抜いてみせた。ガイア時代に培われた長与イズム、その底力を見せつけるも惜しくも優勝は逃してしまう。落ち込む広田選手だったが、そこで飯田美花さんが「ハイブリッド」を提案。
「その手があったか」
と広田選手。
これが強かった。硬軟自在の攻撃と老獪な戦術、それにWAVEの名バイプレーヤーで職人タイプの飯田美花さんとの相性もバッチリで第11代DUAL SHOCK WAVE王座を獲得。
残念ながら飯田美花さんは引退してしまったが、私は女子プロレス史に残る名タッグだったと思う。
へなちょこでやりたい放題に見えるけど、ひと一倍泥臭い試合をする広田選手と、地味だけど確かな技術を持ち、たまに大先輩の広田選手にもボソっとズバっと物申す飯田さん。試合後のマイクも見ものだった。
その後、結婚から数年が経ち妊娠、出産を経て復帰した広田選手。
豊富なキャリアとネタの数々もさることながら、戦うママとなった今もその試合ぶりは健在だ。
故Ray選手の追悼大会でのコスプレも相変わらずのクオリティだった。
今後、広田選手を脅かす選手は出てくるのだろうか。
コミカルなだけではプロレスは出来ない。
広田選手にはガイアジャパンで叩きこまれた基礎がある、だからどんな試合でも相手でも自分の世界に引きずり込める。それがあるからこそ無限の技を持つ女と呼ばれコミカルとシリアスを使い分けて戦ってきたGAMIさんも広田選手を認めていたのだろう。
破天荒ぶりと多彩な活躍では松本都選手がいる。芸能事務所にも所属しアイドル活動で歌もリリース(ブラックDPGの絶句東京は私のお気に入りだ。あとムンちゃんも可愛いかった)するなどプロレスの枠を超えた活動をしている。試合はちょっと危なっかしくて不格好なときもあるけど、常に前を向いて真剣そのものの立ち振る舞いは見事だ。自信と狂気に満ちた言動・行動で周囲を振り回し、我が道をゆく。
もう一人、個性派で独自の世界観を構築しているフェアリー日本橋選手も見逃せない。
広田選手も松本都選手も知らない人からするとポスターの写真では正統派に見える。試合を見てそのギャップにビックリすることだろう。
しかしフェアリー日本橋選手は覆面、それもなんだか不思議なテイストのデザインでリングネームがフェアリーときて最初からお客さんには覚悟と疑問が出来上がっている。
いったいどんな選手なんだ?
どんな戦い方をするんだ…?
その疑問と不安がそのまま具現化して、リング上を華麗なスキップでクルクル回る。
なんとも不可思議なフェアリーワールドを展開するのだ。手に持ったステッキでの「魔法」や独特の言語感覚で相手を惑わせたりお客さんをほんわかさせたり…もうあとは実際に試合を見てもらうしかない。ホントに凄い。
私が実際に試合を見た限りではこのお二方がかなり近いと思われる。同じことをしなくても、何かしらで広田選手と並び立つ可能性は高い。
ちなみに救世忍者乱丸師匠は別格で、もう並び立つどころか張り合っていると思われるのでここでは当てはまらない。
強いとか弱いとかいう観点からは飛び出してしまったようで、プロレスリングの原点たる勝負になると真価を発揮する、能ある鷹は爪を隠すを地で行く広田選手。
最近では同じ愛知出身でもある宮崎有妃選手と抗争したりタッグを組んだり、相変わらず話題を振りまいている。
よくよく考えてみると元々は子役でドラマにも出ており、長与千種さんの弟子としてデビュー、大舞台も踏み、引退、復帰、コスプレ、自主興行の開催、結婚、出産、と波乱万丈。もうやり尽くしたのでは?と思ってもまだ次がある。
旧姓・広田さくら選手にはいつまでも我々ファンの意表を突き、度肝を抜いて欲しいと思っております。
全部広田。欲しかったんだよなー昔。
ちょっと変わっているがこれが正式なリングネームだ。2012年に結婚を発表したのを機に改名した。それまでは「広田さくら」と名乗っていた。
デビュー当時は正統派も正統派。あの長与千種さんが旗揚げしたガイアジャパンに入団し将来を嘱望された期待の新人だった。
私も当時すでにプロレスマニア街道を邁進していたので、週刊誌でその姿を何度も見た。
が、それはすでに驚くべき姿だった。
当時の広田選手は伸び悩み、その結果としてインパクトとパフォーマンスに特化した唯一無二の存在となりブレイクを果たす。
自作のチャンピオンベルトやコスプレ衣装は手の込んだもの(費用がかさんで仕方がない、と深夜のテレビ番組に出演した際にボヤいていたのを覚えている)であり、時には実際にモノマネをする当人にコスチュームを借りてリングに上がったこともある。
何よりあの長与千種さんとチーム・エキセントリックを結成。ご本人も楽しそうに試合を行っていたのも印象深い。それは広田さくら選手が単なるギミック、パフォーマンスだけの選手ではなく「長与さんが認めるプロレスラーであるという証明」に他ならない。それにしても髪の毛をおてんば縛りにしてコマネチをする長与さんを見ることになるとは、あの当時の女子プロレスファンはみんな驚いただろうな。
私だってびっくりしたもの。クラッシュギャルズ全盛期は当然知らなくても、テレビ番組で度々特集されたり当時の映像が流れ、女子プロレス界でも常に話題を振りまく「伝説のプロレスラー、長与千種」のことは誰だって知っている。その長与さんを従えて我が道を行く広田さくら選手はカッコよかった。
有名な選手の姿かたちだけでなく技もマネする、試合ごとにコスプレやギミックを用いるなど常にテーマを打ち出す、当時アメリカンプロレスでは定番だったお客さんがメッセージを書いたボードを掲げる光景も広田さくら選手の試合では頻繁に見られた。ここでもストーンコールド・スティーブ・オースチンの
What?
をもじった
FAT?
をスローガンに人気を博していた。
しかし所属団体であったガイアジャパン解散に伴い一度は引退をしてしまう。
役者さんになったと思っていたが2009年に復帰。
私が再び広田さくら選手の試合を見るようになったのはその後しばらくしてプロレスリングWAVEに出場するようになってからだった。
WAVEにはコミカルな試合も出来る選手が多数おり、社長のGAMI(当時)さん自ら率先してボケたりずっこけたりメガホン片手に鋭いツッコミを入れたりして会場を盛り上げていた。
闘牛(ブルファイト)・空選手やチェリー選手といった対戦相手にも恵まれていたと思う。
ほどなくして再びコスプレも披露。二度か三度、渋谷シュウさんに化けたことがあったけどあれは爆笑だった。完成度、技や動き、声まで再現度マックスで完璧な芸術品だった。
あとアイスリボンの藤本つかさ選手に化けたときもサイコーだった。入場、コール時のポーズ、後姿も絶品だったし、ビーナスシュートを当然決められるはずもなくコーナーポストで立ち往生するなど広田選手ならではのアレンジ?も効いていた。
そして何より凄まじかったのは、飯田美花さんとのタッグ「さくらご飯」でのハイブリッド広田さくら、だった。
Catch the WAVE2014に出場した際にコミカル封印を宣言。その言葉通りに激戦を闘い抜いてみせた。ガイア時代に培われた長与イズム、その底力を見せつけるも惜しくも優勝は逃してしまう。落ち込む広田選手だったが、そこで飯田美花さんが「ハイブリッド」を提案。
「その手があったか」
と広田選手。
これが強かった。硬軟自在の攻撃と老獪な戦術、それにWAVEの名バイプレーヤーで職人タイプの飯田美花さんとの相性もバッチリで第11代DUAL SHOCK WAVE王座を獲得。
残念ながら飯田美花さんは引退してしまったが、私は女子プロレス史に残る名タッグだったと思う。
へなちょこでやりたい放題に見えるけど、ひと一倍泥臭い試合をする広田選手と、地味だけど確かな技術を持ち、たまに大先輩の広田選手にもボソっとズバっと物申す飯田さん。試合後のマイクも見ものだった。
その後、結婚から数年が経ち妊娠、出産を経て復帰した広田選手。
豊富なキャリアとネタの数々もさることながら、戦うママとなった今もその試合ぶりは健在だ。
故Ray選手の追悼大会でのコスプレも相変わらずのクオリティだった。
今後、広田選手を脅かす選手は出てくるのだろうか。
コミカルなだけではプロレスは出来ない。
広田選手にはガイアジャパンで叩きこまれた基礎がある、だからどんな試合でも相手でも自分の世界に引きずり込める。それがあるからこそ無限の技を持つ女と呼ばれコミカルとシリアスを使い分けて戦ってきたGAMIさんも広田選手を認めていたのだろう。
破天荒ぶりと多彩な活躍では松本都選手がいる。芸能事務所にも所属しアイドル活動で歌もリリース(ブラックDPGの絶句東京は私のお気に入りだ。あとムンちゃんも可愛いかった)するなどプロレスの枠を超えた活動をしている。試合はちょっと危なっかしくて不格好なときもあるけど、常に前を向いて真剣そのものの立ち振る舞いは見事だ。自信と狂気に満ちた言動・行動で周囲を振り回し、我が道をゆく。
もう一人、個性派で独自の世界観を構築しているフェアリー日本橋選手も見逃せない。
広田選手も松本都選手も知らない人からするとポスターの写真では正統派に見える。試合を見てそのギャップにビックリすることだろう。
しかしフェアリー日本橋選手は覆面、それもなんだか不思議なテイストのデザインでリングネームがフェアリーときて最初からお客さんには覚悟と疑問が出来上がっている。
いったいどんな選手なんだ?
どんな戦い方をするんだ…?
その疑問と不安がそのまま具現化して、リング上を華麗なスキップでクルクル回る。
なんとも不可思議なフェアリーワールドを展開するのだ。手に持ったステッキでの「魔法」や独特の言語感覚で相手を惑わせたりお客さんをほんわかさせたり…もうあとは実際に試合を見てもらうしかない。ホントに凄い。
私が実際に試合を見た限りではこのお二方がかなり近いと思われる。同じことをしなくても、何かしらで広田選手と並び立つ可能性は高い。
ちなみに救世忍者乱丸師匠は別格で、もう並び立つどころか張り合っていると思われるのでここでは当てはまらない。
強いとか弱いとかいう観点からは飛び出してしまったようで、プロレスリングの原点たる勝負になると真価を発揮する、能ある鷹は爪を隠すを地で行く広田選手。
最近では同じ愛知出身でもある宮崎有妃選手と抗争したりタッグを組んだり、相変わらず話題を振りまいている。
よくよく考えてみると元々は子役でドラマにも出ており、長与千種さんの弟子としてデビュー、大舞台も踏み、引退、復帰、コスプレ、自主興行の開催、結婚、出産、と波乱万丈。もうやり尽くしたのでは?と思ってもまだ次がある。
旧姓・広田さくら選手にはいつまでも我々ファンの意表を突き、度肝を抜いて欲しいと思っております。
全部広田。欲しかったんだよなー昔。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる