妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子

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 ブランデーとの交渉は数日間に及んだ。駆け引きは熾烈を極め、彼は狡猾な笑みを浮かべながら、少しでも有利な条件を引き出そうと私を試した。しかし、私もまた引くつもりはなかった。彼女は冷静に、時には甘い言葉を織り交ぜながらブランデーの関心を引きつけ、最終的にはジェシカの服をすべて買い取らせることに成功する。
 莫大な資金が手に入り、私は満足感に浸った。しかし、それだけでは終わらなかった。この機を逃さず、私は次なる一手を打つことを決めた。以前からグレイソンに秘密裏に依頼していたモロヘイヤ商会の悪事に関する証拠の数々――裏取引、密輸、脅迫、そして不正な資金洗浄――それらを整理し、警察へと送り届けた。

 ブランデーは、事業の急激な崩壊を予感しながらも、どこか余裕のある態度を見せていた。しかし、警察の動きは速かった。商会に踏み込んだ警察官たちは次々と証拠を押収し、商会の主要メンバーを次々と拘束していく。信頼していた部下たちは皆、保身のために彼を裏切り、情報を漏らしていった。最終的に、ブランデーはすべてを失った。モロヘイヤ商会は壊滅し、彼自身も追い詰められた。彼の目には、もはやかつての威厳はなかった。
 こうして、私の実家の事業は立ち直り、かつての栄光を取り戻した。日々の忙しさに追われながらも、穏やかで充実した日々が始まる。かつての屈辱に苛まれた時間は、遠い過去のものとなっていった。

 そんなある日、思いもよらぬ人物が私のもとを訪れた。フレデリックだった。以前とは異なり、やつれた表情をしていた彼は、私の前にひざまずき、懇願するような目で言った。

「僕が間違っていた。君を捨てたことを、心から後悔している。どうか、もう一度やり直してくれないか?」

 かつては、自分の全てを捧げてもいいと思った相手だった。しかし今は違う。私は微笑みながら、静かに答えた。

「嫌よ」

 驚愕し、絶望に満ちたフレデリックの顔。

 私は迷いなくその場を立ち去った。
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