断罪

宮下里緒

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五十六話 事件考察 路地裏にて

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「なにそれ、意味わかんないんだけど」

困惑する頭とは反対に私の声はとても落ち着いていた。

「本気なの?」

そんなの大志の顔を見ればわかるのに聞き返さずにはいられない。

「ああ、こんなこと冗談で言うか。アイツは司は・・断罪事件の犯人・・人殺しだ」

大志は最後につらそうにその言葉を口にする。

友達が犯罪を犯したそれはもちろん辛いことだけど、ここで大志が顔をゆがめているのはたぶん人殺しこの罪のせいだろう。

人殺し、それは誰もが害悪だと認識するものだけど私たちの中でその言葉はまた特別なものだった。

あの施設は元々親を悲惨な事件で亡くした子供たちが引き取られた施設だったけど中でも私と大志、司と慶介の四人は殺人事件によって家族を失った。

だから、殺人という言葉を聞くとどうしても家族のことがフラッシュバックのように甦り悲しみと同時に来る犯人への激しい憎しみで胸が狂いそうになる。

幼いころは私もそれが原因でよく発作のようにヒステリーを起こしていた。

だから、私たちの中では殺人という言葉は暗黙の内に避けるべきものになっていた。

だからこそここで大志がこの言葉を使ったということはそれだけ覚悟と確信があって話をしているということなんだろう。

「何か確証があるの?」

「決定的な証拠があるかといえば首を振る。証拠をつかんだわけでもないし、現場を見たわけでもない」

「ならなんで司のことを疑うの?」

意味が解らない。

私から見れば大志は変な妄想に囚われているようにしか見えない、けれどここに千晃たちも一緒に居る以上ただの妄想というわけじゃないんだろう。

「なぁ、恵子。お前、俺と司が何で仲たがいしたか知ってるか?」

妙にさわやかな表情でそう聞いてくる大志に私は首を横に振った。

「そっか。なら、あれ覚えてるか?時実泰三が殺された事件。ほら、あのガラの悪いオッサン、俺らみんなアイツのこと嫌いだっただろう」

「うん」

何で今更そんな古い話をするのかはわからないけどとりあえず素直にうなずく。

けどなんだろう、やけに晴れやか志がなんだか長年の苦悶から解放された咎人のようで私は不安を拭い去れないでいる。

「まぁ、あの事件犯人は時実泰三の母親の時実早子つまり院長先生だったわけだけど動機は何か知ってっるか?」

「確か、度重なるお金の取立てに耐えられなくなってとかだったよね。私らも現場何回も目撃してるし」

かつての記憶を思い起こしながら語ると大志はうんと頷く。

「ああ、世間ではそういわれてんな。けど、ここに俺たち一部のヤツしか知らない真実がある。ってか、この二人には俺が話したわけだから実際知ってたのは俺と司の二人だけだったんだけどな」

「アンタと司が?」

「正確にはもう一人、ソイツはもう死んだが。恵子は大口大介のことを覚えてるか?俺らの二三学年上の男だった奴だ」

「なんかさっきからそんな質問ばっかだね。思い出せってそんなんばっか。まぁ、同じ施設の人だし覚えてるよ。なんか暗い感じの人だったよね陰気ってのが服着て歩いてるみたいな感じの」

随分ひどい言い方だと外野の男二人が笑うけどたぶんあの人を見たことがあるなら私が言っていることが理解できると思う。

孤独を愛してるというよりは孤独に取りつかれているようなあの人のことを。

「ああソイツだ。実は俺と司そして大口大介はあの事件がおきる前日、時実泰三を襲う計画を立ててたんだ」

それはいきなりの犯罪告白だった。

「ああ、襲うていっても少し怪我をさせるくらいのつもりだったんけどな、俺は」

「なんでそんなこと?」

「なんでか。まぁ、馬鹿だったんだよ俺も司もあのオッサンを痛みつければもう二度と俺らの前に現れないだろうなんて安易な考えをしてた。そのあとの報復や事件を起こした自分らがどうなるかなんて考えずに。大口の奴はどうも俺らをたきつけて楽しんでたみたいだけどな」

本当に馬鹿だこの男は。

そんな危ないことなんで勝手に決めて突っ走るんだろう。

そんなに悩んでたならみんなに相談した方が絶対いいに決まってるのに。

たとえいい解決方法が思いつかなくても話すことで冷静になれるのに。

「コレがうまくいけばみんな幸せになれる当時の俺は躍起に満ちていた。けど司は俺とは少し違う考えをしてて、アイツは俺らだけで事をなすことに疑問を感じたそうだ、やるには一番の被害者である時実早子自らの手であの悪人を裁くそれが一番いい方法だってその日の夜に院長先生に全部を話したらしい」

馬鹿だと誰かが呟いた。

それに同意見だった。

ただこの時に馬鹿だという感情は大志に向けられたものとは少し違う。

大志のそれはあまりにも短絡的な行動に対してだったけど、司のは彼のその身勝手な価値観に対して向けられたものだった。

「それで、どうなったの?」

「どうもこうも知っての通り。院長先生は俺たちが事を起こす前に時実泰三を殺害した。それでけだ」

「それだけって意味わかんないんですけど。そんだけで殺す?もっといろいろ方法あるでしょ」

こんなこと大志に言っても仕方がないことだけど私は耐え切れずそう詰め寄ってしまった。

そんな私を引き離したのは大志ではなく千晃ときたおじさんだった。

「まぁ、そう熱くなんなよお嬢ちゃん。もう十年ほど昔のことだ今更どうにもなんねーさ。ただ補足すればその司ってガキがしゃべったから事件がおきたってのは間違いだ。あの事件は遅かれ早かれ起きてただろうよ、お前らがあの施設にいた時点でな」

「どうゆう意味」

それじゃまるで原因は私たちにあるみたいじゃない。

「オイオイ、そう睨むな。別にアンタらが悪いわけじゃない。いやむしろアンタらは被害者の立場だしな」

「なに、それ?」

「あーまぁコレは世間的には発表されてないことなんだが、まぁ今更隠すことまないな。アンタ等は当事者だし何よりもうここまで巻き込まれてるから」

おじさんは勿体つけながら煙草を取り出す。

「実はな、時実養護施設その創設者、時実正は君たちみたいに幼少時家族を失ったまぁ、養護施設を思いついたのはそこが始まりかも知れないが、別に彼は善意からあの施設を作ってたわけじゃないんだ。彼は、あの施設を創る前、とある有名医大に勤務していたそうなんだがその頃彼が担当していたのが今はなきロボトミー手術でね」

「ロボトミー?」

聞きなれない単語に私は首をかしげる。

「精神外科とも言ってね一昔前まであった医学療法さ。精神を患った患者の脳を直にいじくることで改善させようってものだったんだけど。副作用がひどかったらしくて、死亡する人もいたし、人格がまるで別人のように変貌する人もいたとかで廃止された医療だよ」

そう補足してくれたのは千晃でそれはありがたかったのだけどその、脳をいじくるという表現の気分の悪さとその光景を想像してしまって思わず頭を押さえた。

「ああ、簡単な説明ご苦労さん。で、ロボトミーが廃止になったことで当然、時実正もその医療からは手を引くことになったんだがどういった信念を持ってたのか彼は独自の技術により存続させようとした。それが、精神的ショックによる人格の改ざんだった。おかしな話だろ。元々人格の変異は精神外科の副作用的に起きるものだったのにヤツはそちらの研究にはまり込んでいったんだ。まぁ、なんかの異常人格だったのかもな」

そう、淡々と話を続けるおじさんだが聞かされているこっちはその情報量の多さにまったく話がついていけないでいる。

ただただ目を瞬くばかりだ。

正直話の半分も整理できないで耳を突き抜けている。

けど、その中でもわかったのはその時実正って人がおかしな人だってことだろう。

私はその人のことは知らないけど、院長先生の夫だったていうし事件の真相と何か関係してるのだろうか?

いや、関係しているから話しているのだろうけど。

私は一呼吸すると再び話に集中することにした。



「それでヤツの新しく考えた精神的ショックに基づく人格改ざんってのは、まぁこれはヤツの幼少時の経験から来たんだろうが。人は大きなショックを受けると防衛本能から心を麻痺させ自らの内にこもるよう機能が働くらしんだが、ヤツはその空になった心に新たな人格を植え付けることで元の人格を上書きできるかってことを試みていたらしい」

「まさかそんなこと」

「できるわけないか?まぁ、俺もそれが可能だったかはわからんさ。その心の上書ってのもどんな方法だったのか当事者たちが死んだ今じゃわからんしな。ただ、時実養護施設、あの施設には地下壕があってなそこからは得体のしれない機器の残骸がいくつか見っかったよ」

頭のてっぺんからまるで氷水をかぶらされた様に体温が消えていくのが感じられる。

多分血の気が引いてるんだろう。

「ねぇ、一つ聞いていい?その人は一体誰に・・その実験をしようとしたの?」

そんなの誰だかは頭の片隅で理解できているそれでも聞いてしまうのはそれを認めたくない自分がいるのだろ。

そう、ずっと耳元でささやいている『それは違う』『そんなはずないって』だけど、そんな思いはいとも簡単に裏切られる。

「あ~まぁ、言いにくいことだがここで隠すわけにもいかんから正直に言おう。君たちだ。家族を失うという深い心の傷、それを良く知る時実正はそこを利用しようと思ったんだな。まったく、自分と同じ境遇の子供に酷いことを」

本気でそう思っているのだろうか?

おじさんの顔はその言葉とは裏腹に平静なままだ。

本当は何も感じていないのか、それとも大人だから顔には出さないように努めているのか私にはどちらなのか読み取ることは出来なかった。

「私たちが。じゃあ、私も何かされたの?」

そんな記憶はない、今までの人生で一度としてそんな怪しい機械を見たことは無かった。

だけど、相手は脳医学の先生だっていう何の知識もない私なんて格好の獲物だろう。

もしかして私が忘れている、いや忘れさせられているだけで本当はもう何らかの処置がされているのかもしれない。

今ここにいる私という人格は作られたもので本当の林田恵子じゃないのかもしれない。

地面に穴が開き底に突き落とされるかのような恐怖と不安が湧き上がってくる。

けれど、そんな私を見かねたのか千晃がそっと肩を支えてくれた。

「大丈夫だよ。恵子は大丈夫。君はちゃんと君だから心配しなくていい」

そっと撫でられる頭、その感覚が心地よくて私の荒波のように乱れた心はだんだんと平静を取り戻していく。

「うん」

「ったく、やけるな」

そんな私たちを横目で見ながら大志はバツが悪そうにそう呟く。

「話を続けてもいいかな?まぁ、秋瀬くんの言う通りきみたちは大丈夫だ。君たちが院に入ったのは正が死んだ後だったからな。妻の早子は夫の意志を継ぐ気はなかったというわけだ」

それならそれで話は終わりのはず、めでたしめでたしといわけだ。

けど、これで本当にめでたしならこんな話わざわざする必要なんかない、事件につながるはずがない。

ならまだ何かがあるというわけだ。

「まぁ、けれど息子の泰三の方は違った。あの男、巷ではチンピラのようにふるまっていたが実は密かに父親の後というか志を継いでいてね。その辺にどういった経緯があったかは知らんが」

「つまり、あの時実泰三が施設に度々来てたのは金をせびりにじゃなく俺たちをわたせと院長に言ってたんだよ。アイツもかなりの焦りがあったんだろう。最初はちゃんとした話し合いだったが最後はほとんど脅迫に近いものだった、俺たちが見ていたのはそれさ。それだけ奴も必死だったんだろう。なんせ時間がたつにつれ俺たちの心の穴が埋まっていくんだからな」

大志の言う通りだ。

そう、穴は塞がる。

例え傷は癒えなくてもからのコップに水が満ちるように周りのみんながその空洞を埋めてくれるのだから。

「まぁ、タイミングが悪かったんですよ。痺れを切らし今にも子供たちを襲いそうな泰三、そしてあろうことかその泰三を襲う計画を立てっている子供たち二つの重圧に押しつぶされたあの老女は追いつめられ決断した。子供たちを守るために息子を殺すという決断をね。それがあの事件の真実」

「そう、だったんだ」

それしか言えなかった。

色々と思うことはある、あの施設に隠されたその巨大な計画に対する驚き、それに自分たちが巻き込まれていたという恐怖、そんな計画からみんなを守ってくれた院長先生への感謝、そしてその院長先生にお礼をもう言えない悲しさ。

色々と胸中渦巻くことだらけだ。

だけど、全てが遅すぎてもうそれしか言葉にできなかった。

「そう。そうだったんだよ。先生が俺たちを救ってくれた、そのおかげで俺たちは今もこうして人並みに生きていられている。だけど、あの事件がおきたせいで司は変わった。あの事件がおきたからアイツは人並みの道からそれるようになったんだ」

「なにがあったの?」

「あの事件が発覚した、その日の夜のことだった。俺と司は事件のことを話すために隠れて会ってたんだ。大口のヤツは事件にそもそも関わりたくないのかそれ以来俺たちをも避けるようになったけどな。あんな事件、想像もできなかったからひどく混乱してたよ俺は。けど、そんな俺をよそに司は少し嬉しそうにはしゃいだ感じで言ったんだ『良かったこれでゴミが消えたね』って」

「気持ちの悪いガキだ」

おじさんがそう吐き捨てた。

その顔には明らかに怒りの表情に満ちていた。

「良かったってそういったの司が?」

「ああ、ゴミが消えて。アイツにとってのゴミってのは悪人すべて。だから人を殺した院長先生すらアイツにとってはゴミでしかなかったんだ。俺たちの前じゃ見せなかったが、アイツにはそういった悪人を消し去ろうっていう側面があってな、それがあの事件を機にさらに悪い方向に傾倒していったみたいだ。それがきっかけだったかなアイツと疎遠になったのは」

確かにそんなことをまじまじと言われてしまえば距離が開いてしまうのは無理なのかもしれない、けど悪人を消し去りたい、私は司のその思い考えを否定できない。

だって私もそれを強く望んだ頃があったから。

口では言わないが多分大志も。

だって本当にそんな世の中だったら私たちが家族を失うことは無かったのだから。

誰も気付つけ合わないみんなが平和に暮らせる、私たちのような子供がいないそんな世界を一体何度夢見ただろう?

「けど、そんなの無理」

「ああそうだな」

私のその否定を大志は即、肯定した。

「そもそもそれで自分も罪を犯しちゃったらそれこそ司の言うゴミに自分もなっちゃったてことじゃん。そんなの本末転倒だし」

「だから、院長先生の事件は司にとって一つの転機になったんだ。これから自分のとるべき道を見ることが出来たんだから」

「それが断罪事件につながったってこと?」

「そうだ。院長先生は悪人を自らの手で裁いた。そして罪を犯した自分も自殺という手段でさばいた。司がやろうとしているのはそれだ。アイツの最終目標はそれを世界規模で起こすこと」

それはあまりにも幼稚で馬鹿げた空想論だった。

こんなの本気で出来ると信じている奴は正気じゃないと思う。

こんなの笑い話にもならないことだ。

でも、それが今本当に現実に起きようとしているんだから本当に笑えない。

「こんな、ガキの空想が何で現実に起きようとしてんのかは俺らも分かんねぇよ。まったく、こちとら悪夢の中に迷い込んだ気分だ」

おじさんがそう喚いた。

「ねぇ、先生と同じことをってことは司な奴もしかして最後は」

「ああ、アイツは最後に死ぬつもりだろう。それがいつなのかは俺にも分かんねぇ。けど、アイツは罪を重ねどこまでも自分を悪に落とした後、自分を殺すだろう。それによって殺した側も綺麗にいなくなるゴミは綺麗に片づけられる」

「なんでそんな」

頭を抱えてそな場に座り込む、膝から伝わるアスファルトの冷気はズボン越しでも氷のように冷たかったが今はそんなことどうでもよかった。

「けど、それが不思議だな。司くんがそれだけの意志を持っているのは別にいいさ。世の中には自分の命を犠牲にしてでも何かをやり遂げようっていう人間はいるからね。だけど、人類浄化の会それに各地で起きている暴動、話によると彼らの中の何人かはすでに事件後自殺しているらしい。コレは異常だよ。なぜ、あれだけの人数がまるで一つの意志を持つかのように行動しているのか、それも自身が必ず最後には破滅すると分かっていて、変だよどう考えてもまるで何かに操られているみたいだ」

私は後ろに立つ千晃に目をやる。

千晃は眉間にしわを寄せながらそのまま黙ってしまった。

「オイ、悪い冗談はよせ。あれだけの人数操るなんて洗脳だとしても無理がある。そんなの出来るのはそれこそ神様ぐらいだろう。きっと何かからくりがあるはずだ」

おじさんはおじさんでまるで自分に言い聞かせるようにそう言うがそれも何の確信のないこと、この得体のしれない不気味さは拭い去ることが出来ない。

「俺も、何度かあの組織にチームの奴らを送ったがそこらへんについては何もわからなかったな」

「俺らも駄目だ。というか警察はこの事件になぜか妙に消極的だ。上の連中が変に圧力をかけてくる。それが彼らの独断なのか、それともさらに上の奴らの命令なのかはたまたまだ何か裏があるのかは知らんがな。ただ状況証拠はそろいすぎているわけだし、いずれ捕まえることは出来ると思うが」

「当てにならないな。けど圧力か、それも謎だな」

大志は謎なんてことを簡単に済ませてしまったけど、そんな軽く流していいものだろうか?

警察すらも動けない相手って一体なに?

私にはなんだかこの現状がとても危なく恐ろしいものに思えてならない。

それに司、あの優しい笑みを浮かべる幼馴染がこの数分間の間にとても恐ろしい存在に思えてならなくなった。

だけど、それでも彼は大切な仲間の一人、大志だってそう思ってるからあんな話を司にしたんだろう。

力が抜け震える足を右手で殴り無理やり立ち上がらせる。

「ねぇ大志。アンタはどうするの?司をどうするつもり?」

「止めるさ。止めないといけねぇ。俺はあいつのしていることが間違っていると思うだから止める」

それは息を吐くかのような自然さだった。

はじめっから決意が決まっていたということだろう。

なら私も気持ちはおんなじだ、いくら変わってしまったといっても友だちのことほっとくわけにはいかない。

まだどうすれば彼を止められるかなんてわからないでいる、けどみんなで考えればいい案も浮かぶはずだ。

そう決意を硬くし大志に協力することを進言しようとした時。

「あーあと恵子。分かってないだろうから言うが、お前はここまでだぞ。これ以上この件にはかかわるな、後はおとなしくしてろ」

そう大志にくぎを刺されてしまった。

「なんで!ここまで知らされて黙ってみてろなんてできるわけないじゃん!!」

「あのな、今回お前にこのことを話したのはお前が好奇心で動かないようにするためだ。元々俺はお前を巻き込むつもりはなかったんだ。その方針は今も変えてない。だから、なにもするな。そもそもお前に何ができるんだ恵子?」

そういわれると言葉が出ない。

「でも・・・」

「俺を少しは信じろ、絶対に司を死なせるようなまねはさせない」

「僕たちも彼に協力するつもりでいる。恵子は危ない真似をしないでくれ」

大志に続いて放たれる千晃の懇願めいたお願いを聞いてしまうと反論は出来なくなってしまった。

「わかったよ」

納得できてわけじゃないけどこれ以上駄々をこねても皆を困らせるだけだ、ここは大人しく引き下がることにした。

「わかった。まってる。でも約束して、無茶だけはしないで。絶対に」

千晃と大志二人は私の目を見てコクリと頷いてくれた。



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