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三十五話 凪沙の災難
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この日、白岩凪沙は自身の迂闊さを嘆いていた。
現在彼女のいる場所は胡桃宮中学の校舎内、凪沙は昨日の晩からずっとこの校舎に取り残されていた。
このような事態に陥ってしまったのには昨夜まで時をさかのぼることになる。
昨日の昼、修と別れ自宅へと帰り着いた凪沙は自分の部屋に着くなりパチリと己の頬に平手打ちを食らわした。
『この、ヘタレめ!』
ベッドへ放り投げたカバンからバサリと落ちるのは一冊のノート、そこにはとても丁寧で見やすい綺麗な字で中学でこれから習うであろう様々な教科の勉強法が書かれていた。
まるで勉強の攻略本ともいえるほどの出来のそのノート、名前欄には『金城百合』と、書かれていた。
これは百合手製の学習書、勉強のできる百合が自分の為ではなく人のために誰が見てもうまく勉強ができるようにっと作り上げたものだった。
そんな百合に対して凪沙は以前『そこまで、みんなの為にしてあげることないのに』と言ったことがあったが百合は笑顔で、『別に人の為じゃないよ、これは自分の為』と答えた。
『こんなことが?』
『そうだよ。私が作った参考書と一般の参考書、どっちが分かりやすいか勝負!みたいな?もし、私の方が分かりやすいなら先生の才能があるかもね』
『百合が先生かいいかも。けどいくら自分の為でもそれ楽しくないでしょ?』
『これ自体はね。だけど、自分の実力が上がってるのを感じるのは楽しいよ。みんなに感謝されるのもね。せっかくの人生だもん、いろいろ経験しないと、勿体ないよ。意外と短いものだよ人生。そ・れ・にいつか役に立つかもだし』
『なんの?』
『秘密!』
そうして出来上がったのがこの参考書。
一つ一つに教科の勉強法、テストに出やすい問題、公式や年号の覚え方、勉強を楽しむ方法などを詳しくそして読み手が飽きないように砕けた言葉で読みやすく書かれた参考書はたちまちクラスで話題となりみんなの平均点が急上昇したのはもはや伝説となっていた。
こんな参考書を作り出した百合はクラスのみんなはもちろん先生たちからもその才能を絶賛され、この参考書も一般的に売り出すべきだなんて話も上がっていたが、当の本人の『そういったのには興味ないから』の一言で沈静化していった。
『ほんと、勿体ないよね』
それらのことを思い出し凪沙は呟く。
百合はとても恵まれた子なのにそれを本人があまり生かそうとしていない、それは本当にもったいないことだと思う。
『けど、私がそれを言っても仕方がないよね』
そう、結局は本人の意思の問題、そこに他人が口を挟んでも彼女の思いが変わらない限りはどうすることもできない。
たとえどれだけの才能を持っていても。
凪沙は百合のノートを見つめながら密かにそう思う。
『さてと、ノート返しにいかないと』
再び立ち上がりノートをカバンへとしまう凪沙、実はこのノートいまやクラスで順番待ちが出来るほどの人気で現在は萩下という女子の手にあったのだが実は昨日学校に忍び込んだ凪沙は彼女のロッカーからノートをこっそりと持ち出してきたのだった。
それは自分も勉強ができると修にアピールするためのもだったが・・・。
『結局、勉強を教えるどころかこのノートを見せることもできなかったな』
とにかく、ノートは今のうちに帰しとかないと、明日には部活で登校してきた萩下が異変に気づいてしまうだろう。
そう思い、学校に忍び込んだまでは良かったのだが、巡回している警備員から隠れているうちに眠りふけ目が覚めたら台風で帰れないという始末。
「なんだかな」
そう、もうなんだかなとしか言いようがないほどにふがいない状況。
幸い台風はちょうど目に入ったようで今なら家に帰られるけど、
「連絡、やっぱりしてこないよね」
自身の携帯電話を見ながらそう呟いた。
「自分の子供が連絡なしで一晩家に帰らなかったのに、冷たいな」
ここまで関心を示されないとは悲しいを通り越して笑えてくる、苦笑を浮かべ携帯をしまう凪沙、風もやんだ今のうちに学校を出ようと正門の方へと向かうとそこには予想外の人物が立っていた。
「桐村くん!?」
おそらく台風の中を歩いてきたのだろうその体は全身びしょぬれで髪先からはまだ雫が垂れ落ちていた。
いつもは明るい金髪もこの時は濡れているせいもあってかまるで錆びついた鉄のように見えた。
「ちょ!どうしたのそんな格好で。とにかくこっちきて」
修の腕をつかみそのまま校舎の中へと連れ込む凪沙、夏場だというのにやけに冷たいその腕に凪沙は驚いた。
「とりあえずこれで体拭いて。替えの服はこのジャージで我慢して」
体育倉庫室にあったタオルと赤いジャージを修に手渡す凪沙、どちらも新品のようでタオルからはいい香りが漂ってきた。
修はそれを受け取りはしたものの体育倉庫の暗闇に突っ立ったまま動こうとはしなかった。
「私外出ておくから早めに着替えてね。風邪、引いちゃうから」
今まで見たことのない修の様子に凪沙はそれだけしか言えずに扉を閉めた。
かけるべき言葉が見当たらなかった。
縮まってきたと思っていた距離が再び白紙に戻った感覚、まるで自分たちの間にこの体育倉庫の鉄扉のように彼の心がどこか奥深くに閉じこもってしまったよう。
「ねぇ、何かあったの?」
その声は自分でも意外に思えるほどはっきりとよく出ていた。
多分、彼の姿を直視しなくてよかったからだろう。
温もりの感じない扉に手を当て凪沙は問いかけた。
「なんで?」
直ぐに帰ってきた返事は扉越しのせいかやけにくぐもっていて修の声じゃないよう思えた。
「なんでって、こんな日に学校にいたから」
「それは、お前もだろ」
「私はちょっと野暮用でだよ」
「俺もだ」
返答は短く、いつもの修の明るい雰囲気はまるでないく目の前の扉のようにとても無機質な物のようだ。
「へぇ~。桐村くんの野暮用ってなに?」
「なんで?」
一段と低くなる声、そこではじめて彼の声に感情が織り交ざってきたように聞き取れた。
けれど、その感情はどす黒いほどの敵意。
扉越しからでも感じられるむき出しの感情に凪沙が押し黙っていると次は修の方から話しかけてきた。
「なぁ、凪沙は百合と友達なんだよな?」
「そ、そうだけど」
「なら、家知ってるよな?教えろよ」
「なんで?」
「話があるんだ。だから教えろ」
脅迫に近い強気な口調、扉の向こうにいる修が明らかにいつもと違うことを感じ取った凪沙は扉から少し身を離す。
「ちょ、どうしたの桐村くん。少し落ち着こうよ」
その言葉が、狂気の引き金だった。
「なに、落ち着こうって?俺は落ち着いてる、落ち着いてるさ!何でそんなこと言うんだよ、なぁ!落ち着けって何上から目線で言ってるんだよ!」
「き、桐村くん!?」
ぎりぎりと扉をひっかくような音と共にギギっとゆっくりと開く鉄扉。
その細い暗闇からまるで芋虫のようにうごめく修の指ががっしりと両扉を押さえると、まるで闇の中から這い出るように骸骨が人皮をかぶったかのような痩せ細った裸体を凪沙の前に現した。
脅える瞳で修を見る凪沙と一切の感情が抜け落ちたかのような寂しい瞳で凪沙を見る修、その体からはまだ流れ落ちていた。
「なに、なんなの」
「お前こそ、何でおれから離れるんだよ。どこに行く気なんだよ」
「どこにって、別にあたしは」
「お前、百合に俺のこと言うつもりなんだろ?俺がお前に百合のことしつこく聞こうとしたって」
「そんな、あたし別にそんなこと考えてない!」
「させない!黙らせてやる!お前を、そんなこと言えないようにしてやる」
「きゃ!」
濡れた体を凪沙にぶつけ彼女押し倒す修、倒れた凪沙はすぐに起き上がろうとするも両手を押さえつけられうまく立てない。
「いた!なにするの!」
自身に覆いかぶさる修を見上げるそこで今日初めて凪沙はまともに彼の顔を見た。
目を大きく見開きながら濡れた髪を顔にまと張り付かせる修は、流れ落ちる水滴のせいでなんだか泣いているように見えたのだ。
「桐村・・・くん。やめて、お願いだから」
「百合には言わせない。言わせるわけにはいかない。だから、」
はぎ取られる衣服はまるでバナナの皮のように綺麗に肌から落ちていく。
「ちょ、まって!それはシャレになんないから!」
「・・・」
「ねぇ!聞いてる!?きけよねぇ!」
語尾を荒くする凪沙、それでも修の手は止まらない。
「や、やだ!やめて!やめろー!!!」
室内に響く凪沙の声は再び吹き出した風の音にさらわられ消え去る。
泣き叫ぶ凪沙に覆いかぶさる修は彼女の耳元で小さく『ごめん』と謝ると、自らの烙印を凪沙の体へと食い込ませるのであった。
現在彼女のいる場所は胡桃宮中学の校舎内、凪沙は昨日の晩からずっとこの校舎に取り残されていた。
このような事態に陥ってしまったのには昨夜まで時をさかのぼることになる。
昨日の昼、修と別れ自宅へと帰り着いた凪沙は自分の部屋に着くなりパチリと己の頬に平手打ちを食らわした。
『この、ヘタレめ!』
ベッドへ放り投げたカバンからバサリと落ちるのは一冊のノート、そこにはとても丁寧で見やすい綺麗な字で中学でこれから習うであろう様々な教科の勉強法が書かれていた。
まるで勉強の攻略本ともいえるほどの出来のそのノート、名前欄には『金城百合』と、書かれていた。
これは百合手製の学習書、勉強のできる百合が自分の為ではなく人のために誰が見てもうまく勉強ができるようにっと作り上げたものだった。
そんな百合に対して凪沙は以前『そこまで、みんなの為にしてあげることないのに』と言ったことがあったが百合は笑顔で、『別に人の為じゃないよ、これは自分の為』と答えた。
『こんなことが?』
『そうだよ。私が作った参考書と一般の参考書、どっちが分かりやすいか勝負!みたいな?もし、私の方が分かりやすいなら先生の才能があるかもね』
『百合が先生かいいかも。けどいくら自分の為でもそれ楽しくないでしょ?』
『これ自体はね。だけど、自分の実力が上がってるのを感じるのは楽しいよ。みんなに感謝されるのもね。せっかくの人生だもん、いろいろ経験しないと、勿体ないよ。意外と短いものだよ人生。そ・れ・にいつか役に立つかもだし』
『なんの?』
『秘密!』
そうして出来上がったのがこの参考書。
一つ一つに教科の勉強法、テストに出やすい問題、公式や年号の覚え方、勉強を楽しむ方法などを詳しくそして読み手が飽きないように砕けた言葉で読みやすく書かれた参考書はたちまちクラスで話題となりみんなの平均点が急上昇したのはもはや伝説となっていた。
こんな参考書を作り出した百合はクラスのみんなはもちろん先生たちからもその才能を絶賛され、この参考書も一般的に売り出すべきだなんて話も上がっていたが、当の本人の『そういったのには興味ないから』の一言で沈静化していった。
『ほんと、勿体ないよね』
それらのことを思い出し凪沙は呟く。
百合はとても恵まれた子なのにそれを本人があまり生かそうとしていない、それは本当にもったいないことだと思う。
『けど、私がそれを言っても仕方がないよね』
そう、結局は本人の意思の問題、そこに他人が口を挟んでも彼女の思いが変わらない限りはどうすることもできない。
たとえどれだけの才能を持っていても。
凪沙は百合のノートを見つめながら密かにそう思う。
『さてと、ノート返しにいかないと』
再び立ち上がりノートをカバンへとしまう凪沙、実はこのノートいまやクラスで順番待ちが出来るほどの人気で現在は萩下という女子の手にあったのだが実は昨日学校に忍び込んだ凪沙は彼女のロッカーからノートをこっそりと持ち出してきたのだった。
それは自分も勉強ができると修にアピールするためのもだったが・・・。
『結局、勉強を教えるどころかこのノートを見せることもできなかったな』
とにかく、ノートは今のうちに帰しとかないと、明日には部活で登校してきた萩下が異変に気づいてしまうだろう。
そう思い、学校に忍び込んだまでは良かったのだが、巡回している警備員から隠れているうちに眠りふけ目が覚めたら台風で帰れないという始末。
「なんだかな」
そう、もうなんだかなとしか言いようがないほどにふがいない状況。
幸い台風はちょうど目に入ったようで今なら家に帰られるけど、
「連絡、やっぱりしてこないよね」
自身の携帯電話を見ながらそう呟いた。
「自分の子供が連絡なしで一晩家に帰らなかったのに、冷たいな」
ここまで関心を示されないとは悲しいを通り越して笑えてくる、苦笑を浮かべ携帯をしまう凪沙、風もやんだ今のうちに学校を出ようと正門の方へと向かうとそこには予想外の人物が立っていた。
「桐村くん!?」
おそらく台風の中を歩いてきたのだろうその体は全身びしょぬれで髪先からはまだ雫が垂れ落ちていた。
いつもは明るい金髪もこの時は濡れているせいもあってかまるで錆びついた鉄のように見えた。
「ちょ!どうしたのそんな格好で。とにかくこっちきて」
修の腕をつかみそのまま校舎の中へと連れ込む凪沙、夏場だというのにやけに冷たいその腕に凪沙は驚いた。
「とりあえずこれで体拭いて。替えの服はこのジャージで我慢して」
体育倉庫室にあったタオルと赤いジャージを修に手渡す凪沙、どちらも新品のようでタオルからはいい香りが漂ってきた。
修はそれを受け取りはしたものの体育倉庫の暗闇に突っ立ったまま動こうとはしなかった。
「私外出ておくから早めに着替えてね。風邪、引いちゃうから」
今まで見たことのない修の様子に凪沙はそれだけしか言えずに扉を閉めた。
かけるべき言葉が見当たらなかった。
縮まってきたと思っていた距離が再び白紙に戻った感覚、まるで自分たちの間にこの体育倉庫の鉄扉のように彼の心がどこか奥深くに閉じこもってしまったよう。
「ねぇ、何かあったの?」
その声は自分でも意外に思えるほどはっきりとよく出ていた。
多分、彼の姿を直視しなくてよかったからだろう。
温もりの感じない扉に手を当て凪沙は問いかけた。
「なんで?」
直ぐに帰ってきた返事は扉越しのせいかやけにくぐもっていて修の声じゃないよう思えた。
「なんでって、こんな日に学校にいたから」
「それは、お前もだろ」
「私はちょっと野暮用でだよ」
「俺もだ」
返答は短く、いつもの修の明るい雰囲気はまるでないく目の前の扉のようにとても無機質な物のようだ。
「へぇ~。桐村くんの野暮用ってなに?」
「なんで?」
一段と低くなる声、そこではじめて彼の声に感情が織り交ざってきたように聞き取れた。
けれど、その感情はどす黒いほどの敵意。
扉越しからでも感じられるむき出しの感情に凪沙が押し黙っていると次は修の方から話しかけてきた。
「なぁ、凪沙は百合と友達なんだよな?」
「そ、そうだけど」
「なら、家知ってるよな?教えろよ」
「なんで?」
「話があるんだ。だから教えろ」
脅迫に近い強気な口調、扉の向こうにいる修が明らかにいつもと違うことを感じ取った凪沙は扉から少し身を離す。
「ちょ、どうしたの桐村くん。少し落ち着こうよ」
その言葉が、狂気の引き金だった。
「なに、落ち着こうって?俺は落ち着いてる、落ち着いてるさ!何でそんなこと言うんだよ、なぁ!落ち着けって何上から目線で言ってるんだよ!」
「き、桐村くん!?」
ぎりぎりと扉をひっかくような音と共にギギっとゆっくりと開く鉄扉。
その細い暗闇からまるで芋虫のようにうごめく修の指ががっしりと両扉を押さえると、まるで闇の中から這い出るように骸骨が人皮をかぶったかのような痩せ細った裸体を凪沙の前に現した。
脅える瞳で修を見る凪沙と一切の感情が抜け落ちたかのような寂しい瞳で凪沙を見る修、その体からはまだ流れ落ちていた。
「なに、なんなの」
「お前こそ、何でおれから離れるんだよ。どこに行く気なんだよ」
「どこにって、別にあたしは」
「お前、百合に俺のこと言うつもりなんだろ?俺がお前に百合のことしつこく聞こうとしたって」
「そんな、あたし別にそんなこと考えてない!」
「させない!黙らせてやる!お前を、そんなこと言えないようにしてやる」
「きゃ!」
濡れた体を凪沙にぶつけ彼女押し倒す修、倒れた凪沙はすぐに起き上がろうとするも両手を押さえつけられうまく立てない。
「いた!なにするの!」
自身に覆いかぶさる修を見上げるそこで今日初めて凪沙はまともに彼の顔を見た。
目を大きく見開きながら濡れた髪を顔にまと張り付かせる修は、流れ落ちる水滴のせいでなんだか泣いているように見えたのだ。
「桐村・・・くん。やめて、お願いだから」
「百合には言わせない。言わせるわけにはいかない。だから、」
はぎ取られる衣服はまるでバナナの皮のように綺麗に肌から落ちていく。
「ちょ、まって!それはシャレになんないから!」
「・・・」
「ねぇ!聞いてる!?きけよねぇ!」
語尾を荒くする凪沙、それでも修の手は止まらない。
「や、やだ!やめて!やめろー!!!」
室内に響く凪沙の声は再び吹き出した風の音にさらわられ消え去る。
泣き叫ぶ凪沙に覆いかぶさる修は彼女の耳元で小さく『ごめん』と謝ると、自らの烙印を凪沙の体へと食い込ませるのであった。
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