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連載
誕生4
しおりを挟む勿論ヴェルムドール達とて、その者達が発言の機会を待っているのは分かっていた。
当然その中には「今後の事」を考えているであろう者もいれば「納得しない」という顔をしている者もいる。
都合のいい者だけを選べるならともかく、一人に質問を許せば我も我もと質問者が増えるのは目に見えている。
「そのくらい」とそれを考えるのは愚かであり、状況が見えていない思考でもある。
何故ならば「命の神フィリア」に直接会えたという事実は人類にとって軽い事ではなく、「神の降臨」という歴史的瞬間に立ち会えた喜びとて永遠ではない。
当然その後には様々な疑問の嵐が吹き荒れるのは当然であるし、その中には「他の神」に関することも含まれる。
いや……それどころか、もはやこの場には関係ない質問すら飛び出してもおかしくは無い。
それは「神という存在に対する依存」でもあるが、遠くあろうと近くあろうとそれが変わらぬことを……いや、むしろ遠過ぎたが故に積もり積もった証明でもあるだろうか。
遠くに在りて思う……とはよく言ったものだが、神からの距離が遠いほどそうなってしまうのだろう。
ともかく、そうした尽きぬ声に一つ一つ答えている暇は無く。多いであろう疑問から解消していくべくフィリアは言葉を紡ぐ。
「この魔力の神の誕生により、世界は大きく姿を変える……神々の帰還が、始まります」
その言葉に、ざわめきは更に広がり大きくなっていく。
神々の帰還。
その言葉に心躍らぬ人類は居ないからだ。
創世神話に曰く。
最初に、土の神アトラグスが大地を作った。
火の神アグナムは大地に火の力を与えた。
水の神アクリアは大地に水の流れを作った。
風の神ウィルムは空に大いなる風を与えた。
光の神ライドルグと闇の神ダグラスは昼夜を作った。
完成した大地に、命の神フィリアが命の種を蒔いた。
こうして出来た世界であると言われていながら、神々に直接会ったのは「勇者」を含む少数の人類のみ。
最果ての海の先には神の暮らす国があるのだとも、シュタイア大陸で最も多く「神器」を保有するキャナル王国には神の世界へ繋がる道があるのだとも言われたことがある。
加護という形で神々の恩寵を感じ、日々の生活に神々の息吹を感じて。
いつしか象徴的な存在と化していた神々が、地上に現れる。
その先にある輝かしい発展を思う者もいるし、出来ればその近くにありたいと野望を燃やす者もいる。
この先の未来に誰もが思いを馳せる中……ヴェルムドールが、その後に言葉を続ける。
「……勿論だが、今すぐという話ではない。世界の魔力を「神の帰還」に耐えるものに安定させるのは手間な話だからな。具体的にいつ、という話をされても答えることは不可能だ」
実際、「今」は上手くいっているが……これを世界中に広げた場合に上手くいくのかヴェルムドールには絶対の自信があるわけではない。
なにしろ誰もやった事が無い事なのだ。そんなものを「絶対に出来る」と言える訳が無い。
ヴェルムドールの背後で何やら「幼い少女」ぶった表情を浮かべている魔神であれば当然のように効率の良いやり方を知っているのだろうが……。
「……よろしいでしょうか」
「あまり多くを答えている時間があるわけではありませんが、それでよければ聞きましょう」
跪いたまま声をあげたクゥエリアにフィリアがそう答えると「ありがとうございます」と返した上でクゥエリアはフィリアへと視線をしっかりと向ける。
「魔王が魔力の神となった……とのことですが。つまり全ての魔族は今後敵ではなくなるということでしょうか?」
なるほど、それは確かに出て当然の質問だ。
シュタイア大陸においてゴブリンやビスティア等の被害は無視できぬものであり、それが今後「敵でなくなる」のであれば様々な変化が発生する。
たとえばゴブリンやビスティアによる村や旅人への被害は減り、それに伴い辺境でも被害を受けていた分が消え豊かになるだろう。
多少安全になった旅路は流通を多少発展もさせるだろうし、観光も増えるかもしれない。
副作用としては冒険者の仕事が多少とはいえ減り「放浪者」と呼ばれていた頃の無法者に戻ったりする可能性もあるし、そうでなくとも減った仕事の分の補填が見つかるかは分からない。
またゴブリン達が危険でないとなればその分山や森の奥深くに盗賊が潜むようになるかもしれない。
どこまで影響が出るかはともかく、「神殿」という影響力の大きい場所に仕える者の質問としては「良い質問」であるが……答えから言えば非常に残念なものを返さざるをえない。
「ザダーク王国の魔族に関しては今まで同様、各国との友好政策を進めていく事になるだろう。だがシュタイア大陸生まれの人を襲う魔族は「盗賊」のようなもの。そのように対処してしまって構わん」
アルヴァに関してもアルヴァクイーンが消えた以上は今後「無限」に湧き出てくるということはない。
魔力の歪んだ場所に現れるモンスターエレメントもヴェルムドールという「魔力を安定化」させる存在の登場によって今後は減少傾向となるはずだ。
「今はただ、心静かに待ちなさい」
フィリアの言葉に、再び一部の……ザダーク王国の面々を除く全員が一斉に頭を下げる。
神の威光は此処にあり、しかし絶対ではない。
此処に来ている者達に「指導者層」が少ない事を思えば、まず最初の言葉としてはこの辺りが妥当であっただろう。
アルヴァ戦役はこの神々の登場によって一つの終幕となり……されど、世界はそれで「めでたし」とはならない。
それが、流れ続ける世界の宿命であるが故に。
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