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その場所は2
しおりを挟む「排除する方法……ねえ。めんどくさいからよくない?」
魔神はヴェルムドールに頭を掴まれたまま、面倒くさそうにそう呟く。
暴れ回る触手はヴェルムドール達に気づいていないのか辺りを破壊して回っているが……よくよく考えると、その動きは不自然だ。
まるで「居るはずなのに居ない誰かを探して暴れている」ような……。
そこまで考えて、ヴェルムドールは自分に抱きついている魔神の頭から手を離しハッとする。
「……ちょっと待て。あの触手の不自然な動き……アレは」
「あー、うーん。つーか、そこからか。めんどくさいなあ」
魔神は心の底から面倒そうな顔をしながらも「えーと」と前置きして語り始める。
「まずアレはね、君と同じで実体じゃない。魔力の流れにちょっかいをかけている歪神の干渉力……みたいなものと考えていいかな?」
そもそも今ヴェルムドール達が居る「魔力の流れ」などというものは、視認できるものではない。
視認できているように見えるのは魔力というものに特に深く干渉できるヴェルムドール達の性質故に「それ」を認識できているわけであって……要はヴェルムドールが命の種に接続する時に見える、あるいは入り込む世界と同様のものであると考えていい。
そして見えている触手は歪神の「魔力に干渉する」イメージであり、ヴェルムドールが派手に干渉している魔力の流れがある事に怒り制しにきたのだろう……と魔神は語る。
「魔力の制御権の奪い合いと言ったけど、視覚化するとこういうイメージだってことだね。魔力の神なんて複数居るものでもないから、本来神レベルでこういう事は起こらないんだけど……これはこれで僕は面白いと思うぜ?」
「……」
つまり、これを排除するというのは一時的な話に過ぎず、これから毎日のように起こりうる事……という意味なのだろう。
だが、ヴェルムドールにはいくつかの疑問が浮かんでいた。
「それは理解した。だが、アレが俺達を認識していないことについての説明がまだだ」
「簡単だろ、そんなの。あれはここの魔力にちょっかいをかけたヴェルムドールをどうにかしようとやってきたんだ。でも、そもそも「魔力の制御権」なんて知識……アレが知ってると思うかい?」
言われて、ヴェルムドールは考える。
魔力の制御権。この世界のこれまでの事を考えると、どう考えても魔神のやりたい放題な状況になっている。
歪神が魔力の制御権について何か知っているならば、当然奪い合いになるはずだが……現状、そうなってはいない。
「封印の影響でそこまで出来ないのではないか? 確かアクリアが最果ての海に封じているはずだろう」
そう、アクリアがかなりの魔力を使って最果ての海に歪神を封じた影響の一つが、今のレムフィリアの海洋事情を作っている一因であったはずだ。
どのような封印なのかは知らないが、当然魔力の制御にも影響があるはずだ。
「そうだね。身体は確かに海の底に封じられた。魔力とて、アクリアの水の魔力に覆われた海の底からでは発揮するのは難しい。でも難しいというわけで不可能じゃあない。実際、アレはチャンスがあれば蘇ろうと世界にちょっかいを出し続けている」
それはたとえば、世界を巡る呪いの如き力。
滅びた種族の姿形をとるそれらはこびり付いた微かな意思によって制御されていたが、それもすでに消え果てた。
それはたとえば、世界に散らばった欠片。
魂すら侵食するソレは命の形を乱し、本来在り得ざる進化へと生物を導く。
「今はたぶん気付いていない。歪神なんていうモノは、滅亡の為の神だからだ。制御しようなんていう思考自体が、そもそも存在しない。でも……」
それが効率的であると気付けば、いつかそうしようと思い至るだろう。
今この場にアレの干渉力があることは文字通り「自分以外」の何かが何事かをやっているのが気に食わないからなのだろう。
「アレには細かい区別なんてつかないのさ。ヴェルムドールが干渉した部分とヴェルムドールの差すらも分からない。だからああやってる。ま、ついでに僕が認識を乱してやってもいるんだが……」
こんな所で君が倒されました、というのも実に面白くないからね……と言って魔神はニヤニヤと笑う。
「勿論、この場の君がやられた所で君自身がやられるわけじゃない。此処にいるのは君のバックアップみたいなもので本体じゃあない。とはいえ僕が見てて面白くない。いいかい、僕が面白いというのは重要だぜ?」
「……なら、面白いものを見せてやる」
「ん?」
ヴェルムドールの問いかけに魔神は首を傾げ……その顎を持ち上げて、ヴェルムドールは自分に顔をしっかりと向けさせる。
「俺は、あんな過去の遺物に関わっている暇はないんだ。倒し倒されなんていうのは勇者がやってればいい。俺には他にやる事が死ぬほどある。だから魔神……お前が俺にアレとの戦い方を教えるなら、俺が最高の蹂躙劇を見せてやる。お前がいつか「自分がとって代わられるんじゃないか」と思うような、最高のヤツをだ。それでは不満か?」
ヴェルムドールにそう言われた魔神は、しばらくきょとんとした顔ををした後……「にんまり」という表現が良く合う、そんな笑顔へと変化する。
「言うじゃないかヴェルムドール。ハッタリでも自信過剰でも、そこまで言えるなら合格点だぜ? でもそれなら、こんなとこでの小競り合いは無しだ。本番前のリハーサルを見ちゃう事程冷めるものはないからね」
その言葉と共に、魔神とヴェルムドールの姿は歪み……その場から静かに消失した。
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