656 / 681
連載
提案
しおりを挟む新しいモノ。
その正体が分かる者は、この場にはヴェルムドールと魔神しか居ない。
カインは勿論、フィリアでさえもヴェルムドール達が何をしようとしているのか分からない。
故に誰も口出しを出来ないまま、ヴェルムドールと魔神は向かい合う。
「そうか、そこまで理解できているか」
「ああ、理解できているさ。だが君の口から言いたまえ、ヴェルムドール。君自身の考えから出た計画だろう?」
魔神に促され、ヴェルムドールは「そうだな」と答える。
そう、ヴェルムドールが目指すべきゴールは「フィリアを倒す事」ではない。
世界が「敵を倒してめでたし」になるようなものでないことは、すでに勇者が証明している。
それに元々フィリアを倒すなどというのは対処療法的なものに過ぎない。
いや、ひょっとするとそれ自体が「そうなれば面白い」という魔神の仕込みですらあったかもしれない。
事実、フィリアを倒せばその後の処理は酷く膨大なものになってしまうだろう。
それすらも魔神は面白がっただろうが……ヴェルムドールとしては冗談ではない。
ならばヴェルムドールがするべきことは、そうではない。
結局のところフィリアが抱えているのは、魔神という面白半分の巨大なモノに対する警戒だ。
それが悪戯に世界に干渉して「歪神の再来」……あるいは、もっと巨大で致命的な問題が発生することを恐れている。
そしてそれは、たった一つのルールを世界に追加するだけで解決してしまうのだ。
「俺は……この世界の魔力の神になる」
それは不可能ではない。
元より魔神と魔王はよく似たモノであり、魔王は神の卵である。
神が欠けた時に魔王がその神になってしまうのも、魔神の性格を考えれば意図していない現象だっただろう。
だが、当然の事だったのだ。
元より魔神とは「力を統括する意思」であり、「力そのもの」でもある。
だが魔王はそれの縮小版でありながら「統括する力」が無い。
故に世界に組み込まれる。だが、それは「統括しようとしていない」だけであるとも言える。
魔神の縮小版たる魔王が統括できるものは、すでにレムフィリアに満ちている「魔力」に他ならない。
特化した魔力ではない、世界に満ちる「魔」の力の流れを司る神。
それがヴェルムドールのなろうとしているモノであり、レムフィリアに新たに組み込もうとしているモノだ。
「魔力の……?」
「それって」
神になるという事は、地上から離れるということ。
それを悟ったイチカとイクスラースが無意識にヴェルムドールの服の裾を強く握るが、それを見ていた魔神がくすくすと笑う。
「違うさ。そんな消極的な自己犠牲じゃない。そうだろう?」
「ああ。俺が魔力の神になれば、この世界の魔力は常に安定した状態に調整される」
それは、魔力が多少の事では乱れないという事を意味し……一つの属性の極端な乱れというものが無ければ、各神による調整が必要なくなるということでもある。
「えっと、それって……」
「……私達を地上に戻す気ですか、ヴェルムドール」
カインの言葉を遮るように、フィリアが呟く。
そう、ヴェルムドールの狙いはそこにある。
神が降臨すると危うくなってしまう世界の魔力バランスを整え、神を今一度地上に戻すのだ。
「だが王よ、神を地上に戻したとて「最初の世界」を繰り返すだけではないのか?」
「そうはならん。俺が魔力の神として存在する限り、レムフィリアの魔力バランスは保たれ続ける」
たとえば人々の意思により歪みが発生しようと、それを現象と為すのは魔力であり……ヴェルムドールがそれを抑えこんでいる限りそれは発生し得ない。
例外は海に封じ込められている歪神くらいだが……それとて、ヴェルムドールが魔力の神となれば世界を崩さずに倒す道筋も見えてくるだろう。
「フィリア。お前の懸念である魔神も、俺が魔力の神となれば簡単に何事かは起こせん」
「ま、否定はしないかな。世界の魔力を制御するモノがいるなら、僕が何かをしようとする際には制御権の奪い合いになるだろう。僕が負ける要素はあるかと聞かれればないんだが……まあ、これまでだって不慮の事故みたいなものだしね?」
魔神の降臨によって世界の魔力事情が大きく変わるのも、すなわち「魔力」という大きな枠での制御者が居ない為に他ならない。
たとえば「創造神」や「魔法の神」などと呼ばれるモノはそうしたものを担当していたりもするが……この世界には不幸にして、それが居なかった。
いや、正確には各神が担当してはいるのだが……まるでパズルのように自分の担当分を動かすという形であるが故に魔神の降臨によって「世界全体の魔力を底上げしてバランスをとる」という大雑把な自動調整をされてしまったのである。
だが「魔力の神」がいれば、そうはならない。
たとえ魔神が降臨したとて、制御権が魔力の神にある以上大幅な変化は起きなくなる。
……もっとも、その魔力の神が調整を放置していれば話は別なのだが。
「お前の懸念はこれで解決するはずだ、フィリア。その上で聞こう……まだ俺と敵対する気はあるか?」
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。