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今こそ、今だからこそ18
しおりを挟む「撃ち落す……あの大きいのを?」
お前に出来るのか、とでも問いたげなニノに、イクスラースは不敵な笑みで還す。
さっきまでならば、出来なかった。
だが、今ならば出来る。
「簡単なことよ」
手本は、先程から「シュクロウス」が見せてくれた。
その特異な使用法故に普通の人類や魔族が使うには困難な、その魔法。
だが、イクスラースならば出来る。
何しろ、かつては自分の魔法であったのだ。
どういう風なプロセスで発動するのかは、イクスラース自身がよく知っている。
足りない魔力はすでに補充され、残る問題はプロセスの改変のみ。
ならば、それも簡単な事だ。
魔法開発に対し天才的であったエレメントの国、霊王国ルクレティオの最後の霊王イースティアであったイクスラースならば、それが出来る。
「見てなさい」
イクスラースは手の平を、上空の巨大シュクロウスへと向ける。
当然の事だが、イクスラースの手は八本もない。
だからこそ、そこのプロセスをまず追加する。
魔力も、もっと消費を低くする。規模はあそこまで広大でなくていいからだ。
「……螺旋の理を此処に。輝きは捩れ、暗闇を穿つ。集え、集え。個が軍となるように、暴徒が革命を為すように、愚直なる信念が不変に穴を穿つように。集え、捩れ、穿て。今日この時、新たな破壊を示せ」
イクスラースの周囲に、六つの輝きが現れ……詠唱と共にイクスラースの前面に集い、捩れて槍のような姿に変わっていく。
それは細部こそ異なるが……間違いなく、シュクロウスの使っていた星光の螺旋槍と同種の魔法。
「星光の螺旋槍」
そして、螺旋の光が放たれる。
上空の巨大シュクロウス目掛けて放たれた光に巨大シュクロウスが気付き見下ろしたときには、もう遅い。
魔法障壁を張る暇など、すでに無い。
「な、に……ガアアアアッ!?」
根元から貫かれた片翼が千切れ、飛行状態を維持できなくなったシュクロウスが落下を始める。
「あのまま落下されたら回復するかもしれないわよ。アイツ、海で何かやったのは間違いないもの」
「問題ない。何処にいようと、ニノからは逃げられないから」
輝き続けていたニノの緑の魔眼が、その輝きを増す。
森が更に急速に広がり……シュクロウスの落下予想地点まで到達した途端、そこの木が早回しのように急激に成長を開始する。
百年、千年、あるいは万かそれ以上の年月を一瞬で過ごすかのような超成長。
場所によっては神樹とすら呼ばれそうな姿となった木から、触手のように枝が伸びる。
「緑の魔眼だと……だが、これは……っ!」
「絞め殺してやる」
巨人の腕のように太い木の枝が、落下してきた巨大シュクロウスを捕らえ締め付ける。
尋常ならざる力で締め付ける木々には現在進行形でニノの魔力が強く通っており、単純な力では引きちぎる事は難しい。
故に、「高レベルの緑の魔眼による木の根」を知らない巨大シュクロウスはその力のみで引きちぎろうとして予想外の頑丈さに混乱する。
それでも巨大シュクロウスの力ならば引きちぎれないという事もないのだろうが……その無知と油断は、大きな隙である。
「汝、天を穢せし者よ。怖れよ、畏れよ。今、我が手には何も無し。されど天を仰ぎ見よ。汝が制覇せしと思い上がりたる空より振り下ろされたる一撃を見よ。今、我が手には何も無し。されど天より輝ける槍が今、現れる」
イクスラースの詠唱に答え、巨大な魔力がイクスラースから上空へと向けて放たれる。
それは先程シュクロウスがやったように暗黒大陸の曇天を作り出す分厚い雲の下で収束し、夜明けのような輝きを作り出す。
それはシュクロウスが膨大な魔力任せに作り出したものよりは弱く……しかし、確かな威力を秘めた輝き。
「馬鹿な……あれは、あれは我の……!」
「竜墜せし裁きの光槍ッッ!!」
一瞬で収束した光は輝ける光の槍と化し、巨大シュクロウスへと落下する。
「おのれ……おのれえ! マジックガ……」
伸びた木の枝が、巨大シュクロウスの口元を塞ぎ締め上げる。
そして、その次の瞬間。
天より振り下ろされた竜墜せし裁きの光槍がシュクロウスの頭部に炸裂し……その命中地点を中心に、大爆発を巻き起こす。
「……げっ、ちょっと構成間違え……」
「げっ、じゃない!」
即座にニノがイクスラースを抱えて退避し、上空ではゴーディが飛翔して爆発の余波から逃れている。
海にまで迫り出していた「森」は消し飛び、巨大シュクロウスを拘束していた木々は勿論消え……海には、肩から上を消し飛ばした巨大シュクロウスの残骸が残っている。
崩れ落ちるように座り込んだ残骸は、壊れた巨像のようにも見え……傷口と思われる場所からは一滴の血すらも流れず、黒い霧のようなものが溢れているのが見える。
「……倒したの?」
「どうかしらね」
残った木の上から巨大シュクロウスの残骸を見ていた二人の元に影が差し……翼を広げたゴーディが降りてくる。
その頭の上にはヴェルムドールとサンクリードが乗っているが、不機嫌そうに明滅するゴーディの瞳がイクスラースは気になって仕方がない。
「……状況を打開してくれたのは礼を言う。ありがとう」
他にも色々言いたいぞ、でも今は言わないぞ……と。
全身からそう主張しているゴーディの言わんとする所が言われずとも分かりすぎて、イクスラースはそっと目を背ける。
その背けた視線の向こうで……巨大シュクロウスの身体が、ざらりと崩れ……一点に向けて収束していった。
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