勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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今こそ、今だからこそ13

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「ああ、そうしよう」

 ヴェルムドールの言葉にそう答えたサンクリードは、腕の中でジタバタと暴れるイクスラースに気付きパッと離す。
 するとイクスラースは軽い音をたてて地面に降り……裾を軽く叩く。

「私の杖は……あるわね」

 腰の後ろの短杖を確認すると、イクスラースはそれを引き抜く。
 黒薔薇の剣は先程シュクロウスに捕まったときにまた何処かに転がっていってしまったようだが……まあ、後で探せばいいだろうと気をとりなおす。

「そうか、貴様が魔王ヴェルムドール……ここで戦うことになろうとはな」
「何をくだらんことを。ケンカを売りに来た以上、こうなるは必然だろう」

 魔剣ベイルブレイドを突きつけるヴェルムドールを見下ろし、巨大シュクロウスは笑う。

「くく……ははは! 余計な邪魔さえ入らねばそうはならなかったものを……! だが、ここで貴様を殺し吸収すれば我は以前の力を……いや、それ以上の存在となる!」

 巨大シュクロウスの四対八本の手の平に、激しくスパークする雷の球体が出現する。
 それは凄まじいスピードで大きくなっていき……ふわりと巨大シュクロウスの手の平から離れると、その眼前にて合体して一つの巨大な球体と化す。
 
「受けよ……大地砕く万雷の槌エイル・フェルゼルガッッ!!」
闇の魔法障壁マジックガード・ダーク!」

 放たれた雷の珠が弾け、巨大シュクロウスの前方へと無数の雷となって放たれる。
 ヴェルムドールの張った魔法障壁によって弾かれた雷はその周囲の床を砕き、その範囲外の雷もまた轟音をたてながらヴェルムドール達の周りの床を砕いていく。
 そう、「床」を砕いたのだ。
 当然、そうなれば床は崩れ下の階へと落ちるしかない。
 そして、だめ押しとばかりに砕かれた天井の瓦礫が降り注ぐ。
 当然、落下の衝撃も巨大な瓦礫の雨も魔法障壁では防げない。

「ぬっ……!」
「死ねいっ!」

 ヴェルムドールが魔法障壁を解除した隙を狙って、巨大シュクロウスの手の平から巨岩撃アタックロックが放たれる。
 八つの巨岩撃アタックロックはヴェルムドール達を押し潰そうと迫り……しかし、サンクリードとイクスラースの放った火撃アタックファイアが二つを迎撃する。
 そして、四散した巨岩撃アタックロックの欠片を足場にして跳んだニノが風の魔法剣でもう一つを切り裂き、更にそれを足場にしてもう一つを切り裂く。
 残り四つ。
 ヴェルムドールの放った光撃アタックライトが更に一つを砕くが、そればかりにかまけているわけにもいかない。
 下の階の床へと着地したヴェルムドール達が残る岩を砕き上を見上げたその時には、すでに次の雷の珠が巨大シュクロウスの眼前に完成している。
 自分の城を砕いてでも……いや、自分の城すら武器にすることで有利を保っているのだろう。
 実際、空を飛びでもしない限りは足場の問題は常に付きまとう。
 それに比べれば、巨大シュクロウスはその巨体故に足場が崩れたところでヴェルムドール達ほどの大きな隙とはなり得ない。
 あのシュクロウスの魔法が広域魔法であるというのは、実に厄介であるということだが……。

「しまった、ニノ……!」

 ニノは、岩を足場にして空高く跳んでいたが……別に飛べるわけではない。
 そして、これはニノの弱点でもあるが……ニノは、魔法の才能があまり無い。
 風の神の力を受けた剣で魔法剣は発動してるが……魔法障壁は使えないままなのだ。

大地砕く万雷の槌エイル・フェルゼルガ!!」

 そうして放たれた大地砕く万雷の槌エイル・フェルゼルガは再び視界を埋め尽くし……当然のように空中のニノにも襲い掛かる。
 普通であれば、絶体絶命のその状況。
 しかしニノはいつもの不機嫌そうな表情のまま、二振りの曲剣で風の魔法剣を発動させる。
 そしてそのまま、自分に向かってくる雷を迎撃する。
 そう、魔法剣による魔法の迎撃。
 魔法への対抗策は通常であれば魔法障壁だが、これも立派な対抗策の一つである。
 激しい音が響き……ぶつかり合い消失したのは、ニノを狙った雷撃。
 それとて全てを消し去ったわけではない。
 自分に届く分だけを斬っていくニノとて、空を飛べぬ身では限界がある。
 雷を切り裂く度にその身は衝撃で翻弄され、少しの油断が死を招く。

「チッ……!」

 ヴェルムドールとの「調査」にイチカを差し置いて一緒に来られたまではいいが、これは少し面倒な事態になった、とニノは舌打ちする。
 緑の魔眼を使える状況ならもう少しやりようはあるのだが、此処でそれを使えば今度こそ次元城は復活不能な状況になるかもしれない。
 それはニノのプライドが許さなかったのだが……こうなれば仕方ないだろうか。
 ニノがそう考えた瞬間……下から凄まじい勢いで迫ってきた半透明の黒い壁がニノを通り過ぎていき、眼前に迫っていた雷を弾く。

「……ん」

 確かめるまでも無い。
 ヴェルムドールが超広範囲の闇の魔法障壁マジックガード・ダークを張ることでニノを守ったのだ。
 その事実がニノには嬉しいが……同時に、このままでは終われないという気持ちも強くなる。
 
 ……だから。
 こちらに向かって飛来する「それ」に向かって、ニノは叫ぶ。

「ゴーディ! アレは「まだ」ニノの獲物っ!」

 そう、飛来するのは翼持つ巨大な騎士像……この暗黒大陸に存在する唯一のマスターゴーレム、ゴーディ。
 
「ならば、乗れっ!」

 差し出された手を足場にして、ニノはゴーディの頭へと跳ぶ。

「今度はゴーレムか……!」
「魔王軍中央将ゴーディ……いざ参る!」

 ゴーディの拳が次の攻撃の準備をしていた巨大シュクロウスの顔面へと叩き込まれ……ゴーディの頭から更に上へと跳んでいたニノの一撃が、巨大シュクロウスの腕の一本を深く斬り裂いた。
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