459 / 681
連載
過去の話
しおりを挟む……そう、それは遥か昔の話。
人間でいえば「昔々」で始まるような、輝ける伝説の一幕。
勇者リューヤとその仲間達は、レプシドラの中央にある王城の前へとやってきていた。
そこにいるのは、魔王シュクロウスを倒す為に集った仲間達。
真面目で説教臭くて、しかしドジな人間の賢者テリア。
自由奔放で、しかし変なところで義理堅い虎の獣人ジュノ。
いつも五月蝿くやかましい、メタリオと人間のハーフ、デューク。
すました顔をして一番の暴れん坊だったシルフィド、ルーティ。
そして彼女達をまとめるのは異世界より召喚された勇者リューヤ。
出会いと別れを繰り返し絆を深めたリューヤ達が手に入れるべき神の加護も、残すは闇の神ダグラスの加護のみ。
「はあー……なんていうか街中もそうだったけど、この城も綺麗に残ってるよなあ」
「いや、つーかありえねーだろ。あたいも建築は専門じゃねーけど、明らかに異常だぞ。全く劣化の後が見えねえ」
デュークがバカを見る目でリューヤを見ると、リューヤは見る者が見ればビンタしたくなるような自慢げな顔を向ける。
「何言ってんだ。レルが管理してるからに決まってるだろ?」
なあ、と言ってリューヤは一番新しい同行者……レルスアレナへと話を振る。
王城の大きな入り口を見上げていたレルスアレナは振り向くと、忌々しげにリューヤを睨み付ける。
「私は別に建物を整備した覚えはありません。あと、私の名前はレルではなくレルスアレナです」
「え!? そうなん!?」
「大体レルスアレナが一人で街一つ分を整備しきれるわけないだろ。あれだけボロボロの遺跡見てきて、まだわかんねーのかよ」
バーカ、と言われてヘコむリューヤの耳元でデュークは建物整備の大変さについて語り始め……更にヘコんでいくリューヤを見かねたのか、テリアが二人の間に割って入る。
「ま、まあまあ。リューヤ様の居たという世界ではそういう事が出来たのかもしれませんし。ね?」
「ああ、そういえばリューヤの世界は魔力を使わずに動くゴーレム中心の文明だったか。それならテリアの言う通りかもしれないな」
ジュノが納得したように頷くが、リューヤはサッと目を背ける。
機械のことを説明するには「ゴーレム」という単語しかなかったのだが、勿論そんなことは出来はしない。
とはいえ、「無理です。バカですみません」とは中々言えなかった。
どう誤魔化したものかとリューヤが思案していると、その頬をルーティが突く。
「どう誤魔化そうかって顔になってるわよ。ていうか、貴方の世界はそういうの無理って言ってたじゃない。魔法便利、超スゲーとか言ってたのは何処の誰よ」
「うぐっ」
なんだ、やっぱりじゃねえかと溜息をつくデュークと、困ったように笑うテリア。
そんな一行を見守っていたレルスアレナは、持っていた杖で地面をコンと叩く。
「バカやって遊んでるなら、置いて行きますよ?」
「え!? あ、ご、ごめん!」
「……まったく。貴方達に実績が無ければ「ただのバカ」と認定できたのですがね」
そう、リューヤ達とレルスアレナは「仲間」ではない。
互いに目的があり、リューヤ達にレルスアレナが同行している形である。
その目的は、とても明快だ。
レルスアレナの目的は、「闇の神ダグラス」に会う事。
リューヤ達の目的は「光の鍵」と対になる「闇の鍵」を手に入れる事と、「闇の神ダグラスに会い最後の加護を手に入れる」事。
このうちの「闇の鍵」はレルスアレナが持っている。
闇の神ダグラスに会えるという手段も、レルスアレナは持っている。
つまり、レルスアレナとしては普通なら勇者とやらに協力する意味は無い。
……だが、今回ばかりは事情が違った。
「認めがたい事実ですが、貴方達がこのレプシドラに踏み入れた時より城から闇の魔力が流れ出ました。間違いなくダグラス様の領域へとつながる扉は開いている……そして、恐らくそれは」
「俺達が来たから……ってこと?」
「あるいは。どちらにせよ、行けばハッキリします」
そう言って、レルスアレナは懐から黒い鍵を取り出す。
「これがあれば、ダグラス様の領域に繋がる門を開けるといわれています。今までは無理でしたが、今なら……」
レルスアレナの目的は、ただ一つ。
何故、あの滅びの日にダグラス様は降臨してくださらなかったのか。
世界を救う勇者を命の神が遣わすというのであれば、何故エレメントの滅びは見過ごされたのか。
……そして何故、かつての同胞を彷彿とさせるモンスターが世界中に出現しているのか。
それを、闇の神ダグラスに問う為であった。
そんなレルスアレナの横顔を黙って見ていたリューヤは、自分の両頬を手の平でバンと勢いよく叩く。
これはリューヤが気持ちを切り替える時のおまじないのようなもので、レルスアレナ以外の全員はそれに合わせるように真剣な表情になる。
「……よっし、気合入った! それじゃあ皆、闇の神様に会いに行こうぜ!」
「あ、ちょっとリューヤ……もうっ!」
言うなり、リューヤは城の中へと駆け込んでいく。
その後を追うように仲間達も走っていき……急にやる気を見せ始めたリューヤ達を、レルスアレナは感情の読めない目でじっと見つめる。
「……まあ、先程のよく分からないノリよりはマシですかね」
そう呟いて、レルスアレナも城の入り口をくぐっていった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。