勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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闇の神の居場所

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「……いいの? ヴェルっち」
「何がだ?」

 レルスアレナの姿が完全に消えた後、遠慮がちに言うロクナにヴェルムドールは疑問符を浮かべる。

「いや、だってさ。あいつからまだ情報とれただろうし……闇の神のことだって」
「持ってるように見えたか?」
「え?」

 レルスアレナの消えた方角をじっと見つめながら、ヴェルムドールは答える。

「アレは、確かに俺達の知らないことも知っているだろう。だがアレの本質は自分の抱えるものを守るのに必死な抵抗者だ。簡単に言えば、余裕が無い。だからああも攻撃的になるし、視野も狭くなる。その分目的達成には尋常でない力を出すだろうが……」
「こちらの求める情報を持っている可能性は少ない……ということですか?」
「持っていたとしても大幅に偏っている可能性はあるな。どちらにせよ、アレを足止めして不興をかってまで今すぐ得なければならない情報ではない」

 イチカにそう答え、ヴェルムドールは手の中の魔法石を見つめていたイクスラースへと視線を向ける。

「闇の神についてだが……いる可能性があるとすれば、ここくらいのものだ。だが恐らくは、レルスアレナには接触していない」
「えーと、どうしてですか?」
「どう見ても追い詰められた獣じゃったからのう。拠り所があるようには見えんかったわい。そういうことですじゃろ?」

 クリムの疑問にアルムが答え、ヴェルムドールが頷く。

「レルスアレナとて霊王国の王族であったなら、闇の神に繋がる方法くらい心得ていたはずだ」
「なら、やっぱり」
「それでは繋がらなかったということだろう」

 そう、人がどうしようもなくなった時に祈るのは神だ。
 霊王国でいえばそれは「闇の神ダグラス」であったはずであり……レルスアレナとて、あそこまで歪む前にダグラスに祈ったはずだ。
 だが、それでも救われる事は無かったのだろう。

「繋がらない手段を尋ねたところで意味が無い。だが、心当たりはもう一つある」
「あー、なるほど。確かに実際会った人がいますものね」

 ヴェルムドールとルモンは頷き合うと、ルーティへと視線を向け……その場の全員の視線がルーティへと向く。

「……私は。いえ、私達がダグラス様の領域に入った場所は、この街の中央……王城です」
「ああ、あの妙な建物か。迷路みたいだったな」
「もっとも初期に作られた建物らしいですからね。階段という概念すらないですから……」

 楽しそうに笑うラクターと苦笑するルーティに、ヴェルムドールは咳払いする。

「で、どうだラクター。そこに何か妙な気配はあったか?」
「妙の定義が分からねえが、特に気になるところはなかったぜ」
「ふむ……」

 これが他の者であればもっと詳しく聞くところだが、ラクターに関してはその必要は無い。
 ザダーク王国に存在する魔族の中で最古に位置するラクターは、その戦闘能力に関してもトップクラスである。
 その中にはあらゆるものに対する「感覚」といったものも含まれており……ちょっとした違和感であろうと敏感に察知する。
 事実、先程杖魔が現れる時にも一番最初にその方角に視線を向けたのはラクターであったりするのだが……。

「その妙な気配というのは、もしかして……」
「ん? ああ。ウィルムの領域に入ったときに無理矢理こじ開けたからな。今回も入り口を見つけさえすればいけるかと思ったんだが」
「……なんてことしてるんですか」

 思わずよろめくルーティだったが、すぐに気を取り直す。

「……それは多分、ウィルム様の領域だからこそ出来た事です。あの方は気紛れですし、面白い事を積極的に許容する傾向があるんです」
「その辺りの事情は俺は知らんが、ライドルグの領域への入り口も侵入可能になった時は似たようなものを感じた。ならば、ダグラスの領域も似たようなものだと思うが」

 ……もっともライドルグの領域に関しては向こうから開けなければ此方では気付かないようなものだったが……どちらにせよ、ルーティという「場所の分かっている」者がいるのだから試す価値はあるだろうと考えていた。
 だが、ラクターが何も気付かなかったという事は、その入り口は今は開けられる状態には無いのかもしれない。
 だとすると、監視を置いてチャンスを伺う必要もあるかもしれない。
 この場所への転移もすでに可能である以上、打てる手はいくらでもある。

「……行っても、会えないかもしれませんよ」
「どういう意味だ?」

 ヴェルムドールがルーティに聞き返す。
 そのまま聞き流すには、あまりにも不穏な台詞だったからだ。
 もし「魔族が嫌われている」とか、そういう問題であれば何か手を打つ必要っがあると考えたヴェルムドールだったが……ルーティの口から出たのは、それすら超えるものだった。

「……私達は、ダグラス様には会っていません。いいえ、会えなかったのです」

 しん、とその場が静まり返る。
 再び誰かが口を開くより先に、ルーティは城のほうへと視線を向け……語り始める。

「……あれは、私達が魔王シュクロウスとの決戦の為に最後の「闇の加護」を得る為にこの場所に来た時の話です」
************************************************
ちなみに一番サイコなのはルルガ……げふんごふん。
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