勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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いつか夢見た光3

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 照明魔法。
 それは文字通りに「明かりを灯す」魔法である。
 基本的には白く輝く球体のような光を生み出し、一定範囲を照らす事が可能としている。
 ろうそくやカンテラの明かりなどよりも余程明るいのだが、魔法である以上魔力を使用する。
 その為、大都市の大通りなどではそれ専門の人間による「魔法街灯」が採用されていることもあるが、まだまだ一般的ではないのが実情だ。
 しかし安全性が高いのと、いざという時には炸裂させて目潰しにも使えることから冒険者や行商人などの旅をする者には必須の魔法としても知られている。
 ちなみにザダーク王国では有り余る魔力により、ほぼ一日中街の全域を照明魔法が浮かんでいたりするが、それはさておき。
 とにかく、こうした「暗い場所」の探索には最適な魔法である。
 それを躊躇う理由となると……それが不都合であるからに他ならない。

「だって、ここってたぶん……光の神ライドルグの領域ですよね?」
「恐らくな」
「それがこんなに暗いって……なんだかおかしくありませんか?」
「……」

 そう、此処は薄暗い。
 光の神たる存在の居る場所としては、あまりに不自然に過ぎないだろうか?
 思い返す。
 確か、前回のウィルムの「風の大神殿」はどうだったか。
 あの時はニノの魔力を追う他にもサンクリードの勘頼りという裏技的な事をやったが……考えてみれば、あの迷路も含めて試練だったのだ。
 ならば、この薄暗い空間もまた試練の「理由」と考えられないだろうか。

「なるほどな。何か道標があると考えているわけだな?」
「はい。たぶんですけど、光に関する何かがあるんじゃないかと思います。それ故に薄暗いのだとしたら、照明魔法を使うことが正しいのか間違っているのか……」

 そう、照明魔法を使うことが「安易」と考えることも出来る。
 もし照明魔法を使うことで「手がかり」が消えるような仕掛けであれば、それは非常に面倒な話になるだろう。
 しかし、逆に「照明魔法を使う」ことで起動するような仕掛けであった場合は使わなければ面倒なことになる。
 正解がどちらであるかなどということが分かるはずもなく、それ故の悩みでもあった。
 ヴェルムドールにも「正解」など分かるはずもなく……思案した後、こう答える。

「使ってみればいいだろう」
「え? でも」
「悩むのは時間の無駄だ。悩むなら、こう考えろ。この迷宮の暗さは光の神の住む場所に相応しくない。故に自分の光を捧げるのだとな」
「光を……捧げる……」

 カインはその言葉を反芻すると何事かをぶつぶつと呟き始め、足で床をトントンと叩き始める。

「光を……そういえば、そもそも光の神ライドルグは……」

 カインは呟き、やがてハッとした顔で分岐路へと駆けて行く。
 そこで天井を見上げ、やっぱりだと声を上げる。

「来てください、たぶんコレです!」
「コレ?」

 興奮した様子で手招きするカインの近くへヴェルムドールが歩いていくと、カインは天井を指差してみせる。

「ほら、そこの天井……何か穴らしきものがあるのが見えません?」

 言われてヴェルムドールが天井を見上げると、なるほど。
 そこには確かに丸い窪みのようなものが存在している。

「あの穴がどうした?」
「思い出したんです。光の神ライドルグの別名は、「最も高きから見下ろすもの」「永遠に輝くもの」、そして……「光を掲げるもの」。つまり……照明ライト!」

 片手をあげたカインが照明魔法を起動すると、その手の平の上に球状の輝きが生まれる。
 それをカインは窪みに嵌るように浮上させていく。

「……もうちょい右……えーっと……よっ、と!」

 何度かの調整の後に、照明魔法は天井の窪みにすっぽりと嵌る。
 床を煌々と照らす照明魔法をじっと見上げていたカインは……少しの沈黙の後にあれ、と言って首を傾げる。

「ち、違ったかな……?」

 カインが自信なさげにそんな事を呟いた、その瞬間。
 照明魔法が窪みに吸い込まれるように、キュインという音を立てて消える。

「うわっ!?」
 
 それと同時に窪み自体が淡い輝きを放ち……やがて一本の光の線を右の通路へ向けて走らせる。
 ヴェルムドール達を導いているかのようなそれは、一定の位置でピタリと止まり……窪みの輝きも、少しずつ弱くなっていく。
 
「ほう、これはこれは……つまり、こういうことか」

 ヴェルムドールも同じようにして照明魔法を窪みへと嵌めこむと、やはり同じように窪みは照明魔法を吸収し、その輝きを強める。
 同時に光の線も輝きを増し、その範囲内の道が光の線によって明るく照らされ始める。

「つまり、こうして「光を掲げて」進めということか。くくっ、やるじゃないか」
「はは、偶然の思いつきですよ。でもこれで辿り着けそうですね」
「他に何も無いならな」

 早速進もうとしたカインが、その言葉にピタリと足を止める。

「えーっと……何か心当たりがあるん、ですか?」
「ないな。だが、仮にも神の試練だ。他に何も無いと考えるのも気楽に考え過ぎかと思ってな? そう、確か風の神の試練はゴーレムをけしかけてきたらしいが」
「……気をつけて進みましょう」

 腰の剣に手をかけるカインを見て、ヴェルムドールは面白そうに笑う。
 半分冗談だが、もう半分は冗談ではない。
 確実に行動を阻害するような「何か」はあるだろうな……と。
 口には出さないが、ヴェルムドールはそんなことを考えていた。
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