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第九章

第391話 【個人戦最終戦・3】

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「こうして、ちゃんとした場で戦うのは初めてだなラルク」

「そうだね。大体は訓練の続きって感じだったからね。今は、もうそれも無くなったけど」

 イデルさんとの戦いが終わり休憩時間を入れた一時間後、俺と義父さんは会場に入り中央で挨拶を交わした。
 義父さんは訓練の時も愛用していた剣を持って来ている様で、本気だ俺と戦おうとしてるんだと雰囲気で伝わって来た。だから、俺は合えて義父さんにある事を告げる。

「義父さん、俺この試合では剣術しか使わないから」

「……それは、俺が魔法を使うに値しないと?」

「違うよ。義父さんは俺の目標の人物でもあるから、ちゃんとした場でちゃんとした形で義父さんから教わった〝技〟で勝利がしたいんだ」

 血は繋がっていない俺を本当の息子の様に扱い自分の技を俺に教えてくれた師でもある義父さんにちゃんとした形でお礼がしたいと、ずっと思っていた。しかし、どんなお礼をすれば良いのか悩みに悩んだ俺は〝成長した姿を見せる〟それが一番の親孝行だと思った。

「義父さん、イデルさん、アルスさん、俺には凄い師匠が付いてくれた。だから、俺はその全員に教わった技でお礼がしたいと考えてこの大会に挑んだんだ」

「そうか、ならその気持ちに俺は全身全霊で受け止めよう」

「ありがとう。義父さん」

 俺と義父さんの会話が終わると、司会の人が待っていたとばかりに鐘を鳴らした。
 その瞬間、目の前に構えをとっていた義父さん一瞬にして俺の目前へと迫り下から上へと剣を振った。

「キィィィッ!」

 すんでの所で剣を間に挟み、軸をズラし躱した俺に対して義父さんは、息付く暇もなく更に攻撃を仕掛けてきた。
 義父さんの戦い方は、素早さとこれまでの経験を活かした戦い方で剣術という点からも経験値的に不足している俺は押され気味だった。攻撃に転じても義父さんの思考の速さは尋常では無く、俺が攻撃しようとした先に既に剣があり受け止められ、更に攻撃をされるという理不尽な強さを見せつけられていた。

「このっ! 前線から身を引いた人なのに動きが劣ってないのは、相当訓練してきたんだね」

 義父さんの動きを観察しながら戦っていると、ふと気づいた事がある。それは、以前よりも足の運び剣の切れ、殆どが前に訓練していた時よりもよくなっていた。

「当り前だ。ラルクと戦えると思ったら、体が勝手に動いていてなシャルルからも夜遅くまでやりすぎだって怒られまくったよ」

「はは、そうなんだ。それは、嬉しいよ……それじゃ、俺も義父さんに良い所見せないとねッ」

「キィィッ!」

 打ち合いを続けながら義父さんから聞いた内容に、俺は更に体に流れる血が勝手に湧き上がり今まで以上に体が動きやすいと感じていた。そのおかげか押され気味だった俺は、義父さんと互角に打ち合いをしていて、両者剣による傷が蓄積されていった。
 魔法を使わない。それは回復魔法も身体能力強化も出来ない純粋な身体能力の勝負をしている俺と義父さん、義父さんの事をしっている人からすれば無謀・無茶と言われるかも知れないが、俺は今この戦いを凄く楽しんでいた。

「義父さん、行くよ?」

「おう。来いラルク!」

「ッ!」

 義父さんとの戦いの最中、俺は心の中で義父さんに感謝していた。
 この世界に来て最初に頼り、ずっと世話になりっぱなしの義父さん。俺はこの人に自分がこんなに成長していると見せる事が最高の恩返しだと確信した。

「はは、やっぱり義父さんは強いや。俺、能力値10000超えてるんだよ? それに剣術のレベルMAXだし、そんな俺に勝つなんてやっぱり義父さん化け物だよ」

「経験値の差だな、良い戦いだったよラルク」

「うん、俺も楽しかったよ義父さん。またやろうね」

 千人を超える挑戦者の頂点にたったのは、グルド・フォン・ヴォルトリス。元Aランク冒険者にして、ラルク・フォン・ヴォルトリスの義父であり武術の師。互いに全力を出し合った個人戦最終試合は多くの観客を魅了して幕を閉じた。

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