こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム

文字の大きさ
17 / 43

16.大切なのは中身です

しおりを挟む




「なにか・・まずかっただろうか?」



黒光りする立派な甲冑と重厚なマントを身につけたデレクさんの形のいい眉毛が少し下がり気味に見える。

不安げな幼い子供みたいな表情。


ぐっ。

ざ、罪悪感が。



「いえいえ。ちょっとビックリしただけです。勝手にSクラスの冒険者だと思ってたから。」



心の動揺など微塵も感じさせないスマイルをうかべられたと思う。

デレクさんがホッとしたように微笑んでくれたから。



「良かった。もう店に来ないでくれと言われるかと思った。」



「そんなこと言いませんよ~!デレクさんは大切な常連さんですもの。」



ゴメンナサイ。

今度会ったとき他人のフリしようかと一瞬考えました。


うん。そうだよね。

デレクさんに失礼だよね。

大切なのは中身だもん。

デレクさん自身はとっても優しい人だし。


黒騎士団はアイドルグループじゃないといいなぁ。

デレクさんのイケメンぶりを考えると望み薄だとは思うけど。



「こちらにどーぞ。」



椅子を引いてテーブルにデレクさんを誘導し朝食を温めなおす。

炊きたてご飯、豚汁、サバの塩焼き、肉じゃが、卵焼き、キュウリの浅漬け。

はい、お弁当の残りメニューです。



「美味い。ユミの味付けは母とそっくりだ。」



お気に召していただけたようで良かったです。

お店では接客担当だから私が作ったものを食べてもらったの初めてなんだよね。


ごはんを食べるデレクさんとキッチンで片付けをする私。

会話もない静かな空間には食事をとる音と洗い物をする音だけ。


なんだかとっても落ち着くなぁ。

そう思ってたのは私だけじゃなかったみたい。

急いで出かけないといけないはずなのにいつもよりゆっくりと食事を終えたデレクさんがいつのまにか私の横にいて。

見上げれば整ったお顔に満面の笑み。



いや~~!!

クールイケメンがデレた~~!!

膝から崩れ落ちなかったあたしを誰かほめて!



「ユミ。本当にありがとう。王都に来てから初めて心から寛げた気がする。・・またここに来てもいいかと聞くのは迷惑だろうか?」



また不安げな幼い子供みたいな表情になるデレクさん。

そんな顔されたら断れるわけがないじゃないか。

確信犯か?確信犯だな。



「事前に連絡さえもらえれば大丈夫ですよ。」



「ありがとう。」



うわっ。

更にパワーアップした笑顔の破壊力ハンパないです。

眼福。ごっつぁんです。



山盛りのお弁当を宝物を扱うかのような手つきでマジックバックにしまったデレクさんをお見送りしたあと。寝室のベッドにパタリと倒れ込む。

 
・・なんかお弁当作りより疲れた。寝る。おやすみなさい。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

処理中です...