上 下
25 / 61

24 黄色の湖

しおりを挟む
「サラダはできたら、冷蔵の小部屋に入れといて」
「ああ、分かった」

 サラダの仕上げはダオに任せて、次はポタージュ作り。

「あっ、そうだ。入れるだけコンソメのあれ、ないな」

 現世は魔法はなかったけど、本当に便利だったなぁとしみじみ。

「野菜くずと…………ベーコンはなかったから、……骨でいいですか?」

 洋風だしのブイヨンに、味付けしたものがコンソメ。
 本当はベーコンとか鶏肉とか玉ねぎとか、牛とかセロリとか……。
 これだ! ってやつを使いたいけど、代用できるものでなんとかなりそう。

「先に火にかけとこ」

 直近の料理で使った野菜の皮や先っちょ達を、鳥の骨と共に鍋へ。

「いい出汁でてね~」

 それを見送って、ポタージュの主役と対面する。
 ……って結局自分でやることになってしまった。

「うーん、見た目的にピーナッツバター……じゃなかった、バターナッツかぼちゃよね?」

 ひょうたん型のかわいい見た目のかぼちゃ。
 原産地は日本じゃないけど、近年家庭菜園でも人気が出ていて、職場で話題にあがったりしてた。
 分類は西洋カボチャだから、しっとりした日本カボチャより……なんだろう。
 ほっこりホクホク、べちゃってよりは、パラッって感じ。
 ……語彙力が。

「色きれいね~」

 外の皮も中と同じオレンジ系統で、皮は若干うすい色だが、中は鮮やかなオレンジ。
 大きさもほんと、ひょうたんって感じ。

 まずへたの部分を切って、今度は縦に半分に切る。
 はい、きれいなオレンジいただきました~。

 んで、ひょうたんの丸みでいうと下の丸みにある種とわたをくりぬく。
 あー、種も一応……とっとくか。
 皮をむくために、むきやすい大きさへ。
 か、……固い! けど、いける。わたしなら……いけるよ!

 よし、いけた。
 皮もしょりしょりと。皮うすいから、食べれそうだしテキトウで。
 からの一口大へ切る。

「あっと、玉ねぎ忘れてた」

 保管場所にとりに行って、玉ねぎを薄切りに。
 よし、下準備はおっけい。

「しまった! ローリエ入れときゃよかったか」

 ブイヨンの仕上げにローリエをプラスすれば、もっと洋風! になったかな。
 まぁ、いつか試してみましょう。
 
「──終わったぞ」
「お、ありがとね」
「次はなにをやればいい?」
「もうちょっとしたら出番くるから、少し休んでおいて?」
「?」

 ダオの出番はもう少しあと。

「そうだ、あと十分くらいあるから……山芋おろしといてくれる?」
「分かった」

 料理は段取り! っていうもんね。
 隙間時間でほかの準備だ。

 ポタージュ用に用意した鍋へバターを投入。
 あたためて、徐々にとけてきたら玉ねぎも投入。
 はい、良い香り。
 おいしくない訳がないのよ。
 
 カレーとかもだけど、こういうのはしなっとなるまで炒めれば良いよね?
 もう少し炒めよう。

 ちらっとダオを盗み見れば、一生懸命山芋をすりおろす。
 ……体格の無駄遣い、すまない。

「もういいかな」

 しなっとしてきた玉ねぎに、かぼちゃをこんにちはさせる。
 かぼちゃは固いし……中火くらいでいいかな? ちょっと火を魔法で足して……。
 鍋に加える用の水を魔法でコップに出しておく。

「いっけぇ」

 バターの成分が十分にかぼちゃに絡まったら、水を入れて今度は煮る。
 蓋しとこう。

 煮てる間に玄米を炊く用意。
 それとブイヨンの様子見。

 あぁ、エボニーとか知り合いと一緒に魔法を駆使して建てた家だけど……キッチン広く造って良かった。

「こっちはもう良いかな~」

 野菜と骨から、十分成分を抽出できた模様。
 お疲れ様でした。
 火を止めて、すこし冷ましておく。

 ……そうこうしていると、かぼちゃを煮ていた鍋もいい頃合い。
 気分はもう、複数の手を持つ神の気分。
 段取りよく出来る料理人のみなさん、尊敬。

 かぼちゃも蓋をとって、粗熱を冷ます。

「ダオー、そろそろ出番だけど、いける~?」
「ああ、もうすぐ終わる」
 
 本当は美形に山芋をすらせるなんて、絵的には忍びないんですけどね。
 男女平等、差別反対。
 容赦はしませんよ、わたしは。

「──何をすればいいんだ?」
「あれよ、あれ。いつもの!」
「? あぁ、みきさーってやつか?」
「そうそう!」

 もはやミキサー要員と化した美形。
 ごめんね、色々と才能の無駄遣いさせて。
 でも食事って、とても大切なことだと思うの。
 というか、鍋からミキサーに移さなくていいの便利よね。
 原理は分かんないけど、鍋も傷付いてないし。

「どのくらい?」
「えっとね、スープみたいに飲む料理だから、なめらかになるまで。バジルの時みたいなのでお願い」
「任された」

 よし、あとはそれと牛乳とブイヨン入れて、味を調えて加熱するだけ……かな?

 ひとまず黄のポタージュ、準備おっけい!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

夫に離婚を切り出したら、物語の主人公の継母になりました

魚谷
恋愛
「ギュスターブ様、離婚しましょう!」 8歳の頃に、15歳の夫、伯爵のギュスターブの元に嫁いだ、侯爵家出身のフリーデ。 その結婚生活は悲惨なもの。一度も寝室を同じくしたことがなく、戦争狂と言われる夫は夫婦生活を持とうとせず、戦場を渡り歩いてばかり。 堪忍袋の緒が切れたフリーデはついに離婚を切り出すも、夫は金髪碧眼の美しい少年、ユーリを紹介する。 理解が追いつかず、卒倒するフリーデ。 その瞬間、自分が生きるこの世界が、前世大好きだった『凍月の刃』という物語の世界だということを思い出す。 紹介された少年は隠し子ではなく、物語の主人公。 夫のことはどうでもいいが、ユーリが歩むことになる茨の道を考えれば、見捨てることなんてできない。 フリーデはユーリが成人するまでは彼を育てるために婚姻を継続するが、成人したあかつきには離婚を認めるよう迫り、認めさせることに成功する。 ユーリの悲劇的な未来を、原作知識回避しつつ、離婚後の明るい未来のため、フリーデは邁進する。

処理中です...