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捕虜奪還
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突如現れた女魔導士メレス。
正面から戦いを挑んでも勝ち目のない、かなりの実力者であるのは間違いない。
マイカ姉ちゃんは目配せで合図をしてきた。
『奴が隙を見せたらそれが最初で最後のチャンスだ。全員で行くぞ!』
張り詰めた空気が場を覆う。
だが、女魔導士は落ち着き払った態度で隙を見せずマイカ姉ちゃんを見据える。
「そこの剣士マイカは私が通り過ぎたタイミングで私に斬りかかってくる。でもダメね。その前に私の防御結界が発動。ここにいる私以外の全員が消し炭なるわ」
「なんと!」
師匠は腰を抜かしそうなぐらいビックリしている。
「全て見透かされているのか。ここまでの実力とは……」
マイカ姉ちゃんは唇を噛み締め苦渋の表情を滲ませている。
当然僕もこのの女魔導士のヤバさがわかる。
手を出せばただでは済まないことを。
そして僕らでは戦いにならないことも……。
マイカ姉ちゃんの剣の柄を握る手が緩むと、女魔導士は表情を緩ませた。
「そうね。それが最善の選択肢よ。私にとってもあなたたちにとっても。私は無事に弟子を連れ帰れるし、あなたたちもケガ人を出すことはないわ」
マイカ姉ちゃんは剣から剣から手を下ろした代わりに女魔導士を睨みつけた。
「これだけの騒ぎを起こしてタダで済むとは思っていないよな?」
大賢者の屋敷に乗り込んできて大賢者を殺害しようとしたんだ。
国際問題に発展するレベルの侵略行為である。
もちろんマイカ姉ちゃんが言うように、タダで済むわけがない。
「もちろん金品での保証はしっかりとするつもりよ。弟子が軽率に起こした行為に対する慰謝料と弟子の命の代金としてね」
もちろん拒否権は無いといった感じで女魔導士はマイカ姉ちゃんを睨みつけた。
ここで拒否すればどちらかの命が尽きるまで決着をつけるという意思が見え隠れした。
そこに師匠が飛び込む。
「喧嘩はもうやめじゃ!」
師匠がとりなして、どうにか場の空気が緩んだ。
地面に転がったままのホレスの縄を解くメレス。
ホレスは必死に詫びた。
「師匠、お手を掛けまして申し訳ございませんでした」
「謝る相手を間違えていないかしら?」
ハッとした表情をしてホレスは僕たちに深く頭を下げた。
続いてメレスも頭を下げる。
「すいませんでした。うちの不肖の弟子が迷惑をおかけしました。弟子の起こした問題は師匠の責任。今回の騒ぎはヘクシアの大賢者メレス名に免じて許して貰いたい」
するとホレスがメレスの頭を必死に上げさせる。
「師匠! こんな庶民相手に頭を下げないで下さい!」
「あんた、全然反省してないじゃないの! このバカ息子!」
どうやら子弟は親子でもあるようだ。
メレスに顔の形が変わるぐらい杖でバッチバチに叩かれていた。
「すいません。このバカ息子の親友が行方知れずになってしまったようで……」
どうやら行方知れずになった息子の親友の行方を占ったメレス。
結果、僕つまりバーナリアの大賢者マーリンの弟子アーキが関わっていると予知されたそうだ。
そして、恐らくこの世にはいないことも……。
それを知ったホレスは復讐の為にアーキの元に乗り込んできたということだ。
メレスはアイテムバッグからお詫びの品を取り出した。
「師匠! それは師匠が大切にされているお守りじゃないですか! それを渡すのですか?」
「お前はそれだけの事を起こしたのよ」
「でも!」
「こんなものでお前の命が救えるのならば安いものよ」
「母上……」
七色に輝くそれは僕の見覚えのあるものだった。
「アーキさんなら、これがなにかご存じですよね?」
もちろん見たことがあるし、忘れられない。
「幸運の果実ですわ。これを食べれば幸運を身に宿すことの出来るとても貴重な果実です。どんな最悪な人生であれ、この果実を一欠けらでも口にすれば好転する神から遣わされた果実なのです」
僕は人生どん底の状況から立ち直ったきっかけがこの果実であることを初めて知った。
正面から戦いを挑んでも勝ち目のない、かなりの実力者であるのは間違いない。
マイカ姉ちゃんは目配せで合図をしてきた。
『奴が隙を見せたらそれが最初で最後のチャンスだ。全員で行くぞ!』
張り詰めた空気が場を覆う。
だが、女魔導士は落ち着き払った態度で隙を見せずマイカ姉ちゃんを見据える。
「そこの剣士マイカは私が通り過ぎたタイミングで私に斬りかかってくる。でもダメね。その前に私の防御結界が発動。ここにいる私以外の全員が消し炭なるわ」
「なんと!」
師匠は腰を抜かしそうなぐらいビックリしている。
「全て見透かされているのか。ここまでの実力とは……」
マイカ姉ちゃんは唇を噛み締め苦渋の表情を滲ませている。
当然僕もこのの女魔導士のヤバさがわかる。
手を出せばただでは済まないことを。
そして僕らでは戦いにならないことも……。
マイカ姉ちゃんの剣の柄を握る手が緩むと、女魔導士は表情を緩ませた。
「そうね。それが最善の選択肢よ。私にとってもあなたたちにとっても。私は無事に弟子を連れ帰れるし、あなたたちもケガ人を出すことはないわ」
マイカ姉ちゃんは剣から剣から手を下ろした代わりに女魔導士を睨みつけた。
「これだけの騒ぎを起こしてタダで済むとは思っていないよな?」
大賢者の屋敷に乗り込んできて大賢者を殺害しようとしたんだ。
国際問題に発展するレベルの侵略行為である。
もちろんマイカ姉ちゃんが言うように、タダで済むわけがない。
「もちろん金品での保証はしっかりとするつもりよ。弟子が軽率に起こした行為に対する慰謝料と弟子の命の代金としてね」
もちろん拒否権は無いといった感じで女魔導士はマイカ姉ちゃんを睨みつけた。
ここで拒否すればどちらかの命が尽きるまで決着をつけるという意思が見え隠れした。
そこに師匠が飛び込む。
「喧嘩はもうやめじゃ!」
師匠がとりなして、どうにか場の空気が緩んだ。
地面に転がったままのホレスの縄を解くメレス。
ホレスは必死に詫びた。
「師匠、お手を掛けまして申し訳ございませんでした」
「謝る相手を間違えていないかしら?」
ハッとした表情をしてホレスは僕たちに深く頭を下げた。
続いてメレスも頭を下げる。
「すいませんでした。うちの不肖の弟子が迷惑をおかけしました。弟子の起こした問題は師匠の責任。今回の騒ぎはヘクシアの大賢者メレス名に免じて許して貰いたい」
するとホレスがメレスの頭を必死に上げさせる。
「師匠! こんな庶民相手に頭を下げないで下さい!」
「あんた、全然反省してないじゃないの! このバカ息子!」
どうやら子弟は親子でもあるようだ。
メレスに顔の形が変わるぐらい杖でバッチバチに叩かれていた。
「すいません。このバカ息子の親友が行方知れずになってしまったようで……」
どうやら行方知れずになった息子の親友の行方を占ったメレス。
結果、僕つまりバーナリアの大賢者マーリンの弟子アーキが関わっていると予知されたそうだ。
そして、恐らくこの世にはいないことも……。
それを知ったホレスは復讐の為にアーキの元に乗り込んできたということだ。
メレスはアイテムバッグからお詫びの品を取り出した。
「師匠! それは師匠が大切にされているお守りじゃないですか! それを渡すのですか?」
「お前はそれだけの事を起こしたのよ」
「でも!」
「こんなものでお前の命が救えるのならば安いものよ」
「母上……」
七色に輝くそれは僕の見覚えのあるものだった。
「アーキさんなら、これがなにかご存じですよね?」
もちろん見たことがあるし、忘れられない。
「幸運の果実ですわ。これを食べれば幸運を身に宿すことの出来るとても貴重な果実です。どんな最悪な人生であれ、この果実を一欠けらでも口にすれば好転する神から遣わされた果実なのです」
僕は人生どん底の状況から立ち直ったきっかけがこの果実であることを初めて知った。
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