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健全黒字経営目指します!

おウチに帰ろう

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第32話 おウチに帰ろう



 うっかりため息を漏らしたら、レオさんは俺が師匠話に呆れてため息を漏らしたと思い、憐れみの目でマテウスさんをチラ見した。

「…お前、3、4回も暴走させたのかよ…。最低だな…。」

 あ、さっきのはため息違いですけど俺も実はそう思ってましたよ?マテウスさん忘れてないですよ?
 俺もさも同意顔で頷き、被害者をそっと生温かい目で見た。

「まあ、丈夫で何より。とりあえずソイツがくたばってねえならいいさ。流石に弟子殺しの始末なんて俺はやりたくねえからな。」

「お、埋めてもいいんだぜ?もうズッポリと!オメエのイカす土魔法でな!」

 ウキウキと剣聖師匠が土魔法を強請ねだる。
 マテウスさん、あの人しかるべき場所に訴えてもいいと思います。アナタ、師匠詐欺にあってるよ!

「なんで俺がお前の弟子埋めなきゃなんねえんだよ…。じゃあ俺らはもう戻るから、ちゃんとその弟子持って帰れよ。また街でな。」

 レオさんがじゃあなと手をあげ、俺の腰を抱いたままその場を離れる。が、やはりそこはクズ剣聖師匠、無駄に邪魔をする。

「なあなあコウちゃん、打ち上げしようぜ~。オレが高くて美味しいお酒飲ませてやるよぉ?」

 ガッチリと俺の肩を掴んだ。
 えっ、なんで俺?!?!あと何の打ち上げだよ?!

「おい、エイトールやめろ。…コウはこれから用があるんだ。あとお前の高くて美味うまい酒はジジイの回復酒だろ。コウはそんなの飲まん。」

「レオナルド、オメエは誘ってねえから!なあ~、コウちゃ~ん。オレと二人っきりしっぽりじっくり飲もうぜ~?ジジイのクソ不味まず酒じゃねえ甘くてお高い酒、特別に飲まして ア ゲ ル ♡」

 くっ、顎クイされた…!だが、その田舎のエロオヤジさながらの口説き文句、トキメキのトの字すら形成せんわ!!と言うか、お前らが口説く意味がわからん!!(レオさん含め)

「お断りします。」

 ビシッと言ってやったゼ!!!!
 不当要求には毅然とした態度で!
 これ前の会社の社是です!こちらでも役に立ちました!

「それでいい。」

 これにはレオさんもニッコリだ。

「師匠、次の機会にでも誘って下さい。」

 俺もニッコリする(社交辞令)。

「…また誤解させる言い方…!」

 何故かレオさんが片手を額に当てて頭が痛いポーズになっている。

「うは、ちょ、次あんの?次、完全に期待しちゃっていいヤツ?しかも師匠って!オレ、コウちゃんが弟子なら、手取り足取りケツの余すトコなく朝晩ずっとご指導しちゃうぜ?なんなら剣聖の弟子のお名前もあげちゃう!」

 俺の肩をポンポン叩き、やたらニヤニヤする剣聖師匠。やべ、うっかり師匠呼びしちゃった!

「す、すいません、うっかりマテウスさんの師匠呼びがうつってしまいまして…。」

 …ん?アレ?いま師匠、剣聖の弟子のお名前あげるとか言わなかった??それ、強くないとくれないヤツじゃないの??

「あー、エイトール、エイトール。コウはちょっと特殊な出で、少し、いやかなり色々とうといんだ。俺も守秘義務でこれ以上は言えんから、そろそろ勘弁してやってくれ。後でジジイの酒奢ってやるからさ。」

 レオさんがなんとか話の方向転換の舵をきる。

「ふうん、全然わかんね!…が、契約じゃ仕方ねえわ。ジジイの酒以外で手を打ってやんよぉ。コウちゃん、次ヨロシクな?いい宿取ってやっからじっくりしっぽり、な?」

「?!?!」

 さっと手を取られ、ブチュウっと派手に音を立てて甲にキスされた…。
 しかしレオさんがすぐ俺の手を取り返し、ばっちいものを落とすようにぱっぱっと払う。
 君ら、めっちゃ息の合うボケとツッコミじゃん…。いや、どっちも面倒だからやめていただきたいですがね…。

「…けがれるからヤメロ。じゃあまた街でな。」

「おう。しばらく定宿じょうやどにいっから、飲みに行く時にゃ声かけろよぉ。」

 今度こそ帰れるらしい…。よかった…。

 師匠に軽く別れのお辞儀をし、レオさんと帰路につく。何やら背後で起きろ下僕とかドコッとかわーっとか聞こえたが、振り返ると厄介そうだから何も聞こえない、あー、あー、あー、でそのまま立ち去った…。


 帰りはゆっくりと進む。
 さすがに俺もレオさんも疲れたのだ。

「レオさん、疲れましたね…。」

「ああ、そうだな…。まさか、熊狩りがこんな事になるなんてな…。」

 めっちゃ遠い目だ…。わかる…。

「色々ありましたね…。あ、そうだ。聞きそびれてしまったんですけど、師匠ってレオさんと同じマーシナリーなんですか?」

「師匠…、その呼び方やめとけ。アイツ調子に乗って絡んでくるぞ?」

「うっ…、やめときます…。」

 確かにあの陽キャチンピラハイブリッドみたいな絡みは無理だ…。接待でも一軒で一週間くらいの労力削ってくるタイプですもの…。師匠の前では師匠って言わないよう気をつけよ!

「エイトールは同じマーシナリーさ。あの剣聖ってのは二つ名だ。あのえげつない剣についたあだ名で、別に剣士団に所属してる訳じゃねえよ。と言うか、あのクズっぷりに剣士団のほうが土下座で入団をお断りするだろ。」

 わっかる~!剣士団って団がどんなのかちょっとわかんないけど、師匠の入団を全力土下座でお断りするのわかるわ~。

「…まあ、わかります。えっと、レオさんはエイトールさんと仲が良いみたいですけど、昔からのお知り合いなんですか?」

 一気にスンっとなるレオさん。あれ、なんか地雷踏んだかな…?

「…仲良くねえよ。アイツと俺はジジイの店の常連ってだけだ。まあ、常連ってだけなら昔からの知り合いで間違いねえけどな。」

 が地雷だった 笑。
 多分はたから見たら仲良しなんだろうな、この二人。なんだかじゃれ合う会社の同僚を見てる気分になる。山田と川田の山川対決、どっちの田が優秀かってさ…。なんか、ちょっと懐かしいよ…。(先週の話だけど)

「どうした?歩くのが辛くなってきたのか?」

 レオさんが心配そうに声をかけてきた。
 おっと、プチ感傷に浸ってしまった!

「あっ、大丈夫です!ちょっと前の仲間を思い出しただけなんで。…あ、この辺見覚えがある。そろそろ拠点に着きますね!」

「…無理すんなよ。」

 ちょっと困った顔をしたレオさんに何故か頭をポンポンされた…。くっ、その頭ポンポンの意味毎回わからねえ…!


 やっと拠点の洞窟に辿り着く。

「はー!着いたー!」

「やっとだなぁ。」

 洞窟の入口に積んだ岩をレオさんが片付けようとしたので、ちょっと待ってとお願いする。

「防犯の為、少し改造しちゃいますね。」

 そうそう、熊狩りより外観をカモフラするのが当初の目的だったヨ!
 バックパックからタブレットを取り出して、箱庭を起動する。相変わらずバッテリーはほとんど減ってない。不思議省エネ…。
 さ~て、カモフラはどんな感じがいいかな~?
 とりあえず入口の岩をストックに入れてしまう。

「なっ?!消えた?!」

 レオさんが驚いている。…え、あのエクスケイブとかの土魔法の方が凄いと思うが??

 まあ、気にしないで行こう!さ、リセット完了。スッキリ洞窟入口って感じになりましたよ。んで、カモフラだからこの入口感を消したい。
 …この横穴って感じが遠目でも目立つから、いっそ入口を上に開けるか??あー、でも中から外を見通せない階段式はいただけないのよなー。

「…あ、そうか!手前にダミー作るか!」


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