婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空

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第12話 2人だけの時間

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 落ち着いていた街中は、急激に賑やかになってしまいました。やはり、王太子であるレオルド様の人気は凄まじいです。

「すまない、ユリナ。やはり、僕もちゃんと変装をするべきだったよ」

「いえ、仕方ないですよ」

「ありがとう。やっぱり、君は優しいね」

 レオルド様はいつも私のことを褒めて下さるので、嬉しいけどとても気恥ずかしい気持ちになってしまいます。

「じゃあ、ちょっとこの人だかりを巻こうか」

「えっ?」

 レオルド様がパチンと指を鳴らすと、景色がぐるりと回るような感覚に襲われました。けど、それも一瞬のこと。すぐに元の視界に戻るのですが……辺りは一気に静けさを増していました。というよりも、先ほどとは違う場所に移動したようです。

「い、今の、レオルド様のお力ですか?」

「うん、これでも僕だって王族だからね。人の上に立つのだから、優れた能力がないと」

「レオルド様……素晴らしいです」

「ありがとう」

 その地位にあぐらをかいていても、悠々自適な生活を送れるだろうに、そんな風に意識を高めて努力をしているなんて……おまけにイケメンさんですから、あれだけの女性に騒がれるのも納得です。

「私、不安になってしまいました」

「えっ?」

「レオルド様はとてもおモテになりますから。私みたいな女よりも、他にもっと素晴らしい相手がいらっしゃるのかと……」

「ユリナ」

 私はそっと抱き締められます。

「レ、レオルド様……?」

「君のそういう奥ゆかしい所が好きだけど、君はいい加減にもっと自分の魅力に気付いた方が良い」

「そ、そんな、私なんて……」

「まあ、今すぐにとは言わないよ。それに僕としても、君が自信を持って今よりも魅力に溢れてしまうと、他の男に取られてしまわないか、心配になってしまうから」

「わ、私なんて……」

 そっと、唇に指先を置かれる。

「……あまり謙遜し過ぎると、次はキスで塞ぐよ?」

 私は目を丸くします。

「じゃあ、もう少ししたら、馬車の所に戻ろうか。結局、あまり買い物は出来なかったね」

「いえ……私、こういう何もしないで寄り添っているだけの時間も……好きです」

「ユリナ……君って、本当に可愛いね」

 髪をサラリとされ、頭を撫でられ、甘い微笑みを向けられて。

 私はもう、脳みそがとろけてしまいそうでした。
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