17 / 114
一章◆ぜひ常連さんに◆
17
しおりを挟む
静かな部屋に水が流れる音だけが響く。
緊張が限界に達した琴葉は、途切れ途切れになりつつも声を発した。
「えっと、、、もう大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
琴葉の言葉に雄大はようやく手を放し、ポケットからハンカチを取り出して琴葉の手を丁寧に拭いてあげる。
それだけで、琴葉の心臓は張り裂けんばかりだ。
「すみません、パンを取りに来られたんですよね。気付かなくて。」
「いや、こちらこそ閉店後にすみません。俺のせいで君の帰る時間が遅くなってしまう。」
申し訳なさそうに頭を下げる雄大に、琴葉は慌てて首を横に振る。
「ふふ、大丈夫です。閉店後もいつも次の日の仕込みとか準備とかしてますから。お仕事忙しかったですか?お電話したのがご迷惑だったらどうしようかと思っていました。」
「打合せが長引いてしまって…いや、それは言い訳だ。ただ単に忘れてしまって、すみません。」
雄大の正直な答えは、まったく彼を責めようという気が起きなく、むしろ好印象に映った。
「走って来られました?お電話してからずいぶん早かったですけど。お店の照明を消してしまっててすみませんでした。閉店後も照明を点けておくと、近所のおばあちゃんがまだ開いてると勘違いして入って来られるので。」
「近所のおばあちゃん?」
「はい。ありがたいことに、ご贔屓にしてもらっているんです。」
なるほど、時間は過ぎているがパンを取りに来るという客がいるのに照明が消えていたのはそういうことかと、雄大は納得した。
それどころか、ニコニコと穏やかに話す琴葉の姿に自然と引き込まれてしまう。
きっとそのおばあさんも、パンのみならず彼女の魅力に引き込まれているんだろうなと感じた。
緊張が限界に達した琴葉は、途切れ途切れになりつつも声を発した。
「えっと、、、もう大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
琴葉の言葉に雄大はようやく手を放し、ポケットからハンカチを取り出して琴葉の手を丁寧に拭いてあげる。
それだけで、琴葉の心臓は張り裂けんばかりだ。
「すみません、パンを取りに来られたんですよね。気付かなくて。」
「いや、こちらこそ閉店後にすみません。俺のせいで君の帰る時間が遅くなってしまう。」
申し訳なさそうに頭を下げる雄大に、琴葉は慌てて首を横に振る。
「ふふ、大丈夫です。閉店後もいつも次の日の仕込みとか準備とかしてますから。お仕事忙しかったですか?お電話したのがご迷惑だったらどうしようかと思っていました。」
「打合せが長引いてしまって…いや、それは言い訳だ。ただ単に忘れてしまって、すみません。」
雄大の正直な答えは、まったく彼を責めようという気が起きなく、むしろ好印象に映った。
「走って来られました?お電話してからずいぶん早かったですけど。お店の照明を消してしまっててすみませんでした。閉店後も照明を点けておくと、近所のおばあちゃんがまだ開いてると勘違いして入って来られるので。」
「近所のおばあちゃん?」
「はい。ありがたいことに、ご贔屓にしてもらっているんです。」
なるほど、時間は過ぎているがパンを取りに来るという客がいるのに照明が消えていたのはそういうことかと、雄大は納得した。
それどころか、ニコニコと穏やかに話す琴葉の姿に自然と引き込まれてしまう。
きっとそのおばあさんも、パンのみならず彼女の魅力に引き込まれているんだろうなと感じた。
51
あなたにおすすめの小説
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
氷雨と猫と君〖完結〗
カシューナッツ
恋愛
彼とは長年付き合っていた。もうすぐ薬指に指輪をはめると思っていたけれど、久しぶりに呼び出された寒い日、思いもしないことを言われ、季節外れの寒波の中、帰途につく。
清楚な執事長、常駐位置が“お嬢様の隣”に確定しました
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話・後日談12話⭐︎
清楚で完璧、屋敷の秩序そのもの——そんな執事長ユリウスの“常駐位置”が、なぜか私の隣に確定しました。
膝掛けは標準装備、角砂糖は二つ、そして「隣にいます」が口癖に。
さらに恐ろしいことに、私が小声で“要求”すると、清楚な笑顔で「承知しました」と甘く返事をしてくるのです。
社交は上品に、恋心は必死に隠したい。
なのに執事長は、恋を“業務改善”みたいに制度化して逃がしてくれない——!
むっつり令嬢の乙女心臓が限界を迎える、甘々コメディ恋愛譚。
清楚な顔の執事長が、あなたの心臓まで囲い込みにきます。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
耽溺愛ークールな准教授に拾われましたー
汐埼ゆたか
キャラ文芸
准教授の藤波怜(ふじなみ れい)が一人静かに暮らす一軒家。
そこに迷い猫のように住み着いた女の子。
名前はミネ。
どこから来たのか分からない彼女は、“女性”と呼ぶにはあどけなく、“少女”と呼ぶには美しい
ゆるりと始まった二人暮らし。
クールなのに優しい怜と天然で素直なミネ。
そんな二人の間に、目には見えない特別な何かが、静かに、穏やかに降り積もっていくのだった。
*****
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※他サイト掲載
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる