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一章◆ぜひ常連さんに◆
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改めてショーケースに並べられたパンを見ると、目移りしてしまうほど美味しそうなパンが何種類も並んでいた。
パンの名前と値段は手書きのPOPが置かれていて、手作り感満載だ。
雄大はショーケースに並べられたパンをぐるりと見渡すが、昨日杏奈にもらったパンがどれだかわからなかった。
ちゃんと見ずに口に入れたせいで、形すら曖昧だ。
でももう一度あれが食べたい。
そのために来たのだから。
「ちょっと名前がわからないんだけど、これくらいの大きさで、ほんのり甘くて…。」
持っている情報が少なすぎて説明が難しく、無駄にジェスチャーが大きくなってしまう。
「うーん、何でしょう?」
雄大の説明に琴葉は首を傾げた。
もう少しヒントがほしい。
「ラグビーボールみたいな形の…。」
しばらく雄大と一緒に悩んでいた琴葉だったが、自分の焼くパンの中でラグビーボール型のパンを思い出す。
「あ!シュガートップかもしれないです。表面にクープ、こういう切れ目が入っていてお砂糖っぽい甘い味がしましたか?」
琴葉の説明に、昨日食べたパンの全容がぼんやりと浮かんでくる。
表面に切れ目がしっかりと入っていたし、甘い味だったのでそれに間違いないだろう。
「そうそう、それ。それがほしいんだけど。」
「すみません、今売り切れちゃってて。次に焼きあがるのは夕方なんです。」
「夕方?何時ですか?」
「16時頃の予定です。」
「16時か…。」
今日の予定を手帳で確認すると、15時から打ち合わせが入っていた。
16時には終わるだろうかと考える雄大に、琴葉は申し訳無さそうに言う。
「せっかく足を運んでくださったのに、すみません。」
「いや、いいんだ。同僚にもらったのが美味しくてもう一度食べたいと思って来ただけなんだ。」
雄大の言葉に琴葉は目を見開いて、そして満面の笑みになって言った。
「そうなんですね!ありがとうございます!」
琴葉のぱあっと花が咲いたような嬉しそうな笑顔に、雄大は思わず息を飲んだ。
見とれてしまったとでも言おうか。
とにかく目を奪われた。
パンの名前と値段は手書きのPOPが置かれていて、手作り感満載だ。
雄大はショーケースに並べられたパンをぐるりと見渡すが、昨日杏奈にもらったパンがどれだかわからなかった。
ちゃんと見ずに口に入れたせいで、形すら曖昧だ。
でももう一度あれが食べたい。
そのために来たのだから。
「ちょっと名前がわからないんだけど、これくらいの大きさで、ほんのり甘くて…。」
持っている情報が少なすぎて説明が難しく、無駄にジェスチャーが大きくなってしまう。
「うーん、何でしょう?」
雄大の説明に琴葉は首を傾げた。
もう少しヒントがほしい。
「ラグビーボールみたいな形の…。」
しばらく雄大と一緒に悩んでいた琴葉だったが、自分の焼くパンの中でラグビーボール型のパンを思い出す。
「あ!シュガートップかもしれないです。表面にクープ、こういう切れ目が入っていてお砂糖っぽい甘い味がしましたか?」
琴葉の説明に、昨日食べたパンの全容がぼんやりと浮かんでくる。
表面に切れ目がしっかりと入っていたし、甘い味だったのでそれに間違いないだろう。
「そうそう、それ。それがほしいんだけど。」
「すみません、今売り切れちゃってて。次に焼きあがるのは夕方なんです。」
「夕方?何時ですか?」
「16時頃の予定です。」
「16時か…。」
今日の予定を手帳で確認すると、15時から打ち合わせが入っていた。
16時には終わるだろうかと考える雄大に、琴葉は申し訳無さそうに言う。
「せっかく足を運んでくださったのに、すみません。」
「いや、いいんだ。同僚にもらったのが美味しくてもう一度食べたいと思って来ただけなんだ。」
雄大の言葉に琴葉は目を見開いて、そして満面の笑みになって言った。
「そうなんですね!ありがとうございます!」
琴葉のぱあっと花が咲いたような嬉しそうな笑顔に、雄大は思わず息を飲んだ。
見とれてしまったとでも言おうか。
とにかく目を奪われた。
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