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1.八重桜
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ワイシャツにノーネクタイという、他の社員と変わらない一見ラフな格好だけれど、背が高くモデルみたいにスラリとしたシルエットにはとてもよく似合っている。
すっと伸びた鼻筋に薄い唇、意志の強そうな目。
無愛想に見えて本当はとても社員想いで優しい方だって知ってる。それは私だけじゃなくて、社員みんなの周知の事実。
「おはよう」
社長の低くて落ち着いた声が耳に心地いい。
「おはようございます」
挨拶を返せばふっと目元を緩めてくれる。
とても些細なことなのに、それだけでなんだか嬉しい。
敦子さんなんて「今日も絶賛いい男ね」なんて呟いちゃってるし。
「社長、お花見しません?」
営業の田辺さんが声を上げた。
「お花見?」
「そうです、事務所裏の桜の木、もう満開ですよ」
「ああ、確かに」
社長は思い出すかのように頷く。
「じゃあ今日は終業後に有志で集まったらいいんじゃないかな? アルコールなしなら許可するけど……」
「それじゃダメなんですって」
田辺さんの言葉に他の社員はうんうんと相槌を打つ。
社長は不思議とばかりに首を傾げた。
と、同時に私と敦子さんがとんっと背中を押されて一歩前に出る。
「終業後だと敦子さんとやえちゃんが参加できないんですよ」
「えっ、あっ、田辺さん、別に私は――」
お構いなく、と言おうと思ったのに先に敦子さんに「そうなんですよぉ」と大きく頷かれてしまった。
すっと伸びた鼻筋に薄い唇、意志の強そうな目。
無愛想に見えて本当はとても社員想いで優しい方だって知ってる。それは私だけじゃなくて、社員みんなの周知の事実。
「おはよう」
社長の低くて落ち着いた声が耳に心地いい。
「おはようございます」
挨拶を返せばふっと目元を緩めてくれる。
とても些細なことなのに、それだけでなんだか嬉しい。
敦子さんなんて「今日も絶賛いい男ね」なんて呟いちゃってるし。
「社長、お花見しません?」
営業の田辺さんが声を上げた。
「お花見?」
「そうです、事務所裏の桜の木、もう満開ですよ」
「ああ、確かに」
社長は思い出すかのように頷く。
「じゃあ今日は終業後に有志で集まったらいいんじゃないかな? アルコールなしなら許可するけど……」
「それじゃダメなんですって」
田辺さんの言葉に他の社員はうんうんと相槌を打つ。
社長は不思議とばかりに首を傾げた。
と、同時に私と敦子さんがとんっと背中を押されて一歩前に出る。
「終業後だと敦子さんとやえちゃんが参加できないんですよ」
「えっ、あっ、田辺さん、別に私は――」
お構いなく、と言おうと思ったのに先に敦子さんに「そうなんですよぉ」と大きく頷かれてしまった。
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