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何ができるか ~失敗や後悔から『覚悟すること』を学んだ~

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 妹には、何も返せていないと思い、
 何かしてあげたいと考えた。

 ある役者のファンだと言っていたことを思い出す。
 サインを貰って、妹を喜ばせられないだろうか。
 つてになってくれそうな人が思い当たる。

 主役も務める人気俳優なので、
 かなり頼み辛いが、お願いする事にした。

 ほどなくして、サインが届いた。
 妻が受け取って、私に渡してくれた。

 袋の中には、サイン色紙が二枚入っていた。
 間に入ってくれた人の粋な計らいだった思う。
 要するに、私の分も書いてもらったのだ。

 母に、実家に戻るタイミングで、
 持って帰ってもらった。

 妹も喜んでくれただろうか。

 私の首は治療まで、
 まだ我慢の時期だった。

 寝ていて首が回ろうとする。
 横になっていても、首の回転につられて体がうつ伏せになったりする。
 苦しくて辛いのだが、笑えてくる。
 客観視すると、人間の脳や身体は不思議でたまらない。
 
 今、こんな風に書けているのは、
 注射が少しは効いているおかげだろう。

 あまり、自覚はなかったが、
 治療が始まる前は妻や母に言わせるとかなり荒れていたらしい。
 
 少し反省せねばならない。

 しかし、この病気が厄介なのは、
 まだまだ研究が進んでいない謎の多い病気だということだ。

 治療も対処療法しかないのだ……。

 それでも、気持ちまでどうにかならないように強い心を保ちたい。
 そして、お世話になった方や、
 心配してくれる人たちに報いるような人間でありたい。


※副題は「福山雅治」さん「生きてる生きてく」の歌詞の一部です。
 

 
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