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「神様」 ~やがて荒野に花は咲くだろう~

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 とりあえず、総合受付で状況を説明する。
「紹介状がないと5,000円余分に診察料がかかるがよいか?」とのことだった。

「そうですか。では、診察はけっこうです」とはいかない。
 5,000円の出費は痛いが、そんなことは言っていられないので、
 承諾して案内された場所へ向かう。

「神経科」の受付に到着すると、周囲は高齢者ばかりだ。
 首はもちろん、膝や肘などの神経痛に悩まされている患者だろう。

「ものわすれ外来」という大きなポスターも貼ってある。

 受付の女性に「あの……首が……首が右に勝手に回って困っています」と告げる。
 「首が勝手にですか……?」
 聞いている受付の女性は冴えない表情だ。
 言っている自分も、何かしっくりしない。

 しかし、症状を聞かれたのでそのまま話したに過ぎない。
 
 もう一度、私はゆっくり丁寧に説明する。
 すると「本日、首の先生がいらっしゃいます」と要領得たのか答えてくれた。

「ただし、忙しい先生なので、本日、診てもらえるかはわかりません」と釘を刺された。

 待合室には、付き添いを含めて、
 十人くらい人がいる。

 全員、高齢者なので、自然と席を譲る。
 止まっていれば、ただ右を向いている人だ。
 座りたいけれど、不調を抱えているようには傍目には見えない。
 座るわけにもいかない。

 三十分ほど待った頃、名前を呼ばれる。
 何とか見てもらえそうだ。

 今は不安よりも、一体この症状が何なのかということがわかる期待の方が大きい。
 妻を伴い、診察室に入ると、首の専門医という中年の男性医師が座っていた。

 私が診察室の椅子に座るか座らないうちに、医者は病名を言った。
 一瞬にして、解答をもらい、視界が開けた。
 目の前の医師が神様のように思えてくる。

※第5話副題
 Mr.children「ALIVE」の歌詞の一部です。

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