神様のひとさじ

いんげん

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滝デート

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 ラブは、ヘビと歩き出し、先ほどの土竜とキボコを思い出した。
 キボコのように、ヘビとくっ付いて歩きたくて、ヘビの腕をじっと見つめた。

(べったり くっついたら、絶対に怒って振り払われる気がする……)

 コレまでの、ヘビとの関わり方で、ラブも少しは学んだ。

(腕を組んでも嫌がられる気がする。手を繋ぐのも……無理っぽいよね)

 足が長く、リーチが違う為に、少し早歩きをし、ヘビを追いかけながら、観察し、口を尖らせながら必死に考えた。

「ねぇ、ヘビ」
「何だ」
「手出して」
 ヘビは、眉をしかめ、困惑しながらも、ラブが歩いている左手側の手を広げ差し出した。ヘビの長い指と大きな掌に、ラブは何故か胸が苦しくなった。

「えい」

 ラブは、歩く歩調に合わせて、パチパチとヘビの掌を叩いた。
 ヘビはいよいよ混乱し、首を何度も捻った。

「おい……コレは一体何なんだ……」
「え? 本当は手が繋ぎたいけど、ヘビが絶対に嫌だって言うから、一瞬で離してるの」
 トコトコ
 ぺちぺち
 すっ――
 おっとっと
 ヘビの手が引かれ、ラブの手が空振りし、ラブがよろけた。

「何で⁉」
「……お前の思考回路が理解出来なさすぎて、恐怖すら感じた」
「ラブが、頭良いってこと?」
「いや――もはや、分類が違う何かかもしれない」
「もー、よく分からないけど、じゃあヘビが選んで良いよ、手を繋ぐのと、腕を組むのどっちが良い?」
「……良いだろう」
 ヘビが、ラブを見てニヤリと笑った。

「え?」
 ラブは、期待に胸膨らませ、満面の笑顔を浮かべた。

「やれるものなら、肩を組め」
 煽るようなヘビの言葉に、ラブが「言ったなぁ」と飛びつくように腕を伸ばした。

「ちょっと、届かない! ずるい、背伸びして歩いちゃ駄目!」
「……」
「歩くの速い!」
 じゃれて飛びつく犬と、満更でもない飼い主のようだ。


 コロニーの埋まっている山は、膨大な地下水を有する。
 その水をくみ上げて、コロニーで利用している。
 くみ上げた水を一部、見えるように流している場所がある。幅四メートルほどのゲートから流れ出る水は、高さ六メートルほど落ちている。此処では、その人工の滝を上から眺める事が出来る。

「どどどー」
 ラブは、滝に向かって叫んだ。

「落ちるぞ」
 透明アクリル板の衝立に乗り出すラブの服を、ヘビが引いた。

「ラブ、きっと泳げるよ」
「昔、飛び込んで溺れた人間がいる」
「それは嫌」
 ブルブルと震えて、ラブが乗り出した頭を起こしたので、ヘビの手が離れた。

「このお水は何処へ行くの?」
「濾過した後、一度外気に触れている。飲食以外の場所に提供されている。ランドリーやトイレ、畑だな」
「へー、ヘビはこのお家の事、全部頭に入っているの?」
「ああ」
「凄いねぇ」
「逆に聞きたい。お前のその頭には、何が入っているんだ」
 ヘビは、滝を見下ろして、力の抜けた顔をし、大して興味も無さそうだ。

「ラブが覚えてるのは……何だろう。ラブの事を迎えに来る男さんと、愛し愛されて、助け合って生きるの。ラブは、たった一人の相手と一本の木になるの。二人は一つになって絡み合って、男は枝を伸ばして、女は新たな実を実らせます。実は、真っ赤なの。人の血が赤くするんだって」
 おいしい、おいしい実がなるの。ラブはお腹に手を当てた。

「……比喩表現なのに、逆に生々しいぞ」
「え? そうなの?」
 ラブは、大きく息を吸い込んだ。

「ここは、気持ちが良いね」
「……そうだな」
「水の匂い好き」
「あぁ、俺も好きだ」
 ヘビは、そっと目を閉じて、水の音や匂い、肌に触れる潤った空気を楽しんだ。

(変なの。触れてないのに、今までで一番側に居る気がする)

 ラブは、空腹が満たされていく気がした。
 この空気を壊したくなくて、流れ落ちる水を、静かに眺め続けた。



「楽しかったね。ラブ、凄く満足した。嬉しかった」
 居住区に戻る途中、ラブは黙っていた分、五月蠅いくらいにヘビに話しかけたが、ヘビは嫌な顔をしなかった。

「また一緒に行こうね」
「お前が、人並みの食事をするようになったらな」

 ヘビは、ラブの目を見て微笑んだ
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