離れる気なら言わないで。~運命に振り回される僕はいつ自由になれるのかな?~

望百千もち

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本編 1章

11.

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『アイちゃん~待ってよぉ~』

『ユウが遅いだけ!!ほらっ、早く!!』


雪の中を駆けてく。
僕とアイちゃんは白銀の世界に目をキラキラさせて飛び出した。冷たい感触。吐く息のぼんやりした白さ。


『・・・・・・アイちゃん・・・』

『来年。また来るよ!!』

『アイちゃん!!』

『泣かないの。・・・ユウは泣き虫だね』

『・・・っぜったい・・・?ぜったいっ!?』

『約束。絶対に、ユウのとこに一番に行くよ!』



あの約束は――。
・・・・・・果たさせることなんてなかった。



















野崎ノザキ 愛人アイト
それがユウトの想い人の名前。

・・・・・・最初から勝ち目なんてないことは分かってる。


「ユウト。口、クリームついてる」
「・・・ん。もう大丈夫?」
「反対」
「・・・取れた?」
「ん、大丈夫」
「ありがと。郁の試合見に行くのに口にクリームついてたら恥ずかしいもんね」
「・・・・・・だな」

それ見た人全員口もとのクリームを舐めたがるぞ?
そんなこと・・・・・・許さん。
ユウトは拭ったナプキンと使った紙皿や使い捨てフォークを冷蔵庫の横にあるゴミ箱に入れた。

「伽南。行こう?」

ユウトはそう言って俺に手を差し出す。
・・・ほんと無意識に誘うよな・・・・・・。

「あぁ」

俺が立ち上がるとパァっと顔を輝かせる。
これが可愛くて仕方ない。・・・なんて本人に言っても、軽くかわされるんだろうな・・・。

「ユウト」
「ん?」
「・・・・・・何でもない」
「?」


・・・・・・早く忘れちゃえよ・・・。


















試合会場に向かう。・・・悔しい・・・・・・。
知ってる。
ユウ先輩は誰か――想っている人がいる。
桐谷先輩が言っていた。

「くそッ!!」

ガンッ


準備室のゴミ箱を蹴る。金属の音。
・・・・・・痛い。


「分かってますよ・・・。俺じゃ、、、」


俺じゃ・・・・・・。
でも、好きになってしまったものは仕方ない。
あのほんわりした笑顔や何も知らない無垢さ・・・見ていて飽きない。飽き足りない。

「俺、、、絶対に貴方を手に入れます」

たとえ、どんなことをしても――。
そのためには先ずこの試合に勝って、ユウ先輩にいいとこを見てもらわないといけない。



























休憩室を出て利用カードを書いた。
時計を見るとあと5分。時間が経つのは早い。

伽南の手をとって走る。
あ、廊下で走っちゃだめだった。

「ユウト。そんな走んなって」
「・・・足長い伽南は良いよね!!」

伽南は走ってない。・・・早歩きしてる。
僕は頬を膨らませた。

「こら」
「ぷしゅ・・・」
「キスすんぞ」
「ふぁ!?」

僕の頬のつんつんしてくる伽南。つい足が止まる。
思わず空気が漏れて、ぷしゅうと僕の頬はへこんだ。そこに伽南は僕の両頬をいーって引っ張った。

「ふぁにふんほ!!」
「・・・・・・ふはははっ!!やっぱユウト可愛いよ!!」
「ふゅ?」
「ごめんごめん。でも、ほら。よく見ろ。会場はそこ」
「あ」
「ふは、やっぱり気づいてなかったんだな」
「・・・・・・ふんっ」

僕は恥ずかしさで外方向いた。

会場に入ると伽南についていく。
そして一番前の席に座った。

「イクはどんな攻め方してくっかな?俺んときは攻防戦だったからな・・・相手は――田中一郎・・・・・・田中の長男か」
「田中君?」
「あぁ、確かユウトの相手が三男だったな・・・。田中の三つ子は単体なら攻略は簡単だし」
「三つ子なんだ・・・」
「そう。あの三つ子は三人一緒なら俺でも危ねー」
「そうなの!?」
「あぁ、あの三つ子相手するならイクの方がまだいい。いや、断然イクが三人いたとしてもイクの方がまだいい」

郁が三人・・・・・・。
そう考えただけでゾッとする。

「ま、単体だし」
「そっか」
「お、来たな」

伽南の声で場内を見ると郁と対戦相手の田中一郎君が青緑の転移陣で転送されてきた。
装備は・・・・・・え、、?

「へー・・・・・・」
「・・・・・・カッコいい・・・・・・!!・・・けど、寒くないかな?」

郁の装備はノースリーブの銀の装飾のついた装備。
下は細身の黒のパンツ。

「・・・・・・カッコつけはお前だろ・・・」
「桐谷先輩ー。何か言いましたー?」
「郁!!頑張ってー!!」
「もちろんです!!」
「変り身早えー・・・・・・」


『Dブロック 第四試合
 大江 郁 VS 田中 一郎』

田中君・・・。
一郎君?は三郎君と違って薄手の着物を着てた。伽南よりもシンプルだからとっても動きやすそう。



『レディ・・・・・・・・・・・・ファイト!!』


・・・勝敗はすぐについた。

「≪展開≫」
「え、、、」

郁が自分の魔法を展開すると一瞬だった。
いつの間にか一郎君の後ろにいた郁。
そこで田中君が倒れて勝敗がついた。多分、手刀を田中君の首筋に叩き込んだんじゃないかな?

ほんとに一瞬で何をしたのか分からないほど・・・。






『WINNER 大江 郁』

「ありがとうございました」

郁は軽く頭を下げると僕を見て笑った。
・・・・・・格好良すぎるよ!!

「・・・マジか・・・田中兄弟の俊足を上回るって・・・・・・」
「俊足?」
「あ、あぁ。『一に俊足、二に惑わし、三に頑丈、田中兄弟』って言われてる。で、一郎だから・・・あの速さは学園トップレベルだったはず・・・。・・・・・・アイツ、、何したんだ・・・」
「・・・あんな魔法みたことなかった」
「だよな・・・。≪瞬間移動≫だったらキーがないと発動出来ないだろうし、≪身体強化≫か≪俊足強化≫とか・・・」

・・・もしかしたら、郁の能力なのかもしれない。
だとしたらあの能力はランクAより上のはず・・・・・・。
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