親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

はちみつ電車

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呂久村深月の反省

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んふふ~、と明翔が笑いながら腕に絡みついて来る。歩きにく……。

家に入ると、明翔は両手を広げてひざをつき跳びかかってきた2匹の猫を抱きかかえる。

「アニマルトレーナー絶好調な」
「へへっ」
「何がそんな嬉しいんだよ」

呆れるほどに嬉しそう。
お前の彼氏、そんな喜べるヤツでもねえのに。

「俺の彼氏、モテるのに俺のことしか考えてねえの」
「やめい」

明翔の頭にチョップを下ろす。

……ゆりも、明翔も、ちゃんと自分の気持ちを伝えてくれる。
俺だけが、保身に走ってる。

「……重かったら言ってな」
「何が?」
「俺が」
「俺よりは重いよね。俺よりだいぶ背ぇ高いし」
「重量じゃねえんだわ」

重い気持ちにはパッション乗せたら余計に重くなる。
けど、今、できるだけ軽くでも伝えたいと思う。

「うちの両親、だいぶ偏ってっから、ちょうどいいくらいが分かんねえんだよ」
「ちょうど?」
「うん……ぶっちゃけ、適度な愛情表現が分からん」
「適度って何。出し惜しみしないで愛情全部見せてよ」

気安く笑ってんなあ。
俺の愛情なめてんじゃねーぞ。

「全部見せたら激重よ。引くわ逃げるわ大変よ。俺的に」
「何言ってんだか分かんねえ。主語誰」

あははは! って爆笑ですけども。

「まじで……明翔の迷惑にならないさじ加減ができねえの」
「迷惑? なんで」
「……俺の母親の話したじゃん」
「不倫がバレた翌日に離婚したマミーね」
「そこだけ聞いたら超サバサバ系に聞こえるだろうけど、実際は全然違くて」

都合のいいように、はしょって明翔に話した。

「俺もたぶん、母親と同じで愛情が重い。他に癒しが必要になるくらい」
「俺の方が重いと思うよ。やっぱ深月は俺がどんだけ深月を好きか分かってねえ」
「いや、常人とケタが違うんだって」
「なら俺、異常でいいや」

そうやって言えるのは、きっと常識の範囲内だから。
本当に異常だと、異常だって自覚してると、隠したくなる。引かれたくない。

「俺は好きを押し付けたくない。押し付けられた方は、抱えきれなくなっちゃうんだよ。それで他に救いを求めたら浮気だ不倫だ言われて悪者になる」
「深月のパパ?」
「うん。俺は母親みたいに全部をぶつけるのも、父親みたいに適当に相手に合わせるのもしたくない。でも、あの両親の子供だから、きっと母親みたいにも父親みたいにもなっちゃう。それが嫌なの」

リビングのソファの前に三角座りでひざを抱えると、デレがまとわりついてくる。
デレはかわいい。俺には一切懐かず明翔ばっかりベッタリなツンと違って。

「ふふっ」
「何がおかしい。いや、おかしいよな」
「散々、俺は俺、優は優だって言ってたのに。深月は深月でしょ。ママみたいにもパパみたいにもならないよ。深月は深月でしかない」

あ……双子の姉妹から生まれた、同じような顔の同級生のいとこ同士。
俺は二人に何度も繰り返した。

「深月の愛情、いくらでも押し付けてよ。俺が全部倍返ししてやるから」
「……引かない?」
「引かない」

明翔なら、どんなに重い愛情でも喜んで受け入れてくれそうな気もする。
いいのかな。隠さなくても。

明翔は、俺から逃げないって信じていいんかな。

「深月のパパもさ、引いてないかもしんないじゃん」
「いや、マジで異常なの。俺の母親」
「適当に合わせてるんじゃなくって、普通に本音かもよ」

親戚付き合いもままならん執着されて、心から愛してる言えるヤツいるか?

「実の息子がそう言うからにはかなりなんだろうけど、だから今は一時的に距離置いてるだけで、落ち着いたらヨリ戻したりして」

……そしたら、また3人で暮らす日が来るんだろうか。
母親と、中里さんと、俺と。


メシ食って洗い物して、一足先にソファに座っていた明翔のひざにツンとデレが横たわっている。

……俺の。

ツンとデレごと、明翔の肩を両手で抱いて体重を預ける。

「ドデカイ猫」
「笑うな」

明翔がすべてを見透かすかのように俺の頭をなでる。

「罪悪感パねえすね」

見透かしてたな。マジでか。

これまでの元カノみんなに謝罪したい。
誠意とか好意とか何もなしに付き合ってきた俺をぶん殴ってほしい。

「深月はフリ方えぐいからなー」
「見たような言い方すんな」
「見たよ」
「は?!」

明翔は爽やかに笑っている。

「ちょうど1年前くらいに、泣きじゃくってる女子と黒岩くんくらいの大きさの男子と深月が修羅場ってるの見た」
「……ああ。あー! 見てたんかい!!」
「俺は深月は悪くないと思うよ。あの時も、浮気した彼女が悪いじゃんって思ってた」

マジでガッツリ見られとるな……。

「あれは……浮気3人目だったんだよ。けどまあ、どうでもよかったから知らん顔して泳がせてたのに浮気相手の方が本気になって、とつって来てなんやかんや」
「3人目?!」

「本気で好きなのは本当に深月だけ」って言われた時、心底ガッカリした。
お前どんだけ軽いんだよ、と。

同時に自分にもガッカリした。
もしも本当に俺を好きなら、俺はそんなに満足させられてねえんだって。
人を好きになれない自分に一番失望した。

「今さあ、深月が罪悪感すげくてめっちゃ反省してるでしょ。でさあ、余計に俺のこと大事にしようって思うでしょ。俺めっちゃいいとこ取り」

明翔はほんとポジティブな。
俺の最低なとこも明翔にかかればいいとこ取りか。

「深月、俺のことは全然泳がせないよね。俺めっちゃ愛されてんね」

それでニコニコ笑ってんのか。
話題と顔が合ってないと思った。

「やっと分かったか」

明翔の口に唇を押し当てると、デレはゆっくりとさりげなくひざを下り明翔にのしかかる俺の背中に移動する。
一方、ツンはここが俺の居場所だとばかりに微動だにしない。

やっぱり、ツンはかわいくない。
空気を読まない猫だ。
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