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誕生日プレゼント
婚約発表
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食堂にて、なっちゃんが芸能人の結婚会見かのように左手を見せた。
その薬指には、緩やかな流線型に並んだ小さな石が輝くリング……?
「わたくし厚木夏菜は、遠藤智樹さんと婚約いたしました」
「ええええええええええ」
「この度新しい命を授かり」
「ええええええええええ」
「彼に婿養子に入ってもらうので苗字は変わりませんが」
「ええええええええええ」
「産休育休後も変わらずご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「ぎゃああああああああ」
まじでか?!
なっちゃん?!
私だけでなく、朝倉さんと河合さんもキャラにない奇声を上げる。
今私たち3人の一体感は野外ライブ級。ここ会社3階の食堂だけど。
「赤ちゃん……いるの? おなかに?」
「はい。まだ2ヵ月なんで産休の手続きするには早すぎるらしいんですけど、みんなには先にご報告いたしたくて」
語尾にハート付いてそうな言い方。
「展開早っや。避妊はしなさい」
「ごめんなさい、つい。だってムード壊したくないんだもん」
「元は男友達だから言いたいこと言えて楽なんじゃなかったの」
「それとこれは別だよ。友達の時はそんなムードになることないじゃないですか」
「なるほど」
妙に納得してしまった。
「でも、望まない妊娠じゃないんで。子供3人は欲しいねって話してたし」
「同級生だったら相手もハタチでしょ? 彼、なっちゃんと子供養えるの?」
「婿養子に入って同居するなら親が面倒見てくれるって」
「ええええええええええ」
一番ビックリしたかもしれない。
新婚スタートから相手の親と同居って、彼はそれでいいのだろうか。
「だって、私料理できないし掃除もママ任せだし早起きできないからお見送りもできないだろうし、私と二人で暮らすより同居の方がいいと思う」
「できるようになろうとは思わないんだ」
ニコッと笑顔でなっちゃんがうなずく。いっそ潔し。
「朝倉さんは料理で年下男子の胃袋掴むところからがスタートですもんね」
「むしろ料理振舞えばゴールね。100落ちる」
「100! 何作るの?」
「チョロいところもかわいいの。10代には肉じゃがよりカレーとかオムライスだね」
「なんかカワイイ~」
「彼氏ちゃんにはお弁当作ったら感動された」
「20代は?! 大人には何を作れば100落ちますか?!」
「専門外」
河合さんがションボリしてしまう。
年下男子専門家朝倉さんは優雅にお茶を飲みなさる。
「大学生もカレーとかオムライス喜びますかね」
「魁十くんの好き嫌いなんて一番把握してるんじゃないの?」
「してるけど、誕生日だから特別感ほしいかなって思ったら何作ったらいいのか」
「料理は愛情よ、遠山さん。卵かけごはんがいいんじゃないかな」
「そうだね。ケガするとしても卵の殻で指を刺す程度で済むし」
「せっかくの誕生日に流血騒ぎは萎えますもんね」
卵かけごはんは料理じゃない!
絶対みんなふざけてる……。
「盛り上がってるね。何の話?」
「難波さん! 誕生日に手料理作ってもらうなら何がいいですか?!」
なんちゅータイミングで現れるかな。
結構年上だけど、この際しょうがない、魁十と同じ20代の大輝くん浜崎さんの意見も聞いておくか。
「大輝、誕生日にコース料理作ってもらったことあったよな。インパクトあったから覚えてるわ。最後にデザートはわ・た・し、つって」
「あれは嬉しかった。感動した。22歳の誕生日だったかな」
クズの大輝くんでも感動?!
しかも、22歳の誕生日、おまけにスムーズに私という誕プレをあげる流れまで作れる!
「コース料理しかない!」
「やめときなよー。キッチンがぐちゃぐちゃになる未来しか見えないよ」
「料理は愛情でしょ? 愛情があれば、料理は生まれる!」
「作らなきゃ生まれないって」
ただ、コース料理を準備するには時間がない!
午後から私は、仕事そっちのけで必死にレシピ検索をし、買い物メモを作成した。
その薬指には、緩やかな流線型に並んだ小さな石が輝くリング……?
「わたくし厚木夏菜は、遠藤智樹さんと婚約いたしました」
「ええええええええええ」
「この度新しい命を授かり」
「ええええええええええ」
「彼に婿養子に入ってもらうので苗字は変わりませんが」
「ええええええええええ」
「産休育休後も変わらずご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「ぎゃああああああああ」
まじでか?!
なっちゃん?!
私だけでなく、朝倉さんと河合さんもキャラにない奇声を上げる。
今私たち3人の一体感は野外ライブ級。ここ会社3階の食堂だけど。
「赤ちゃん……いるの? おなかに?」
「はい。まだ2ヵ月なんで産休の手続きするには早すぎるらしいんですけど、みんなには先にご報告いたしたくて」
語尾にハート付いてそうな言い方。
「展開早っや。避妊はしなさい」
「ごめんなさい、つい。だってムード壊したくないんだもん」
「元は男友達だから言いたいこと言えて楽なんじゃなかったの」
「それとこれは別だよ。友達の時はそんなムードになることないじゃないですか」
「なるほど」
妙に納得してしまった。
「でも、望まない妊娠じゃないんで。子供3人は欲しいねって話してたし」
「同級生だったら相手もハタチでしょ? 彼、なっちゃんと子供養えるの?」
「婿養子に入って同居するなら親が面倒見てくれるって」
「ええええええええええ」
一番ビックリしたかもしれない。
新婚スタートから相手の親と同居って、彼はそれでいいのだろうか。
「だって、私料理できないし掃除もママ任せだし早起きできないからお見送りもできないだろうし、私と二人で暮らすより同居の方がいいと思う」
「できるようになろうとは思わないんだ」
ニコッと笑顔でなっちゃんがうなずく。いっそ潔し。
「朝倉さんは料理で年下男子の胃袋掴むところからがスタートですもんね」
「むしろ料理振舞えばゴールね。100落ちる」
「100! 何作るの?」
「チョロいところもかわいいの。10代には肉じゃがよりカレーとかオムライスだね」
「なんかカワイイ~」
「彼氏ちゃんにはお弁当作ったら感動された」
「20代は?! 大人には何を作れば100落ちますか?!」
「専門外」
河合さんがションボリしてしまう。
年下男子専門家朝倉さんは優雅にお茶を飲みなさる。
「大学生もカレーとかオムライス喜びますかね」
「魁十くんの好き嫌いなんて一番把握してるんじゃないの?」
「してるけど、誕生日だから特別感ほしいかなって思ったら何作ったらいいのか」
「料理は愛情よ、遠山さん。卵かけごはんがいいんじゃないかな」
「そうだね。ケガするとしても卵の殻で指を刺す程度で済むし」
「せっかくの誕生日に流血騒ぎは萎えますもんね」
卵かけごはんは料理じゃない!
絶対みんなふざけてる……。
「盛り上がってるね。何の話?」
「難波さん! 誕生日に手料理作ってもらうなら何がいいですか?!」
なんちゅータイミングで現れるかな。
結構年上だけど、この際しょうがない、魁十と同じ20代の大輝くん浜崎さんの意見も聞いておくか。
「大輝、誕生日にコース料理作ってもらったことあったよな。インパクトあったから覚えてるわ。最後にデザートはわ・た・し、つって」
「あれは嬉しかった。感動した。22歳の誕生日だったかな」
クズの大輝くんでも感動?!
しかも、22歳の誕生日、おまけにスムーズに私という誕プレをあげる流れまで作れる!
「コース料理しかない!」
「やめときなよー。キッチンがぐちゃぐちゃになる未来しか見えないよ」
「料理は愛情でしょ? 愛情があれば、料理は生まれる!」
「作らなきゃ生まれないって」
ただ、コース料理を準備するには時間がない!
午後から私は、仕事そっちのけで必死にレシピ検索をし、買い物メモを作成した。
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