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 よかった、怪我はないようだ――晴幸は胸をなでおろした。
 次の瞬間、助之進に人影が飛びかかる。ただし、心配はいらない。
「志乃」とまだ我に返りきれていないようすで助之進が相手を呼んだ。
「よかった、よかった、無事で」
 泣き顔でよろこぶその様を見て、晴幸の口元がゆるむ。
 心からお似合いのふたりだと以前から思っていた。心底、応援している。
 それだけに、
 先生も、もそっと人の心の機微に通じておられれば――。
 ふたりに降ってわいた災難、志乃の縁談話のことを思い出し晴幸はそう思わずにはいられなかった。
 師の太平次は当世一といっても過言でもない剣の使い手で気持ちのいい性根の持ち主だが、大きな欠点がある。どうにも人の心のうちを読むのを不得手としているのだ。ために、とある家中からの剣術指南の話を不意にしてしまったと聞いている。
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