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一歩間違えれば命を落とす。また、そうでなくとも敵の一撃を受ければ不具となることはおおいにあり得た。
 竹刀をもちいる流儀も多いがここの道場は事情を異にする。普段通りでいいかと相手に求めたところ、二つ返事で承諾した。増上漫であれば問題はないが、自信に見合う業前を持っていれば助之進の勝利は危うい。
 だが、夜の闇が景色の輪郭を失わせるように、諸々の事柄が脳裏から消えていく。
 集中が“勝つ”という眼目以外を意識から排除しているのだ。周囲の音がまったく聞こえなくなる。
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