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平太と平次郎のやり取りに興味を惹かれながらも、吉兵衛は冷静に周囲に目を配っていた。
忍びが何の策もなしに身をさらすとは思えなかったからだ。
揺さぶりをかける、内紛を誘うのもまた策戦だろうが、それ以外にもなにかあると直感した。
刹那、頭上に気配を感じる。死角だ。上からの攻撃がどこに向けられ、どこまで届くか把握するのは困難を極める。銀光一閃、自分の体の閃を隠すように大刀を抜き打ちでふるう。
返ってきた手ごたえは、複数の槌で刀身を叩かれたようなものだ。とたん、耳障りな音を立てて刀身に罅が入る。
こたびの旅は大刀を折ってばかりだ――吉兵衛は歯噛みしながら、それでも得物を操り敵の一撃を受け流した。同時に刃が折れ飛んだ。お陰で受け流しからの三の太刀は叶わない。敵を距離を置き脇差を抜き放った。
が、敵がふたりだけではないことを視界の入れ替わった吉兵衛は思い知ることになる。
行く手、山頂のほうから十人以上からなるやくざ者たちが駆け下りてくるのが視野に映ったのだ。坂を駆け下りての突撃は油断のならないものがある、慄然となりながら吉兵衛は死角から襲ってきた忍び、やくざ者双方にそなえる。
突進してきた無宿を、又一郎は電光の速度の刺突で迎えた。後ろ足を踏み込むことで動き、相手にこちらの挙動の起こりを悟らせない。
目を見開いて体勢を崩す無宿、その足もとを一瞬裡で薙いだ。
忍びが何の策もなしに身をさらすとは思えなかったからだ。
揺さぶりをかける、内紛を誘うのもまた策戦だろうが、それ以外にもなにかあると直感した。
刹那、頭上に気配を感じる。死角だ。上からの攻撃がどこに向けられ、どこまで届くか把握するのは困難を極める。銀光一閃、自分の体の閃を隠すように大刀を抜き打ちでふるう。
返ってきた手ごたえは、複数の槌で刀身を叩かれたようなものだ。とたん、耳障りな音を立てて刀身に罅が入る。
こたびの旅は大刀を折ってばかりだ――吉兵衛は歯噛みしながら、それでも得物を操り敵の一撃を受け流した。同時に刃が折れ飛んだ。お陰で受け流しからの三の太刀は叶わない。敵を距離を置き脇差を抜き放った。
が、敵がふたりだけではないことを視界の入れ替わった吉兵衛は思い知ることになる。
行く手、山頂のほうから十人以上からなるやくざ者たちが駆け下りてくるのが視野に映ったのだ。坂を駆け下りての突撃は油断のならないものがある、慄然となりながら吉兵衛は死角から襲ってきた忍び、やくざ者双方にそなえる。
突進してきた無宿を、又一郎は電光の速度の刺突で迎えた。後ろ足を踏み込むことで動き、相手にこちらの挙動の起こりを悟らせない。
目を見開いて体勢を崩す無宿、その足もとを一瞬裡で薙いだ。
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