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それより、自分が祖母の死に安堵をおぼえたことのほうがこたえた。
情で側にいるのではないとわかっていたが、それでもやはりはっきりとそれを確認してしまうと、いったい自分はどれほど父と違うのかと思ってしまう。
けども、と心のうちでつぶやきながら平太は祖母の側らにひざをついてその死に顔を見つめた。
とても安らかな表情には見えない。地獄の亡者もかくやという顔つきだ。
正しく生きねば罰が当たる、と孫に言い聞かせていた祖母だったが、
それが最期はこの様(ざま)か――。
平太の正直な感想がこれだった。
猪には教えられた気がする。人の定めた“正しさ”など所詮はこの程度だと。
百姓の習いなど無視して水呑み百姓の暮らしなど捨てて江戸にでも出ていれば祖母はこんなふうに死なずに済んだろう。なんだか肩をそびやかしたい気分だ。そんなことをすれば寄ってたかって非難されるのは目に見えているから我慢するが。
そこに、
「平太、婆さまを殺(や)った猪を捕まえたぞ」
という声が外から聞こえてきた。
情で側にいるのではないとわかっていたが、それでもやはりはっきりとそれを確認してしまうと、いったい自分はどれほど父と違うのかと思ってしまう。
けども、と心のうちでつぶやきながら平太は祖母の側らにひざをついてその死に顔を見つめた。
とても安らかな表情には見えない。地獄の亡者もかくやという顔つきだ。
正しく生きねば罰が当たる、と孫に言い聞かせていた祖母だったが、
それが最期はこの様(ざま)か――。
平太の正直な感想がこれだった。
猪には教えられた気がする。人の定めた“正しさ”など所詮はこの程度だと。
百姓の習いなど無視して水呑み百姓の暮らしなど捨てて江戸にでも出ていれば祖母はこんなふうに死なずに済んだろう。なんだか肩をそびやかしたい気分だ。そんなことをすれば寄ってたかって非難されるのは目に見えているから我慢するが。
そこに、
「平太、婆さまを殺(や)った猪を捕まえたぞ」
という声が外から聞こえてきた。
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