直刀の誓い――戦国唐人軍記(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)

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「この戦国の世では、親が子を、子が親を討つことも珍しくはない。結句のところ、おぬしたちがそうしてまで――師を斃(たお)してでも得たいものがあるか、その覚悟があるかということだ」
　三蔵たちが言葉を失っている間にも、円久尼はまなじりを決して言葉をつづける。
「おぬしたちは何故、わざわざ海を渡ってきたのだ？　その思いは、その程度で揺らぐものなのか？」
　円久尼は真っ直ぐに、宰領である三蔵の眼を視線で射抜いた。
「……さにあらず」
　彼女は力を込めてこたえる。
「よかろう」とその言葉に円久尼は満足げにうなずいた。
「女人(にょにん)の身で兵法の上手であり、勇猛さも持ち合わせているそなたのこと妾(わらわ)は気に入っている。これからも、よくつかえてくれ」
　云うや、彼女は寝ている三蔵の上におおいかぶさり抱きしめる。そして、すぐに身体を離し、
「養生するがいい」
　と云い残して去っていった。
　――他方、残された三蔵は身体が燃えているように熱くて、息苦しさを感じている。
（俺は……）
　三蔵は姿を消した円久尼のことを求め、戸外に眼を向けた。

　そんな彼女を、眼を丸くしている仲間のなかでひとりだけ冷静な悟浄は、苦々しい顔で見つめている――