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「三蔵、はい!」
紅孩児の声が間近であがる。
眼を開けると、彼が手の届く距離に立ってこちらに飴を差し出していた。
三蔵が「これは?」と眼で問うと、「三蔵の分!」と彼は声を弾ませる。
とたん、身体を包んでいた昏(くら)い感覚は、光に闇がかき消されるようにして消えた。
「ありがとう、紅孩児」
三蔵はほほ笑んで飴を受け取る。
「うん、甘い」と口に含んで感想をのべた。
ししし、と紅孩児ははにかんで笑う。
「おっ、美味そうだな、俺にもくれよ」
横から悟空の手からのびてくる――が、紅孩児はさっと彼から飴の山を遠ざけた。
「悟空にはやんないよぉ!」
小憎たらしい口調でそんなせりふを吐く。
「――の野郎、なんでだよ!?」
「歳下との立ち合いで本気になる奴になんて、あげないもんね~」
不機嫌な顔をする悟空に、紅孩児は意地の悪い笑みを向けた。
「この野郎~、寄越しやがれ!」「嫌(や)だっ」
悟空が飴を奪おうと飛びかかるば、紅孩児はちょこまかと巧みに避ける。それで、ますます前者は熱くなり、それに比例して後者も面白がって調子に乗った。
――それから、三蔵たちは買い食いをしながら市場町をみてまわる。
異国(とつくに)の品はどれも物珍しく、なんということのない日常品でさえ彼らの眼を楽しませた。
さらに彼らを喜ばせたのは、市場町の一角を訪れていた大道芸人たちだ。
紅孩児の声が間近であがる。
眼を開けると、彼が手の届く距離に立ってこちらに飴を差し出していた。
三蔵が「これは?」と眼で問うと、「三蔵の分!」と彼は声を弾ませる。
とたん、身体を包んでいた昏(くら)い感覚は、光に闇がかき消されるようにして消えた。
「ありがとう、紅孩児」
三蔵はほほ笑んで飴を受け取る。
「うん、甘い」と口に含んで感想をのべた。
ししし、と紅孩児ははにかんで笑う。
「おっ、美味そうだな、俺にもくれよ」
横から悟空の手からのびてくる――が、紅孩児はさっと彼から飴の山を遠ざけた。
「悟空にはやんないよぉ!」
小憎たらしい口調でそんなせりふを吐く。
「――の野郎、なんでだよ!?」
「歳下との立ち合いで本気になる奴になんて、あげないもんね~」
不機嫌な顔をする悟空に、紅孩児は意地の悪い笑みを向けた。
「この野郎~、寄越しやがれ!」「嫌(や)だっ」
悟空が飴を奪おうと飛びかかるば、紅孩児はちょこまかと巧みに避ける。それで、ますます前者は熱くなり、それに比例して後者も面白がって調子に乗った。
――それから、三蔵たちは買い食いをしながら市場町をみてまわる。
異国(とつくに)の品はどれも物珍しく、なんということのない日常品でさえ彼らの眼を楽しませた。
さらに彼らを喜ばせたのは、市場町の一角を訪れていた大道芸人たちだ。
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