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「けども、俺たちは正義漢とは程遠いぜ」
「それでも、力のふるいようによっては人のためになれる」
 助左衛門の皮肉に栄助は真剣な声でこたえた。
「正義か惡かじゃなく、何をするか、しないかなんじゃないかと思う」
 それが昨日感じたことだった。
「ご大層な口上並べてもまた逃げ出すんじゃないか」
「それは」
 完全に否定するのは難しかった。
 栄助が答えられないでいると、
「まあ、いいか」
 と助左衛門がひょうきんな顔をして肩をそびやかした。
「鉄砲が上手なやつが仲間にいる強みはお前を仲間にして嫌というほど味わった」
「じゃあ」
「ああ、猪助親分がよけりゃもう一度仲間に加えてやるさ」
 栄助の問いかけに助左衛門は笑ってうなずく。
「ついでに、女を犯した外道どもに天誅をくだしてやることにしよう」
「ああ」
 助左衛門の提案に、栄助は胸が熱くなるのを感じた。それで女子が味わった苦痛が消え去る訳ではないが、それでも仇討のようなものを自分のためにしたかったのだ。そうでないと、罪の意識に潰されてしまいそうだった。
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