陣借り狙撃やくざ無情譚(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 信濃国金沢の茶店に栄助たち陣借り無宿の姿はあった。追手を始末したために旅路はのんびりとしたものだ。
「ここらで改めて仲間を紹介しようか」
 ふいにお菊が明るい口調で告げる。
「助左はまあいいとして、まずは伊平治」
「ええ、紹介ってなんだよ」
 目を白黒させながら伊平治が慌てた。
「いいからさ」
 菊に強くうながされ、
「ええと、それじゃあ」
 と伊平治は咳払いをする。
「名は伊平治、仕事のための金子を賭けに注ぎ込んで抜け忍になることになった、元は忍びだ。手裏剣や火薬の扱いが得意だ」
 紹介を終えると、彼は神経質に手拭いで両手を拭った。
「それじゃあ、次は小次郎」
「それがし名は小次郎。浪人者にござる。素性は勘弁されよ。新陰流を少々遣う」
 歯を見せて笑いながら小次郎が告げる。
「次はお頭」
「陣借り無宿の頭、猪助だ。元は名主の子でな、田舎剣法を使う」
 猪助は錆びを含んだ声で言葉を紡いだ。
「それじゃあ、最後はあたし」
 と菊が手をあげる。
「元は武家の娘だけど、お家がお取り潰しに遭って無宿になったのよね。家老の敵だった用人暗殺の罪を父が着せられたの。それで、優しい親分に拾ってもらって今は生きていけてるって訳。短刀を使うのが得意よ」
 菊が明るい、というよりやけっぱちな口調で締めくくった。
 ははあ、と栄助は内心思わず感心している。それぞれに様々な由来があるものだ、と思ったのだ。
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