平安山岳冒険譚――平将門の死闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 一方で、将門らは、と見やると連中、小狡いことに殺して用をなさなくなった者の下手のほうへと駆けていくではないか。
 おのれ、と思い吉惟はみずからが動いて倒れた者たちのもとへ走り丸太を動かす。
 が、動きがずれているせいで先発の岩を避けるや、そちらの側に動いて後発を将門らは余裕綽々で躱した。
「者ども、こうなれば矢戦だ」
 宰領の怒声にこたえて、男たちは弓を用意する。
 が、その間に二の矢、三の矢が飛来して彼らの命を奪っていた。
 しかも、
 将門め、ひとりで我らを撫で斬りにする存念か――。
 彼はひとりでこちらへと突っ込んできていた。
「まさか、みなが殺(や)られはすまいと思うが」
 つぶやきながら宰領は傍らに近寄ってきた犬に、「行け」と命じた。
 下知を受けるや犬は山頂に向けて一目散に駆け出す。それを見届け、
「みな、弓の準備は済んだな。ならば」
 と告げようとした宰領の胸に軽い衝撃が走った。
 まさか、と思って見下ろすと矢が刺さっている。それを認めたとたん、喉をせりのぼって血潮が遡ってきた。

        ● ● ●

 富士の山をひとつの集団が登っていた。
 彼らは岩場にさしかかっている。こういう場所を通るときは全体をながめて道筋を確認する。とりついたあとも恐がってへばりつかず思い切って岩から体を離す。すると、姿勢が安定し次の一歩を楽に確認できる。
 そして、岩場では両手足をのうち動かすのは常にひとつにし、残りのみっつを安定の確保に使う。ただし、体を支えるのは筋力の強い足で手は均衡を保つのに専念させるのだ。
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