57 / 136
57
しおりを挟む
「だって、そうであろう。兵を憎む心持ちを胸に兵として生きてきたのだ。それが辛くないはずがない」
そこまで言われると将門としてもこっ恥ずかくなってくる。だから声を小さくして、
「ありがとう」
とこたえた。とたん、在信が目を丸くした。
「うお、小次郎が手前に礼をのべたぞ」
「うるさい、わざわざもうすな」
急に恥ずかしさが増して将門は声を荒げる。
「いやいや、これは捨て置けぬなあ。なあ、小次郎。もう一度、もうしてみてくれ」
調子に乗った在信がにやけた顔でこちらに近づいてきた。
電光石火、そこで将門は彼のみぞおちに拳を叩き込んだ。
「そ、そこまでせずとも」
恨み言を言いながら在信はその場にくずおれていく。
そこで将門はのふと目が合った。彼女の目は笑っていた。莫迦にされているようで気分が悪く将門はのふから目線をはずした。
三
闇夜の森の中を将門たちは進んでいた。先頭を行くのは足往だ。この犬は鼻から独特の音をさせて地面から二寸以内にまで鼻先を下げて匂いを嗅いでいる。何者かがいた、その痕跡を探しているのだ。
その後ろにのふが、次に将門、福丸、在信という順で中腰で進んでいた。
地面の隆起しているところがあるが、できるだけそこには立たずに脇を進む。事前にそうするようのふに指示されていた。ほかにも、足を高く上げ次につま先を下ろし小枝や木の葉などが音が立てないか確認してからかかとを地面につけるなどのことに留意していた。
そこまで言われると将門としてもこっ恥ずかくなってくる。だから声を小さくして、
「ありがとう」
とこたえた。とたん、在信が目を丸くした。
「うお、小次郎が手前に礼をのべたぞ」
「うるさい、わざわざもうすな」
急に恥ずかしさが増して将門は声を荒げる。
「いやいや、これは捨て置けぬなあ。なあ、小次郎。もう一度、もうしてみてくれ」
調子に乗った在信がにやけた顔でこちらに近づいてきた。
電光石火、そこで将門は彼のみぞおちに拳を叩き込んだ。
「そ、そこまでせずとも」
恨み言を言いながら在信はその場にくずおれていく。
そこで将門はのふと目が合った。彼女の目は笑っていた。莫迦にされているようで気分が悪く将門はのふから目線をはずした。
三
闇夜の森の中を将門たちは進んでいた。先頭を行くのは足往だ。この犬は鼻から独特の音をさせて地面から二寸以内にまで鼻先を下げて匂いを嗅いでいる。何者かがいた、その痕跡を探しているのだ。
その後ろにのふが、次に将門、福丸、在信という順で中腰で進んでいた。
地面の隆起しているところがあるが、できるだけそこには立たずに脇を進む。事前にそうするようのふに指示されていた。ほかにも、足を高く上げ次につま先を下ろし小枝や木の葉などが音が立てないか確認してからかかとを地面につけるなどのことに留意していた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
東へ征(ゆ)け ―神武東征記ー
長髄彦ファン
歴史・時代
日向の皇子・磐余彦(のちの神武天皇)は、出雲王の長髄彦からもらった弓矢を武器に人喰い熊の黒鬼を倒す。磐余彦は三人の兄と仲間とともに東の国ヤマトを目指して出航するが、上陸した河内で待ち構えていたのは、ヤマトの将軍となった長髄彦だった。激しい戦闘の末に長兄を喪い、熊野灘では嵐に遭遇して二人の兄も喪う。その後数々の苦難を乗り越え、ヤマト進撃を目前にした磐余彦は長髄彦と対面するが――。
『日本書紀』&『古事記』をベースにして日本の建国物語を紡ぎました。
※この作品はNOVEL DAYSとnoteでバージョン違いを公開しています。
ヴィクトリアンメイドは夕陽に素肌を晒す
矢木羽研
歴史・時代
カメラが普及し始めたヴィクトリア朝のイギリスにて。
はじめて写真のモデルになるメイドが、主人の言葉で次第に脱がされていき……
メイドと主の織りなす官能の世界です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
渡世人飛脚旅(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)
牛馬走
歴史・時代
(小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で)水呑百姓の平太は、体の不自由な祖母を養いながら、未来に希望を持てずに生きていた。平太は、賭場で無宿(浪人)を鮮やかに斃す。その折、親分に渡世人飛脚に誘われる。渡世人飛脚とは、あちこちを歩き回る渡世人を利用した闇の運送業のことを云う――
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる