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第四章

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「一馬の動きが怪しい。コレを読んでおいてくれ」

唐澤から封筒を渡された。開けてみると秋葉一馬、智則の身辺調査だった。10年近く前に作成された資料もあれば直近のも。
「…………」
唐澤はずっと秋葉智則を見ていたんだと実感する。βとしての幸せをあたえたくて、近寄りもせずに遠くから守ろう守ろうと努めてきていたのだ。
「まとめ直す気にもならなくて。ただ、智則は岡田に気を許しているから何かあった時に頼るだろうし……」
「お前も頼られているだろう」
まぁ、ヤツに懐かれてる自覚はある。そのせいでオス二匹の言われない攻撃を受ける被害にあっている。
「僕は駄目なんだよ。智則は本能的に僕を怖がるはずだ。考えたくはないが万が一があった場合、無条件で甘えられるのは岡田だろう…」
唐澤が拳を強く握った。爪が食い込んて血が出てる。
「…………」
ソレは万が一の事態に対してか、頼られない自分の不甲斐なさに対してか、もしくは両方への憤りか。
「お前の事だから一馬や智則の事は既に調べているんだろうけど、詳細が分かっているほうがいいからな」
「じゃあ、もらっとく。…………篠崎はどうするんだ」
「排除予定だ。智則にとっては良い友人だったから見逃してやっていたが、もう駄目だ。智則が寂しがろうと消去する」
「…………そうか。」
確かにヤツももう限界がきている。番を失うと壊れるαもいる。高位になればなるほどその傾向が強い。さらにいうなら、高位αは獲られないだけで狂う。高位になればなるほどにαは獣の本性も強くなる。飢餓状態で眼の前にご馳走がぶら下がっている、篠崎はその状態だ。
ちらりと唐澤を見る。コイツは何故無事なのか。一度壊れたから耐性ができたのか。それとも……やはり華と番っているからか。篠崎にもΩをあてがえば……
「無理だな。篠崎は今更他のモノに勃起しない。運命ならば反応はするが、ソコに挿れようとは思わないだろう」

モノ、ソコ、
…………無機物扱いだな。
一瞬ではあるが、華を気の毒に思ってしまった。ヒートの熱を利用して、溜らないようにソコにおさめて吐き出す、…………単なる処理機だ。

首を振った。元々レイプなんてするヤツに同情する必要ない。

「分かった。読んでおくよ」
















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