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第一章

29-華

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なんとなく黒髪の男性を優先していた彼が、はっきり優先するΩが現れた。
上位でも何でもない下~中流Ωの佐藤。
細い黒髪で目が印象的な男性Ω。
彼が今までヒートのΩとセックスすることはなかった。なのに、ヤツの時だけは付き合った。ヤツに合わせて数日大学を休んだ。
運命の私でさえ、一人で過ごしているのに!許せない!
ただ、彼はヤツと番うつもりはないようだった。ヒートあけ、奴は無事な自分の首に絶望しただろう。いい気味。運命の私ですら番えてないのだから、単なる身代わりに過ぎないヤツ、しかも下~中流出なんて唐澤の番になんて成りようがないわよね。身の程をわきまえるがいいわ。

なのに…次のヒートもその次のヒートも彼はヤツに付き合ってあげた。

ヤツを呼び出して言ってやった。
貴方は単なる身代わりだと。だから、セックスしてもマーキングされていないと
なのにヤツはいうのだ。
知っていると。でも側に入れるならいいと。大切にしてくれているのは伝わっているからと。一番じゃなくても由希の隣にいる中では俺が一番だから
その黒い黒い瞳をまっすぐに私に向けてきて言ったのだ。

許せない。
彼の運命は私だというのに。
由希?
普段は唐澤君と呼んでいるくせに、こういう時だけ由希?
思い知らせてやるわ。
ちらりと視線をやると、奴の跡をつけてきたのであろう中位αと目が合った。
奴に激しい劣情を抱いているのが解る。
嗤える。ちょうどいい。

ヤツのマンションに引っ越しした。
管理人を誘惑してヤツの鍵を手に入れた。
ヤツのヒートは明後日から。中位αに鍵をあげた。

恨むなら、堂々と私の運命に手を出した自分を、私の運命にキスマークなんてつけてもらってそれを私に見せつけた自分を恨むがいいわ。

ヤツが入院したらしい。
胸がすっとした。
これで、もう彼の隣にはいれないでしょう?

なのにっ
なのになんで?
彼をその目で見つめるの。彼はその瞳に弱いのよ
ビッチが!

…ビッチにはビッチらしくしてもらいましょうか。
二度と、彼の前に出れないくらい恥ずかしい思いをすればいいのよ。
例の中位αは私の提案にすぐに乗った。
所詮、αなんて番ったΩのことになれば幼稚園児並みに愚かになる。それで、ヤツが手に入ると思っているんだから哂える


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