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第一章

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智則が入学してきた。

あれから智則とは会っていない。
それでも俺はまともでいられている。間にあったのだ。

執着はしている。この先、俺は他の誰かに惚れる事もない。
ただ、それで済んで良かった。俺は松井亮太の
ように愛しいと思ったあの笑顔を奪ったりはしないですんだのだ。


「由希」
秋葉が声をかけてきた
「…………なに?」
「あ、えっと……」

俺のこのにすごすごと去っていく。

「あ~あ、かわいそ」

島野が思ってもない口調で言う。アキバはキツネだ。虎の威を借る狐。俺と島野は智則という餌に釣られて秋葉の虎になっていた

その虎が離れていくのだ。秋葉の立場はかなり変わるだろう。フォローしようとも思わないけれど


「唐澤は意外と無事だな」

「……何が」

わかっているけど、とぼけてみせる

「いや、俺でも智則と離れて色々支障をきたしているからさ……」

無事なわけがない。
声を聞きたくてしょうがない。
こんなにも離れた所から見守るのではなく、智則に見つめ返される距離で見守りたい
でも、現実には智則が家に帰ってくる時間にあわせて付近に行って遠くから見つめるだけだ。

「あれか、まだおまえ精通きてないからか」

島野に少し得意げに言われた。島野がクラスの中では真っ先に精通した。その情報はαの中では回っている。フェロモンレイプの兼ね合いからαやΩは精通、ヒートがあった場合には自主的ではあるが担任へ報告をしている。担任はそれを踏まえて様々な注意を払う

「そうだね。ずっと来なければいいのに」

「お前、まさか薬で止めてるわけじゃないよな?」

島野が慌てたようにいう。そんな、尊厳を踏みにじるような薬、小学生の俺が手に入れられるわけがない。

「まさか。でもそんな薬があるならとうに手を出しているよ」

島野と俺ならば俺の方が上位αだ。島野はもうきている。αは孕ませる性で、その上位であるなら精通も早い。本来であれば俺のが先だが、それが来ていないということは、意志の力で何とかなっているのだろう。

松井亮太。
あの男が暴走してしまったのは、αとして、孕ませる性としても完成してしまっていたからだ。
俺は、そうなりたくない。

「お前、やっぱりすげえな。本能を意思で抑え込むのか……でも、いつまでももたないぞ。俺より体の成長も早い。そこだけを止めるなんて…………」

「わかっているよ」

話しながら窓際に移動する。
智則の下校する時間だ。
うん。今日も智則は元気そうだ。

「お前が大丈夫な理由がわかった。そして、それはやめておけ。ストーカーだし、何より……離れていない以上、執着を蓄積させていくだけの時間になってしまう」

…………
それができたら苦労しない。
一週間以上智則を見れないと、俺には禁断症状が現れる。動悸が激しくなり、焦燥感で叫びそうになる。放置すれば理性が壊れて本能のままに智則に向かう事がわかってる。
幼い智則にレイプなんてしたくない。

だから、体が成熟しないように願いつつ、遠目に見守るしかないのだ。










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