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中納言の掌中の珠
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「 東宮が噂を裏づけするような事をなさっておいでですから。」
話が変わり、中納言はホっとするが表情には出さない。
「どこがだ?」
「右大臣様がの三の姫であり東宮妃であられ る 美夜権を、最近お召しになっ ていらっしゃらないとか。そのためでしょう。殿上人の大半はご存知ですし。」
「右大臣から、金でももらったのか?」
「いいえ、ただ、恥をしのんでお願いすると言われた以上、断わり切れませんし。」
「嘘を言うな。あなたは金も懇願も受け入 れないでしょう。忠宗も右大臣と同意見だった。だからだろう?」
「ええ そのとうりです。」
「理由きかないのか?」
「きいてほしいのですか?」
東宮が素直に頷ずいたのを見て中納言は苦笑する。我々は伯父と甥の関係でもあるのだ。時折こんな風に甘えてくる
「何故ですか?」
「北野の己女の夢を見た。」
「……またですか。なんで今更。」
「そんな嫌そうな顔をしないで下さい。」
「その話を初めてきいた時は心臓がとまるかと。だいたい東宮が明け方に供もつけずに 散歩などなさるなんて。しかも妖かと思いながらも近づいていくなんて……!」
「何事もなかったから よいではないか、結局、彼女は人であったし」
そのような問題ではないでしょう! と怒鳴ろうとする中納言を東宮が制した
「とにかく、夢を見た。」
「……五年も前から、何度もみているのでしょう?」
「ああ、だがひどく鮮明で、しかも、いつものとは違っていた。いつもは彼女と出あって夢は終わるのに、今回は出会ったところから初まって ・・・・・・・・泣きながら、月に帰りたいと言っていた。」
「月に!?……東宮、その娘のことは忘れるべきです。月に帰るなどと言うのは妖以外にありえません」
中納言は強張った顔をして言た。妖に東宮 が魅入られたと思ったのだろうか。
「妖ではなかったと、言っているだろう? とにかく、これは初めてで、何となくな。」
「東宮 あなたは美夜様には早く次代の東宮を産んでいただかないと、何となくではすまされません。」
「いいのか?」
「は?」
意味がわからずに中納言は問いかえした。
「美夜に次代の東客を産ませていいのか?」
「ですから それを進めていますが?」
中納言が再び問い返すと東宮は笑い出した。
「忠宗、あなたには本当に野心がないね。私があなたの姫を望んでいる以上、私があなたの姫を望んでいる以上、孫が東宮位にたつという可能性があるだろう?このままなら。」
「そうですか、気がつきませんでした。しかし、皇子の誕生は早いほどよろしいと思います。帝が東宮に御譲位なされたら 次の東宮は女東宮になりますし、何より東宮の後見人が右大臣ともなれば政権も安 定です。」
「欲を持たない者は信用できるが、度がすぎればつまらんな。」
「欲がないわけではないですよ、権力闘争に興味がないだけで、私は守る力は強く欲していますよ。守りたいと。」
誰を? 忠宗が今一番守りたいのは誰だ?
一番守りたい人を守るためなら二番も捨てられるか、棄てるのか、自分を。東宮は尋ねようとして口を開いたが出てきたのは別の言葉だった。
「そうだったな」
会話がとだえ、中納言が退出しようとするのを手で東宮は制した。
「暫くは二人では会えないし、そんなに急ぐことはないだろう。これが最後になるし」
「このようなような日にゆっくりしていては邪推を招きますよ。東宮に私がいつになく長く召された翌日から距離を取られたとなると」
退出の口上を選べている中納言を東宮はじっとみつめる。
姫のことを私に問われたくないから こうも早く提出するのか、私よりその姫の方が大切なのか?
疑問が東宮の口から出る前に中納言は退出していた
話が変わり、中納言はホっとするが表情には出さない。
「どこがだ?」
「右大臣様がの三の姫であり東宮妃であられ る 美夜権を、最近お召しになっ ていらっしゃらないとか。そのためでしょう。殿上人の大半はご存知ですし。」
「右大臣から、金でももらったのか?」
「いいえ、ただ、恥をしのんでお願いすると言われた以上、断わり切れませんし。」
「嘘を言うな。あなたは金も懇願も受け入 れないでしょう。忠宗も右大臣と同意見だった。だからだろう?」
「ええ そのとうりです。」
「理由きかないのか?」
「きいてほしいのですか?」
東宮が素直に頷ずいたのを見て中納言は苦笑する。我々は伯父と甥の関係でもあるのだ。時折こんな風に甘えてくる
「何故ですか?」
「北野の己女の夢を見た。」
「……またですか。なんで今更。」
「そんな嫌そうな顔をしないで下さい。」
「その話を初めてきいた時は心臓がとまるかと。だいたい東宮が明け方に供もつけずに 散歩などなさるなんて。しかも妖かと思いながらも近づいていくなんて……!」
「何事もなかったから よいではないか、結局、彼女は人であったし」
そのような問題ではないでしょう! と怒鳴ろうとする中納言を東宮が制した
「とにかく、夢を見た。」
「……五年も前から、何度もみているのでしょう?」
「ああ、だがひどく鮮明で、しかも、いつものとは違っていた。いつもは彼女と出あって夢は終わるのに、今回は出会ったところから初まって ・・・・・・・・泣きながら、月に帰りたいと言っていた。」
「月に!?……東宮、その娘のことは忘れるべきです。月に帰るなどと言うのは妖以外にありえません」
中納言は強張った顔をして言た。妖に東宮 が魅入られたと思ったのだろうか。
「妖ではなかったと、言っているだろう? とにかく、これは初めてで、何となくな。」
「東宮 あなたは美夜様には早く次代の東宮を産んでいただかないと、何となくではすまされません。」
「いいのか?」
「は?」
意味がわからずに中納言は問いかえした。
「美夜に次代の東客を産ませていいのか?」
「ですから それを進めていますが?」
中納言が再び問い返すと東宮は笑い出した。
「忠宗、あなたには本当に野心がないね。私があなたの姫を望んでいる以上、私があなたの姫を望んでいる以上、孫が東宮位にたつという可能性があるだろう?このままなら。」
「そうですか、気がつきませんでした。しかし、皇子の誕生は早いほどよろしいと思います。帝が東宮に御譲位なされたら 次の東宮は女東宮になりますし、何より東宮の後見人が右大臣ともなれば政権も安 定です。」
「欲を持たない者は信用できるが、度がすぎればつまらんな。」
「欲がないわけではないですよ、権力闘争に興味がないだけで、私は守る力は強く欲していますよ。守りたいと。」
誰を? 忠宗が今一番守りたいのは誰だ?
一番守りたい人を守るためなら二番も捨てられるか、棄てるのか、自分を。東宮は尋ねようとして口を開いたが出てきたのは別の言葉だった。
「そうだったな」
会話がとだえ、中納言が退出しようとするのを手で東宮は制した。
「暫くは二人では会えないし、そんなに急ぐことはないだろう。これが最後になるし」
「このようなような日にゆっくりしていては邪推を招きますよ。東宮に私がいつになく長く召された翌日から距離を取られたとなると」
退出の口上を選べている中納言を東宮はじっとみつめる。
姫のことを私に問われたくないから こうも早く提出するのか、私よりその姫の方が大切なのか?
疑問が東宮の口から出る前に中納言は退出していた
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