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九条様のマンションへー由希
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九条財閥の御曹司がうちの大学に入学したというのは有名な話だ
学年も違うので俺には全く関係のない話として、大して興味もわかなかった
が、
「なんでだよ~」
九条様のお宅に呼び出しされたのである
「まあまあ、役得だと思っとけ」
一緒に呼び出された岡田はノリノリだ
役得、ねぇ
御曹司の番様も帝都大学に通われているらしい。由希達の所属するゼミに番様が興味を持たれているとのことで、ゼミの概要を説明しに行くのだ
募集された時に我先に手をあげたのが岡田で、由希は逆に面倒事はごめんだから、できれば行きたくないと思っていた方だ
しかし、九条の御曹司の指定は番持ちであること、または、βの男性であることであったため俺と岡田が行くことになった
もともと唐澤達ゼミ生の業務の一つに優秀な人材のリクルートがある。優秀な2年生に声をかけるのだ。まあだから慣れているから問題ないと言えばないのだが
「番様はもうコネでうちのゼミに入れるな」
必死になってリクルートしても、山下教授のお眼鏡に叶わなければゼミに入ることは不可能である。だが、さすがに今回は番を様は無条件で山下教授のゼミに入れるであろう。なにせ九条家だ
「あ~、それな。番様は禁句だから、苗字で呼べとお達しがあった」
「天下の九条家だぞ、それなのに番様は随分謙虚だなー」
「番ってない」
「へ?」
「正しくは番えていない、だ。番様はβらしい」
「ま、まじか~血を見るな」
連絡を受けたマンションを見上げながら言った
高級住宅地にある低層のマンション。上位のアルファ達が伴侶を囲うために入るので有名なマンションだ。ぐるりと敷地を囲う背の高いルーバーが、αたちの執着を表しているようで、由希の目にはまるで牢獄のように映った
九条様は番様と出会って直ぐにこのマンションを契約されたらしい
オメガにとっては甘美な城だろうがβにとっては果たして……
「それと、九条様になんの興味もないお前だから知らないと思うから忠告だ、そのβと九条様はまだそのような関係にない。つまりは、九条様の片思いだ」
「え?ええ~!?」
あの九条財閥の御曹司だぞ?しかも最上位αと言われている。そんな人が片思い?
どんなに貞淑な人妻だってあの御曹司に誘われたらイチコロだ
そんな人が片思い?
「ま、まじか~。本当に血を見るぞ」
「最上位αだぞ。そんなミスは犯さないだろう?」
「……上位者になればなるほど惚れた相手への執着は強くて愚かになるもんだよ」
実際問題、βと無理心中するのは上位αばかりだ。
岡田がいたましそうにこちらを見てくるが、気が付かないふりをした
エントランスで九条様に呼ばれた件を伝えると九条様の部屋の前まで案内された
案内と言えば響きはいいが、実際には監視目的であろう。このマンションに住人登録されてない人間が入る時には、各部屋の前まで屈強な警備員とともに行くというルールがあるらしい
気軽に人もよべない。
「かわいそうな子だな。βの女の子だったら外でおしゃれしてカフェ行ったり、家で女子会とかしたいだろうに」
「……番様は男だよ」
「………βの、男か、まだ女性だったら良かったのにな」
九条様の幸福な未来はかなり遠そうだ。番様にとっては………
βには異性愛者が多い。男性であれば女性を望む傾向にある。生物として当然であろう、自分の遺伝子を残したいという本能がβにもある。
だからこそ、九条様からの指定が、番持ちαもしくは男性βのみという形だったのだ。番様は同性を受け入れられるのだろうか?子供を得るという選択肢がなくなるのを受け入れられるのだろうか?
それに……
βの男性は自分の食い扶持は自分で稼ぎたいと思う傾向が強い。最近は女性βもパートナーと対等であるためにと外で働くのを望む傾向にある。この結果、囲いたいαともめる。
子供が出来て考え方を変えるβもいるので、αはその可能性にかける。
ただでさえ、αとβのセックスの頻度はかなり異なる。それなのにβを囲いたくて、さらにαが子作りに意欲を示すのだ。βからしたら、ほぼ拷問に近いのかもしれない
βが離れるのも当然だ。だが、伴侶に溺れるαはそんな事にも気が付けない。
番様がどんなβ男性だかは不明だ。
だが、山下教授のゼミを選択している時点でそれなりに自立心の高い人なのであろう。
優良企業への就職率も高いゼミだ。
「スプラッタだな」
ぼそりと由希がつぶやく。岡田は聞き取れなかったのか、何がという顔でこちらを見てきた。とりあえず首を振っておく。中位αの岡田に、この執着心は共感できまい
インターホンを押す
『はい』という涼やかなでありながら華やかな声に心臓が鷲掴みされた。
扉が開く。
出てきた男の黒曜石のような澄んだ瞳に息が止まった。
智則っ
智則っ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
下記、ネタバレ有りのコメントになりますので、ネタバレ苦手な方は読み進めないで下さい。
由希にぃが、メインの作品をアップしてます。「Ωにレイプされたαの未来は……」です。
それを読んでいただければ、この時の由希にぃの衝撃をより知って頂けるかと。。
学年も違うので俺には全く関係のない話として、大して興味もわかなかった
が、
「なんでだよ~」
九条様のお宅に呼び出しされたのである
「まあまあ、役得だと思っとけ」
一緒に呼び出された岡田はノリノリだ
役得、ねぇ
御曹司の番様も帝都大学に通われているらしい。由希達の所属するゼミに番様が興味を持たれているとのことで、ゼミの概要を説明しに行くのだ
募集された時に我先に手をあげたのが岡田で、由希は逆に面倒事はごめんだから、できれば行きたくないと思っていた方だ
しかし、九条の御曹司の指定は番持ちであること、または、βの男性であることであったため俺と岡田が行くことになった
もともと唐澤達ゼミ生の業務の一つに優秀な人材のリクルートがある。優秀な2年生に声をかけるのだ。まあだから慣れているから問題ないと言えばないのだが
「番様はもうコネでうちのゼミに入れるな」
必死になってリクルートしても、山下教授のお眼鏡に叶わなければゼミに入ることは不可能である。だが、さすがに今回は番を様は無条件で山下教授のゼミに入れるであろう。なにせ九条家だ
「あ~、それな。番様は禁句だから、苗字で呼べとお達しがあった」
「天下の九条家だぞ、それなのに番様は随分謙虚だなー」
「番ってない」
「へ?」
「正しくは番えていない、だ。番様はβらしい」
「ま、まじか~血を見るな」
連絡を受けたマンションを見上げながら言った
高級住宅地にある低層のマンション。上位のアルファ達が伴侶を囲うために入るので有名なマンションだ。ぐるりと敷地を囲う背の高いルーバーが、αたちの執着を表しているようで、由希の目にはまるで牢獄のように映った
九条様は番様と出会って直ぐにこのマンションを契約されたらしい
オメガにとっては甘美な城だろうがβにとっては果たして……
「それと、九条様になんの興味もないお前だから知らないと思うから忠告だ、そのβと九条様はまだそのような関係にない。つまりは、九条様の片思いだ」
「え?ええ~!?」
あの九条財閥の御曹司だぞ?しかも最上位αと言われている。そんな人が片思い?
どんなに貞淑な人妻だってあの御曹司に誘われたらイチコロだ
そんな人が片思い?
「ま、まじか~。本当に血を見るぞ」
「最上位αだぞ。そんなミスは犯さないだろう?」
「……上位者になればなるほど惚れた相手への執着は強くて愚かになるもんだよ」
実際問題、βと無理心中するのは上位αばかりだ。
岡田がいたましそうにこちらを見てくるが、気が付かないふりをした
エントランスで九条様に呼ばれた件を伝えると九条様の部屋の前まで案内された
案内と言えば響きはいいが、実際には監視目的であろう。このマンションに住人登録されてない人間が入る時には、各部屋の前まで屈強な警備員とともに行くというルールがあるらしい
気軽に人もよべない。
「かわいそうな子だな。βの女の子だったら外でおしゃれしてカフェ行ったり、家で女子会とかしたいだろうに」
「……番様は男だよ」
「………βの、男か、まだ女性だったら良かったのにな」
九条様の幸福な未来はかなり遠そうだ。番様にとっては………
βには異性愛者が多い。男性であれば女性を望む傾向にある。生物として当然であろう、自分の遺伝子を残したいという本能がβにもある。
だからこそ、九条様からの指定が、番持ちαもしくは男性βのみという形だったのだ。番様は同性を受け入れられるのだろうか?子供を得るという選択肢がなくなるのを受け入れられるのだろうか?
それに……
βの男性は自分の食い扶持は自分で稼ぎたいと思う傾向が強い。最近は女性βもパートナーと対等であるためにと外で働くのを望む傾向にある。この結果、囲いたいαともめる。
子供が出来て考え方を変えるβもいるので、αはその可能性にかける。
ただでさえ、αとβのセックスの頻度はかなり異なる。それなのにβを囲いたくて、さらにαが子作りに意欲を示すのだ。βからしたら、ほぼ拷問に近いのかもしれない
βが離れるのも当然だ。だが、伴侶に溺れるαはそんな事にも気が付けない。
番様がどんなβ男性だかは不明だ。
だが、山下教授のゼミを選択している時点でそれなりに自立心の高い人なのであろう。
優良企業への就職率も高いゼミだ。
「スプラッタだな」
ぼそりと由希がつぶやく。岡田は聞き取れなかったのか、何がという顔でこちらを見てきた。とりあえず首を振っておく。中位αの岡田に、この執着心は共感できまい
インターホンを押す
『はい』という涼やかなでありながら華やかな声に心臓が鷲掴みされた。
扉が開く。
出てきた男の黒曜石のような澄んだ瞳に息が止まった。
智則っ
智則っ
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下記、ネタバレ有りのコメントになりますので、ネタバレ苦手な方は読み進めないで下さい。
由希にぃが、メインの作品をアップしてます。「Ωにレイプされたαの未来は……」です。
それを読んでいただければ、この時の由希にぃの衝撃をより知って頂けるかと。。
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