私が一番あなたの傍に…

和泉 花奈

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2章:新しいバイト

6話

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私も思わず、嬉し過ぎて照れてしまった。
こんなの好きな人に言われたら、嬉しく思わない方がおかしい。

「今日、帰ったらしてもいいか?」

そんなのいいに決まってる。だって、私も同じことを考えていたから。

「いいよ。しよっか」

スイッチが入った私達は、足早に帰り道を歩いた。
家に着いた途端、玄関だというのに、すぐに愁はキスをしてきた。

「愁…?ここでするの?」

「うん。ここでする」

こうなってしまった愁は、もう誰にも止められないので、私は受け入れた。
愁は私が気を失うまで求めた。気がついたら、ベッドの上で眠っていた。
私の頭を優しく撫でてくれる、愁の手の温もりを感じながら、眠りに落ちた。


           *


今日も今日とて、アルバイトが入っている。
ちなみに愁は今日、アルバイトが入っていないので、お休みみたいだ。

「私、今日、アルバイトが入ってるから、遅くなります」

一応、お互いにその日一日の行動報告をすることになっている。
束縛というより、単純にお互いにアルバイトをしていて、帰りの時間が遅いため、心配する気持ちの負担を減らすために、こうしてお互いに報告することとなっている。

「了解。迎えに行くから、終わったら連絡頂戴」

お休みの日ぐらい、ゆっくしていてほしいが、愁のご厚意を無下にすることはできなかった。

「分かった。連絡するね」

私の言葉を聞いて、愁は安心したみたいだ。
だって愁は、迎えに行くことを楽しみにしているから。

「おう。待ってる」

話は変わり、他愛のない話を繰り広げた。
楽しい空気のまま、バイトの時間まで一緒に過ごした。


           *


大学は今日ないので、アルバイトをしに家を出た。
家を出る前に、『行ってきます』と一言声をかけてから出てきた。
美咲くんは私の家で帰りを待ってくれている。ゆっくりしてくれているのであれば、それに越したことはない。
私はその間、頑張って働くだけだ。自分のためにも。待ってくれている愁のためにも。

「おはようございます」

バイト先に着いたので、同僚に挨拶をした。
皆振り返って、私を見て、「おはようございます」と挨拶してくれた。
それが嬉しかった。このバイト先のメンバーとして、認めてもらえているような気がして。

「よ!幸奈」

後ろから蒼空が登場し、私の頭をサラッと触った。
一瞬、手の温もりにドキッとした。その時、愁を思い出し、早く会いたいなと思った。

「お久しぶり、蒼空」

バイト中は裏方と表ということもあり、あまり接する機会がなかったため、こうして話すのは久しぶりだ。

「どう?慣れた?」

思ったよりも早く仕事に慣れた。まだまだダメなところは多いけど。

「うん。慣れてきたよ」

「そっか。ならよかった」

このアルバイトで働けてよかったなと、蒼空と喋って改めてそう思った。

「ありがとう。アルバイトを紹介してくれて」

私がそう言うと、蒼空は優しく微笑んでくれた。
そして、また私の頭を優しく撫でた。

「そっか。ならよかった」

蒼空にとって私はきっと、妹のような存在なのであろう。
私も蒼空をお兄ちゃんみたいな存在だと思っている。

「さてと、今日も働きますか」

そう言って、蒼空はその場を去った。
そしてその後、小林さんが来て、軽く談笑した後、ちゃんと働いた。
休憩時間がくるまでしっかり働き、休憩時間も一緒に小林さんと過ごした。


           *


終了時間までちゃんと働き、バイトが終わった。
終わったので、いつも通り愁に、“終わったよ”と連絡した。
いつもの光景を、小林さんは優しく見守っていた。

「大平さん、彼氏とラブラブだね」

色々あった分、今が一番、熱々の時期だ。
周りから見たら、ただのイチャイチャ仲良しカップルにしか見えないかもしれないけど。

「そうかな?そう言ってもらえてなによりです…」

他人に改めて指摘されると、恥ずかしくて照れてしまった。

「それじゃ、お先に失礼するね」

そう言って、小林さんは去ってしまった。
私が一人でポツンと待っていると、再び頭の上に手が置かれた。

「よ!お疲れ」

同じくバイト終わりの蒼空が、私の頭に触れてきた。

「お疲れ」

声をかけてくれたので、私も一応、声をかけた。

「例の彼氏待ち?」

バイトの皆に知れ渡っているので、蒼空にも既にバレていたみたいだ。

「うん。そうだよ。彼氏が迎えに来てくれるのを待ってるところ」

すると、蒼空は苦い顔をした。
やっぱりバイト先に迎えに来るのは、迷惑なのかもしれないなと思った。
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