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壱ノ章:最強の守護霊
第十九話 『龍神の涙』
しおりを挟む「母さん、俺を産んでくれてありがとう。俺は今、元気でやっているよ。友達もいるし、毎日楽しく過ごしてる…俺が今も元気で暮らす事が出来ているのは母さんのおかげだ」
俺は手を合わせたまま目を閉じた。
「亡くなった今も、俺を気にかけてくれて…護ってくれてありがとう。これからも天国で、俺の成長を見守っていてください」
そして目を開けると、俺は背後を振り向いた。
何度見てもやっぱりだけど誰もいないし、何も視えない。
でも、俺の後ろには廃ホテルで見た龍神様がいる。
俺は視えていなくても、龍神様は俺の事は視えているはずだ。
立っている事を想定して、宙を見上げるように顔を上げる。
「龍神様。廃ホテルで、俺と俺の友達を助けてくれてありがとうございます。龍神様のおかげで助かってこうやって無事に帰ってくる事が出来ました」
龍神様は今、どんな顔をして俺の話を聞いているのだろうか。
少しだけ気になった。
「そして、俺の傍でずっと護っていてくれてありがとうございます」
もう変な所には行かないと心に決め、俺はもう一度仏壇へ向き直ると、飾られている母さんの写真に静かに手を合わせた。
『――裕也…』
裕也の背後に、白髪の女の姿が浮かび上がる。
女は手を合わせる裕也の後姿を優しく見つめ、その視線は仏壇へと向けられた。
『李南…。妾は一生忘れぬ…。李南が妾を助けてくれた事を。お主のその優しさを…。お主と共に暮らしてきた大切な日々を――。そして、若くして逝ってしまったお主の代わりに、必ずや裕也の事を護ると約束しよう。これからもずっと…。それが、妾に出来るお主への恩返しなのだから――…』
李南の写真に向かって話す女の表情は、とても悲しそうだった。
《――ありがとう。ハクア…》
『ッ…!!り、な…ッ』
仏壇の横に、薄っすらと李南の姿が現れる。
写真に写る表情と同じ綺麗な笑顔を女に向けていた。
《ハクア…裕也の事、よろしくね》
そう言うと李南の姿は消えてしまった。
女の頬に涙が伝い落ちる。
瞼の裏に、李南と最期に一緒に過ごした日の光景が浮かんでいた。
「ねぇハクア。約束して欲しい事があるの」
李南は大きくなったお腹に手を添えながら、自室のソファーに座ったまま、窓から見える満点の星空を見上げていた。
『約束?なんだ?』
李南の傍に寄り添うのは、1メートルほどの小ぶりな白い龍だ。
龍は不安げに李南を見上げる。
「私が死んだその時は、産まれてくる私の子供を護って欲しいの。私の代わりに」
李南は龍に向かって綺麗に微笑んだ。
『ッ…!!』
「お願いハクア…っ。私と最初で最期の約束…っ。もう…あなたしか頼める人はいないの…ッ!お願い…ッ!お願いよハクア…ッ」
李南は大粒の涙を流しながら大きくなったお腹を抱きしめ、龍に懇願した。
『李南…ッ』
声を震わせた龍の姿が、徐々に人型へと変化していく。
龍は白い着物を身に纏った白髪の少女の姿へと変わった。
少女は泣き崩れる李南を小さい手で抱きしめる。
『分かった…ッ!妾がお主の子供を絶対に守るっ!絶対に…絶対にだッ…!!約束しようッ…!』
少女の瞳からは涙が溢れていた。
「うんっ…!ありがとう、ハクア…ッ」
李南は、涙を流しながら少女をしっかり抱きしめ返した。
龍神様の瞳がゆっくりと開く。
仏壇を見れば、そこにもう李南の姿はなかった。
女は、李南が微笑んで写っている写真を見る。
『ッ…李南…。分かっている…妾とお主の、最期の約束だ…』
龍神様は涙を流しながら、切ない笑顔を李南へと向けていた。
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