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第二巻
神話と宇宙移民 第2話 その1
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異邦のほし
第二巻 神話と宇宙移民
弐.
目覚めた神聖獣が日本に上陸した。神奈川県区域都市部で自衛隊組織と激闘を繰り広げているのだが…
「…三十年前の二の舞か」
東城は、神聖獣(怪獣)対策司令部のメインモニターで神聖獣と自衛隊の攻防を観覧していた。彼は負け戦だと悟り、独り呆れ顔であった。
唯一、神聖獣と対抗できそうなのは≪朱雀≫各機だが、前の戦闘の影響で≪朱雀壱号機改≫は修理中、専属パイロット不在。よって、≪朱雀弐号機≫との合体は不可能だった。
また、進化した怪獣=神聖獣が核エネルギーの放射能物質を有していないことから、≪朱雀≫各機の出番はないようだ。現時点で、神聖獣を撃退するための兵器や戦法《すべ》は存在していない。
よって、自衛隊組織は残存部隊で、強敵に立ち向かうこととなった。
[…目標捕捉、着弾距離計測、ミサイル発射準備完了…]
「ミサイル発射を許可する」
海上自衛隊の艦隊は、遠距離射程攻撃の許可を得て、横浜海域からミサイルを一斉発射した。
[目標着弾まで…三十秒…二十九…]
発射されたミサイルの着弾のカウントがされて、命中結果を待つが…
ウギャオォォォ…
海上自衛隊艦隊のミサイルは、神聖獣に全弾命中した。神聖獣の咆哮が鳴り響くのと同時に、凄まじい爆音と蔓延する漆黒の煙が威力を物語る。
「やったか?」
閣僚の一人が神聖獣のダメージを期待するが…
神聖獣はけろっとしていた。奴は期待を裏切る生物に違いない。
神聖獣の外皮は分厚く強固で、自衛隊組織の通常火器兵器では全く歯が立たないことを思い知っただろう。自衛隊は陸海空の総力を結集したが、一切通用しなかった。
「…核の放射能汚染の心配はないが、脅威的な存在に変わりがない…」
「被害範囲は広がる一方です、このままでは日本が滅びてしまう!」
東城と白森は、神聖獣の未知なる脅威に危惧の念を抱いていたが…
「目標は反撃せず、そのまま前進…方向は北です」
「北だと?」
神聖獣(怪獣)対策司令部にいる関係者は、オペレーターの報告に疑問を呈した。神聖獣は東京を目指さず、北関東区域に向かっていた。
「奴の侵攻ルートが読めない、我が国の中枢はそこにあるのに…」
「奴とて単なる動物だ、何も考えちゃいない、とにかく、これで東京壊滅は避けられそうだ」
「………」
統合幕僚長が安堵する中、東城はすっきりせず、険しい表情が和らぐことがなかった。
神聖獣の足取りを追う者は他にも在る。
玲が入院している病院。
「奴が北関東に?」
「なんか怖いわ、この辺まで来るんじゃないの?」
現在放送されている報道番組では、神聖獣に関する被害状況の情報が続々と流れており…
「自衛隊に攻撃していないようだし…目的は?」
玲の見舞いで訪れた者たちは、神聖獣の行動で恐怖と不安を植え付けられた。玲は超能力で奴の考えを探ってみるが…
「駄目だわ…テレパシー回線は遮断されたままよ」
「今の奴は以前とは別物だ、上陸した理由さえ分かれば…」
「やっぱり〝かえせ〟という彼のメッセージが関連しているのでは?」
「盗まれたものを探しているんですよ」
大津は弓と杏沙の意見に賛同した。
「何を探しているか知らんが、これ以上、うろつかれちゃ迷惑だな」
「私が彼とちゃんと通じ合えば……!」
玲が自分の無力さに嘆く中、彼女の病室に異変が起きた。
「…ここは怪獣被害の避難区域に達しました、皆さん避難準備を…」
玲の担当医師と看護師たちが慌てた顔で、病室に現れた。院内は神聖獣騒動で錯乱状態となっていた。多くの患者は別の病院に搬送されていき、四人も避難指示に従うが…
「ごめん、トイレに行ってくる…」
「え…ちょっと…」
玲は独り、病室を出て行った。
「玲君は何処に行く気だ?」
「トイレだと言ってたけど…」
「彼女のことは任せろ…先に行っといてくれ」
大津は玲の嘘を見抜き、勝手な行動を取る彼女を連れ戻そうとした。
「何してるんですか?早く非難して下さい!」
大津は災害救助で派遣された自衛隊隊員に注意された。
「うちの娘がトイレに行ったまま帰ってこないんだ」
「そうですか、お嬢さんは我々で捜しますので、お父さんは病院から出て下さい」
「いや、玲を見つけて一緒に避難する!」
「では同行します、急ぎましょう」
大津は自衛隊隊員に協力してもらい、玲を捜索しようと、病院内を駆け回って行った。
玲はというと…
「はあ…はあ」
玲は非常階段を駆け上っていき、病棟屋上を目指していた。彼女は息を切らしながら、屋上に辿り着き…
澄んだ青空、自然のエネルギーが満ち溢れている山々、玲が入院している病院はそういった環境の周辺に建っていた。
穏やか時間が流れているが、彼女は呑気に、外の空気を吸いに来たわけではない。しばらくすると、非現実な光景を目の当たりにする。
長閑な風景に妙な影が見えた。待ち怪獣来る。
玲は神聖獣が出現することを望み、願いはあっさり叶ってしまった。
第二巻 神話と宇宙移民
弐.
目覚めた神聖獣が日本に上陸した。神奈川県区域都市部で自衛隊組織と激闘を繰り広げているのだが…
「…三十年前の二の舞か」
東城は、神聖獣(怪獣)対策司令部のメインモニターで神聖獣と自衛隊の攻防を観覧していた。彼は負け戦だと悟り、独り呆れ顔であった。
唯一、神聖獣と対抗できそうなのは≪朱雀≫各機だが、前の戦闘の影響で≪朱雀壱号機改≫は修理中、専属パイロット不在。よって、≪朱雀弐号機≫との合体は不可能だった。
また、進化した怪獣=神聖獣が核エネルギーの放射能物質を有していないことから、≪朱雀≫各機の出番はないようだ。現時点で、神聖獣を撃退するための兵器や戦法《すべ》は存在していない。
よって、自衛隊組織は残存部隊で、強敵に立ち向かうこととなった。
[…目標捕捉、着弾距離計測、ミサイル発射準備完了…]
「ミサイル発射を許可する」
海上自衛隊の艦隊は、遠距離射程攻撃の許可を得て、横浜海域からミサイルを一斉発射した。
[目標着弾まで…三十秒…二十九…]
発射されたミサイルの着弾のカウントがされて、命中結果を待つが…
ウギャオォォォ…
海上自衛隊艦隊のミサイルは、神聖獣に全弾命中した。神聖獣の咆哮が鳴り響くのと同時に、凄まじい爆音と蔓延する漆黒の煙が威力を物語る。
「やったか?」
閣僚の一人が神聖獣のダメージを期待するが…
神聖獣はけろっとしていた。奴は期待を裏切る生物に違いない。
神聖獣の外皮は分厚く強固で、自衛隊組織の通常火器兵器では全く歯が立たないことを思い知っただろう。自衛隊は陸海空の総力を結集したが、一切通用しなかった。
「…核の放射能汚染の心配はないが、脅威的な存在に変わりがない…」
「被害範囲は広がる一方です、このままでは日本が滅びてしまう!」
東城と白森は、神聖獣の未知なる脅威に危惧の念を抱いていたが…
「目標は反撃せず、そのまま前進…方向は北です」
「北だと?」
神聖獣(怪獣)対策司令部にいる関係者は、オペレーターの報告に疑問を呈した。神聖獣は東京を目指さず、北関東区域に向かっていた。
「奴の侵攻ルートが読めない、我が国の中枢はそこにあるのに…」
「奴とて単なる動物だ、何も考えちゃいない、とにかく、これで東京壊滅は避けられそうだ」
「………」
統合幕僚長が安堵する中、東城はすっきりせず、険しい表情が和らぐことがなかった。
神聖獣の足取りを追う者は他にも在る。
玲が入院している病院。
「奴が北関東に?」
「なんか怖いわ、この辺まで来るんじゃないの?」
現在放送されている報道番組では、神聖獣に関する被害状況の情報が続々と流れており…
「自衛隊に攻撃していないようだし…目的は?」
玲の見舞いで訪れた者たちは、神聖獣の行動で恐怖と不安を植え付けられた。玲は超能力で奴の考えを探ってみるが…
「駄目だわ…テレパシー回線は遮断されたままよ」
「今の奴は以前とは別物だ、上陸した理由さえ分かれば…」
「やっぱり〝かえせ〟という彼のメッセージが関連しているのでは?」
「盗まれたものを探しているんですよ」
大津は弓と杏沙の意見に賛同した。
「何を探しているか知らんが、これ以上、うろつかれちゃ迷惑だな」
「私が彼とちゃんと通じ合えば……!」
玲が自分の無力さに嘆く中、彼女の病室に異変が起きた。
「…ここは怪獣被害の避難区域に達しました、皆さん避難準備を…」
玲の担当医師と看護師たちが慌てた顔で、病室に現れた。院内は神聖獣騒動で錯乱状態となっていた。多くの患者は別の病院に搬送されていき、四人も避難指示に従うが…
「ごめん、トイレに行ってくる…」
「え…ちょっと…」
玲は独り、病室を出て行った。
「玲君は何処に行く気だ?」
「トイレだと言ってたけど…」
「彼女のことは任せろ…先に行っといてくれ」
大津は玲の嘘を見抜き、勝手な行動を取る彼女を連れ戻そうとした。
「何してるんですか?早く非難して下さい!」
大津は災害救助で派遣された自衛隊隊員に注意された。
「うちの娘がトイレに行ったまま帰ってこないんだ」
「そうですか、お嬢さんは我々で捜しますので、お父さんは病院から出て下さい」
「いや、玲を見つけて一緒に避難する!」
「では同行します、急ぎましょう」
大津は自衛隊隊員に協力してもらい、玲を捜索しようと、病院内を駆け回って行った。
玲はというと…
「はあ…はあ」
玲は非常階段を駆け上っていき、病棟屋上を目指していた。彼女は息を切らしながら、屋上に辿り着き…
澄んだ青空、自然のエネルギーが満ち溢れている山々、玲が入院している病院はそういった環境の周辺に建っていた。
穏やか時間が流れているが、彼女は呑気に、外の空気を吸いに来たわけではない。しばらくすると、非現実な光景を目の当たりにする。
長閑な風景に妙な影が見えた。待ち怪獣来る。
玲は神聖獣が出現することを望み、願いはあっさり叶ってしまった。
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