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最終章 いかないで
第八話 君はいつも甘えてくれない
しおりを挟む鷲座は城につくと、ある一定のぴりぴりと電流のようなものが迸っている部分の前で、止まった。
「これを、切れば結界は壊れるでしょう。陽炎どの、それでも行かれるか? 柘榴は、拒否してるのだろう? もしも生き延びても――もう君と会えないんだろう、ぼくは?」
「遊びにくりゃいいだろうが」
「そうもいかない。柘榴が世界一ということは、ぼくも…小生も世界一ということになるんだ、力をかすめ取っているから」
「じゃあ、柘榴に会いに行くのには心強いな? なぁ、鷲座、今まで大人になろうとしていたんだな。小生じゃなくて、ぼく、でいいぞ」
「……お断りします。……小生は、大人になりたいんですから。陽炎…どの…、最後に抱きしめさせてください」
「お前はさっき抱きしめたから駄目」
くすくすと笑い、陽炎が冗句を言ってから雲の上に立つと、立派な雲でできた城が見えた。
その城へと続く道に不穏な何かがあるのは理解できたが、まずはこの結界を壊さねばどうにもならぬだろう。
陽炎は、円形剣を取り出し、妖術を切るという技をしてみせた。初めて見るそんな技に鷲座は驚くも、流石だと感心した。
「――陽炎どの」
「何だ?」
「……小生はここで君たちが帰ってくるのを待ってます。……柘榴を救うのが目的なら、小生はついていってはいけない気がするんです」
「うん、じゃあお前とはここで、お別れ。有難うな、俺、お前に甘えてばかりだった」
「……そんなことないです。君はいつも、小生ではなくこの馬鹿鳥に甘えてばかりでしたよ、酷い御方」
鷲座はそう笑うと、鷲の姿になり、何処かへ飛んでいった。
背中を見やり、陽炎は、結界を切った後の城に入る。鴉座に「気をつけろ」と告げて。
足下から、妖術でできた妖仔が出てきた、大層な化け物だ。
陽炎はそのことに気付くと、円形剣を振りかざし、鴉座は投げナイフを使い、倒して前へと進んでいく。
妖術の化け物の次は、言葉を告げられぬのに、言葉が必要な暗号門。
陽炎はどうしたものかと考えていると、鴉座が言葉を門に書いて開かせた。言葉とは、声だけではなく、文字でも意味を持つものだと思い知った陽炎だった。
城に入ろうとすれば、今度は電流が躯を走る――だが、電流なんかで陽炎は負けなかった。たとえ何百万ボルトであろうと、痛み虫が巣くってるこの躯には意味がない。
城の中に入れば、沢山の毒蛇たちが待ち受け、更に化け物のような大蛇も待ち受けていた。
陽炎は蛇たちを避けるために、鴉座に頼み込んで、空を飛びながら、柘榴を探し回った。
他にも幾つも罠があった。答えを一つでも間違えれば死んでしまう罠ばかりであった。
特に妖術関連の罠など対処法が判らないが、そんなときは鴉座が手助けしてくれていた。
やがて、城にある塔の屋根に辿り着き――そこに柘榴はいた。
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