【BL】星座に愛された秘蔵の捨てられた王子様は、求愛されやすいらしい

かぎのえみずる

文字の大きさ
上 下
240 / 358
第六部~梅花悲嘆~

第十六話 強大な運命力

しおりを挟む
 
「蓮見は西の方角に居る。だけど、菫クンが助けてくれるでしょう。蓮見がもしも菫クンに会った際に、陽炎さん、貴方に――何かが起こる。否、判明するだろう。貴方の人生は、それで大分変わる……」
「……お前が蓮見を渡して、何かする予言じゃねーだろうな?」
「貴方に回りくどく言うのはいけないみたいだな。――白雪様が、もし何かあったら貴方に手を貸して占うようにって言ったんだ、だからこうして逆らえないから助けてるのに、貴方は疑う――悲しいね。随分嫌われたこと」
「その割りには嬉しそうですね?」

 鴉座がにやけている字環を指摘すると、字環は鴉座を睨み付けてから、陽炎の頬をそっとなぞり、にこりと微笑む。
 そして一瞬で加虐的な笑みに変えて、なぞっていた手で頬を引っ張り、抓るのだが。
 
「――嬉しいに決まってるさ。憎しみは愛情と紙一重だって言うじゃないか?」
「好かれないなら嫌われたい? 随分と短絡思考ですこと」
「……君に何が分かる? 僕と陽炎さんは、共有出来るものがある。君には決してわかり得ぬことだ」
「――おえがおあえのあにをっ」

 痛そうに、陽炎は涙目で反論しようとしたが、痛さに耐えきれなかったのか、字環の手を払いのけて、睨み付けながら、頬をさする。
 字環はにぃっと笑い、その瞬間、陽炎と己の外にだけ結界を張り、誰も触れることが出来ないようにする。
 そうしてから、陽炎の首根っこに抱きつくように、身を寄せて、陽炎の耳元で囁く。
 
「――世の中にはどうにもならないことがある。だから諦めるしかない――そう思って育ってきただろう?」
「……ッ!」

 それは図星だったようで、陽炎は顔色をさっと変えて、字環を突き飛ばそうとするが、体が動かない。
 もどかしさに苛つきながら、字環に触れている箇所を気持ち悪く思う。

「どうせこうなる運命だった。足掻いてもしょうがない。どうせ自分でやるしかない――だから、何もかも拒絶しよう、その方が楽だ」
「……――字、環」
「陽炎さん、僕にはとってもその気持ちは分かる、だって僕は見えない力に翻弄された人間だからね――君のように。とてもとても大きな力。ねぇ、陽炎さん、君がプラネタリウムを拾ったのは本当だとして、そこから先は本当に偶然なのかな。何か宿命とか、そういう大きな意図が動いて、君と蒼と柘榴様を引き合わせたんじゃないだろうか?」
「……――その流れに、俺が翻弄されて、流れの通りに動いていると?」
「さぁ、偶然かもしれない。でも凄く、強大な力だな、って思って。貴方の不幸は」

 そう言うと字環がお互い顔が見える程度に離れて、柔らかな笑みを見せる。
 彼の笑みにも、白雪のように種類がありそうだなと思ったが、それは結構分かりやすそうだった。
 鴉座が何か字環に言ってるが、耳に入ってこない。まるでそういう術があるように。でもきっとこれは違う。ただ、心の奥底で少し感じていたことを言い当てられて動揺してるから、耳に入らないのだろう。
 それを見透かしたような目を、字環はしている。

「白雪様がね、君の運命を占えって、城で誰もいないときに言われたんだ。だから、彼の目の前で占った。君の将来を、占った。結果は、吉か凶かしか言わなかったけど。怖かった、視線だけでも、何か間違えたこと言ったら消されるかと思ったよ――結果が知りたい?」
「……――知りたく、ない」

 やめろ、と喚くことが出来たら、喚いていた。だけども、鴉座が側にいるから、そのような大人げないこと出来るはずもなく、小さな声は掠れるように出た。
 だが字環はその声が聞こえているにも関わらず、話そうとする。
 だから、陽炎は泣きそうな顔をした。
 
 ――その時、鴉座が結界を破って、字環を殴った。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!

N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い 拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。 Special thanks illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560) ※独自設定です。 ※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。

超絶美麗な美丈夫のグリンプス ─見るだけで推定一億円の男娼でしたが、五倍の金を払ったら溺愛されて逃げられません─

藜-LAI-
BL
ヤスナの国に住む造り酒屋の三男坊で放蕩者のシグレは、友人からある日、なんでもその姿を見るだけで一億円に相当する『一千万ゼラ』が必要だという、昔話に準えて『一目千両』と呼ばれる高級娼婦の噂を聞く。 そんな中、シグレの元に想定外の莫大な遺産が入り込んだことで、『一目千両』を拝んでやろうと高級娼館〈マグノリア〉に乗り込んだシグレだったが、一瞬だけ相見えた『一目千両』ことビャクは、いけ好かない高慢ちきな美貌のオトコだった!? あまりの態度の悪さに、なんとかして見る以外のことをさせようと、シグレは破格の『五千万ゼラ』を用意して再び〈マグノリア〉に乗り込んだのだが… 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 シグレ(26) 造り酒屋〈龍海酒造〉の三男坊 喧嘩と玄人遊びが大好きな放蕩者 ビャク(30〜32?) 高級娼館〈マグノリア〉の『一目千両』 ヤスナでは見かけない金髪と翠眼を持つ美丈夫 〜・Å・∀・Д・ω・〜・Å・∀・Д・ω・〜 Rシーンは※をつけときます。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

どこにでもある話と思ったら、まさか?

きりか
BL
ストロベリームーンとニュースで言われた月夜の晩に、リストラ対象になった俺は、アルコールによって現実逃避をし、異世界転生らしきこととなったが、あまりにありきたりな展開に笑いがこみ上げてきたところ、イケメンが2人現れて…。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

処理中です...