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第一部――第九章 星座とラストダンス
第五十一話 世界で一番星座を愛する傲慢な人(第一部終)
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柘榴コール越しに、蟹座の怯える声なき声が聞こえる。
それを聞いて、中々上手になったなぁと柘榴は笑いを口を押さえて殺す。
その姿を見て、鷲座はふむ、と唸る。
(まるで、あの時の言葉は告白のようだったが、本当にこの人は友情なのだろうか? 違っていたら一番の難敵はこの人だな……――)
「ふはは、人の人生、常に裏切り裏切られなんだよ、身内でも。学習するのだ、かげ君。絶対的な関係は怖いんだぜ? 友好じゃなくて、義務だけになるからね、絶対的の先は。……ん? どしたの、わっしー」
首傾げて問いかける柘榴を見て、本気で好きならば好きな相手の黒子の場所を売ったり、襲われそうな時に余裕で笑ったり、こうして情報売ったりはしないだろう。ライバルに。
そういう考えに辿り着いた鷲座は安堵して、悩み相談を獅子座と共に続ける。隣には、「これで貴方も前向き思考!」という本を読んでる水瓶座を置いて。
「いいえ、何でもないです。それで……」
――眠れないのは、夜が毎回、こんなに騒がしいからだ。
屋根でプラネタリウムを抱えて座っている冠座は、くすっと笑って、プラネタリウムの中の闇鳥に話し掛ける。
「そんな外の景色を閉ざして、陽炎に何か起こるんじゃないかって怯えなくて良いのに。それとも陽炎の顔を見たら、また表に出たくなるから? ――心配ないよ、もう。頑張ってるから。やっぱり、ほら、陽炎はそんなに弱い人じゃない。……誰にも内緒だけどね、私、あんたのこと嫌いじゃなかったよ。いつも一番に陽炎を思ってたから。その好意は、純粋だったから……あんた、やりすぎたんだよ、焦ったんだよ。ライバルが多いからねー大変だよね、愛属性の奴らって。……――私が黄道十二宮だったら、あんたを抑えられてたかな」
偽りの夜では見られない満天の星空を眺めて、冠座は自分と鴉座を探す。
同じ季節の星だといいな、と淡い期待を抱きながら。
鴉座は今、夜に羽ばたいているだろうか。それとも、別の季節に羽ばたくだろうか――。
一人、寂しくなったら、夜空を見上げてご覧。
そこにはきっと、自分を見守る星が居て、朝を共に待ってくれる。
朝になったら、世界で独りぼっちじゃないことがきっと、判る。そしたら、一人じゃなくなった気分の自分を、沢山かも知れないし少数の友達や、知り合いが待っていて、貴方と話すのを待っていることに気づける。
「いつか、自分を許せる日が来るよ。だから、忍び泣きとかしちゃあ駄目だよ。夜空はいつも訪れ、朝日はいつも昇る。でもそうじゃない日だって、あると思うよ。“いつも”は“絶対”じゃないんだから。いつか突然――奪われる。そう言うときこそ、あんたが現れて、夜空を見せてあげなよ。さよならを言って、朝日を感じさせなよ」
――外には屋敷を抜け出して、夜空を見上げる陽炎。瞳にどの星座を映しているのか、この位置からは、冠座には判らない。
――だけど、その眼の色が夜色だということは知っている。あの夜が映す光は、偽物でも本物でもきっと「星」なのだ。月には興味を持たない人だから。
「星が来ないと、あの人の目には星座は映らないよ。あの人の目は夜なんだから、星を映さないと夜空が完成しないよ。あの人が作りたがっていた、プラネタリウムが――」
――プラネタリウムを作る人は、世界で一番夜空を愛して、側に置きたがる傲慢な人。
――でもそのプラネタリウムは傲慢な人を独占したがる、寂しがり屋の集団。
――偽夜空を、愛するその人は、それでも寂しがり屋達を突き放さない。
――だって、その人だって寂しがり屋だから、同じ臭いを感じて、偽夜空を必要とするのだろう。
――夜空へ、惜しみなく愛情を
寂しがり屋の側には、絶対誰かが居るのだから。絶対守ってくれているから。
人ではなくても、側にいるのだから。貴方の頭上にあるのは? 貴方の体を寒さや暑さから庇うのは? 貴方の心を前向きにするアイテムは?
何処かしらに、何か、落ちているでしょう?
――プラネタリウムを作った人は、それを教えたかったのかも知れない。
――今は会えていなくても、星の数ほど人はいるという言葉があるくらい、独りぼっちになる可能性の低さを物語ろうと――。
(第一部終)
それを聞いて、中々上手になったなぁと柘榴は笑いを口を押さえて殺す。
その姿を見て、鷲座はふむ、と唸る。
(まるで、あの時の言葉は告白のようだったが、本当にこの人は友情なのだろうか? 違っていたら一番の難敵はこの人だな……――)
「ふはは、人の人生、常に裏切り裏切られなんだよ、身内でも。学習するのだ、かげ君。絶対的な関係は怖いんだぜ? 友好じゃなくて、義務だけになるからね、絶対的の先は。……ん? どしたの、わっしー」
首傾げて問いかける柘榴を見て、本気で好きならば好きな相手の黒子の場所を売ったり、襲われそうな時に余裕で笑ったり、こうして情報売ったりはしないだろう。ライバルに。
そういう考えに辿り着いた鷲座は安堵して、悩み相談を獅子座と共に続ける。隣には、「これで貴方も前向き思考!」という本を読んでる水瓶座を置いて。
「いいえ、何でもないです。それで……」
――眠れないのは、夜が毎回、こんなに騒がしいからだ。
屋根でプラネタリウムを抱えて座っている冠座は、くすっと笑って、プラネタリウムの中の闇鳥に話し掛ける。
「そんな外の景色を閉ざして、陽炎に何か起こるんじゃないかって怯えなくて良いのに。それとも陽炎の顔を見たら、また表に出たくなるから? ――心配ないよ、もう。頑張ってるから。やっぱり、ほら、陽炎はそんなに弱い人じゃない。……誰にも内緒だけどね、私、あんたのこと嫌いじゃなかったよ。いつも一番に陽炎を思ってたから。その好意は、純粋だったから……あんた、やりすぎたんだよ、焦ったんだよ。ライバルが多いからねー大変だよね、愛属性の奴らって。……――私が黄道十二宮だったら、あんたを抑えられてたかな」
偽りの夜では見られない満天の星空を眺めて、冠座は自分と鴉座を探す。
同じ季節の星だといいな、と淡い期待を抱きながら。
鴉座は今、夜に羽ばたいているだろうか。それとも、別の季節に羽ばたくだろうか――。
一人、寂しくなったら、夜空を見上げてご覧。
そこにはきっと、自分を見守る星が居て、朝を共に待ってくれる。
朝になったら、世界で独りぼっちじゃないことがきっと、判る。そしたら、一人じゃなくなった気分の自分を、沢山かも知れないし少数の友達や、知り合いが待っていて、貴方と話すのを待っていることに気づける。
「いつか、自分を許せる日が来るよ。だから、忍び泣きとかしちゃあ駄目だよ。夜空はいつも訪れ、朝日はいつも昇る。でもそうじゃない日だって、あると思うよ。“いつも”は“絶対”じゃないんだから。いつか突然――奪われる。そう言うときこそ、あんたが現れて、夜空を見せてあげなよ。さよならを言って、朝日を感じさせなよ」
――外には屋敷を抜け出して、夜空を見上げる陽炎。瞳にどの星座を映しているのか、この位置からは、冠座には判らない。
――だけど、その眼の色が夜色だということは知っている。あの夜が映す光は、偽物でも本物でもきっと「星」なのだ。月には興味を持たない人だから。
「星が来ないと、あの人の目には星座は映らないよ。あの人の目は夜なんだから、星を映さないと夜空が完成しないよ。あの人が作りたがっていた、プラネタリウムが――」
――プラネタリウムを作る人は、世界で一番夜空を愛して、側に置きたがる傲慢な人。
――でもそのプラネタリウムは傲慢な人を独占したがる、寂しがり屋の集団。
――偽夜空を、愛するその人は、それでも寂しがり屋達を突き放さない。
――だって、その人だって寂しがり屋だから、同じ臭いを感じて、偽夜空を必要とするのだろう。
――夜空へ、惜しみなく愛情を
寂しがり屋の側には、絶対誰かが居るのだから。絶対守ってくれているから。
人ではなくても、側にいるのだから。貴方の頭上にあるのは? 貴方の体を寒さや暑さから庇うのは? 貴方の心を前向きにするアイテムは?
何処かしらに、何か、落ちているでしょう?
――プラネタリウムを作った人は、それを教えたかったのかも知れない。
――今は会えていなくても、星の数ほど人はいるという言葉があるくらい、独りぼっちになる可能性の低さを物語ろうと――。
(第一部終)
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