簡単に運命と言わないで――二人のアルファに囲まれて――

かぎのえみずる

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長内編

第十三話 港からの躾(しつけ)

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 雪道さんからのラットに加えて、ヒートが誘発される。僕は雪道さんに嫌われるのが怖いあまりに、ローターを自分で命じられるままに挿れていた。
 きちんと挿れおわると、ようやく雪道さんは微笑んで僕の身体をなで回す。

「いいこだ、ほら、わんって鳴いてごらん」
「そこも、真似するの……?」
「君が誰の犬か、分からせたいからね。私だけの可愛い犬なんだって、自覚してくれないと困るんだよ。それが嫌なら、恋人にするために項を噛ませて欲しいな」
「わん……」
「拒否か、頑なだね。そんなに私のことは嫌いなのかな」
「違う、恋が、怖いだけ」
「身体には色々されてるのに? ここも私を求めているよ」
「あうん!」

 素っ裸の状態だから、僕の陰茎が反応しているとすぐばれる。
 僕は震える身体で媚びるように、雪道さんの手を舐める。もはや、理性は瓦解しかけている。フェロモンが気持ちよくて何も考えられなくなりそうだった。
 雪道さんは僕に優しいながらも甘く愛を囁きかける。

「挿れてほしいなら、舐めるところが違うだろう」
「わ、ん」
「従順な子は好きだよ、項をくれればもっと好きだ」
 僕は何も考えられない頭で雪道さんの肉棒にむしゃぶりつき、口をすぼめる。
 時々は手で揉み込み、雪道さんは僕の痴態にうっとりとしながら、ローターの遠隔スイッチを押して強弱をつけた。たまらず、僕は口の端から涎が垂れる。

「ふ、ああ、あ、あ、あ!」
「密くん、ほらいいこだから、媚びるんだ私の機嫌がよくなるまで。そうでないと、これを挿れてあげないよ」
「や、だ。雪道さん、何でそんなに余裕、あるの」
「私はね、沢山我慢してから綺麗に食べ尽くすほうが好きなんだ、趣味が悪いかもしれないが」
 雪道さんが性欲を堪える性癖持ちなのは本当のようで、既に雪道さん自身は血管が浮き出そうなほど隆起してるというのに、まだ余裕顔だ。
 この人が理性なくなるのは、いつなんだろう。
 ローターからの刺激に身体を震わせていると、雪道さんと視線が合い、雪道さんは嗤った。
 最初に出会った頃の優しい笑みでもなく、滑稽だなと言いたげな笑みだ。
 そんな笑みにときめく自分に戸惑っていると、雪道さんは僕をベッドに横たわらせる。
 やっと挿れてくれるのかとほっとしたのもつかの間で、雪道さんは僕のちんこを細い皮のベルトで縛った。

「あ、あ、何で」
「我慢が好きなのは私だけじゃないと、思ったから。君も後ろだけでイけたほうが、気持ちいいだろう?」
「そんなこと、ない、よ。どうして冷たくするの、怖いよ!」
「お前が椿と暮らそうとしたからだ、たった二人で。私を抜きに。私も運命であると忘れるオメガにはお仕置きだよ」
 酷薄な声で、雪道さんは僕を睨み付ける。
 相当嫉妬深いんだ! と知るには遅すぎるほどに、激高している。
 ローターをより深く挿れるように、ぐりっと押し込まれ、雪道さんはローターが押し出ないように塞いでいる。
 僕が雪道さんの名を呼ぶほどに、雪道さん自身は硬く張り詰めていくのに、ご褒美が目の前にあるのに雪道さんは僕にくれる気配がない。
 どうすれば、と視線で訴えると、雪道さんはただ冷徹に見下ろす。

 僕は泣きながら、悦に負け、首輪を引っ張る。

「項、噛んで、いい」
「一番を私にくれる? 椿は相当怒るよ」
「雪道さんと、繋がりたい、からあ」
「……理性のないオメガのおねだりほど、興奮するものはないなぁ。すっかり、夢中になってくれて嬉しいよ、今は身体だけでもきちんと心も頂くから安心して」

 雪道さんはにっこりと微笑むと、首輪を外し、チョーカーも外し。まっさらに曝け出された項を見つめ、優越感に浸る笑みを浮かべていた。
 つつ、と項を撫でゆっくりと口を開き「噛むよ」と犬歯を見せ笑う。
 僕は背を見せ項を差し出す――身体にびりびりと電流が走るような、肉が食いちぎれそうなぎりぎり皮膚が破れない力で、雪道さんは噛みついてきた。
「ああああああああ!」
 とうとう僕は項を、噛まれた。
 オメガを嫌いながら、オメガである性欲に負け、発情し情けなくも項を献上した。

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